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2008年4月 8日 (火)

もう一度観たい絵

虚無感の表現

結構前の話だけれど、去年の夏
「アンリ・カルティエ=ブレッソン展」を観に行った時に
同じ建物の2階か3階で行われていた展示会の絵を
もう一度見たい。

「1943年~44年に日本国内で描かれた絵」

という一風変わった趣旨で集められていた数点の絵だ。

橋を描いていたり、人を描いていたりと対象は様々だった
けれど、どの作品も"戦争が不利になっている"ということ
を『明らかに』内心で感じつつも

「負けて終わる」

という未来は想像もできない。
かといって勝つなんてことは最早どう考えてもありえない。

『このまま行くと近い将来大変なことになる(だろう)けど
どんな"大変なこと"が起こるかわわからない。そして
戦争が終ることもありえない(だろう)という不穏なイメージ』

が実によく表現されていてとても印象深かった。

1945年に入ると政府内部でも東条内閣打倒の動きや終戦に向けた
具体的な工作が水面下で動き人々の中には

「もうすぐ終わる」

と直感的に感じている人や確実な情報として知っていた人も多く
なったことだろう。
だが展示されていた絵はそういった私達の知っている書籍で
良く書かれているイメージとは違う「戦時中」に生きている人
が感じて描いた「永久戦争(千年戦争)」の中を生きる人間としての
リアリティが感じられた。

描いた作家達の名前をメモしようと思ったけどこういう時に
限ってついつい怠ってしまって今でも後悔している。

お金があれば買いたいと思うほどにどの絵にも何やら今という時代
には無い異質な凝縮された緊張感が感じられた。

戦争を体験していながら、戦時中の思いを、本当は当時感じて
いた高揚感と不安感のアンビバレンツをきちんと表現した
文章や絵画は結構少ないと思う。

戦争が終わってしまえば何とでも、どうとでも言える。
それは何も日本に限ったことではない。

開戦時から戦争中の強大な敵に向かっていく高揚感を
戦中も戦後も当事者としての気持ちを隠すことなく表現できた
人は文章では私は一人しかしらない。

玉川上水で自殺した小説家しか。

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コメント

歴史を理解するのって
イメージ力や想像力が一番大切だと思うんですよね
そういう意味では当時の絵っていい素材ですよね

投稿: 万物創造房店主 | 2008年4月10日 (木) 18時04分

>イメージ力や想像力が一番大切
「教育」では培うことは難しいと思いますね。
今日本で全年齢に欠けていることで且つ
力を補填どころか益々日々失うように仕向けて
いるようにすら感じますね。

>当時の絵
「原爆」も「終戦」もまるきり未体験・想定外
の当時の生のイメージの産物は本当にインパクトが
あって貴重だとも改めて思いました。
これからの生きるヒントにもなり得ます。

投稿: kuroneko | 2008年4月11日 (金) 00時28分

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