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2008年4月18日 (金)

映画「ノーカントリー」

「ノーカントリー」

原題名: NO COUNTRY FOR OLD MAN
監督: ジョエル・コーエン,イーサン・コーエン
脚本: ジョエル・コーエン,イーサン・コーエン
撮影: ロジャー・ディーキンス
音楽: カーター・バーウェル
編集: ロデリック・ジェインズ
出演: ジョシュ・ブローリン,ハビエル・バルデス,トミー・リー・ジョーンズ

時間: 2時間2分(122分)
製作年: 2007年/アメリカ

2008年4月鑑賞 (満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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テキサスの荒野で大金を得て逃走する男ルウェリン
(ジョシュ・ブローリン)。

金の回収の為に雇われた"究極の殺人鬼"アントン・シガー
(ハビエル・バルデス)。

彼らの逃走と追跡を静かに追う"オールド・マン"保安官ベル
(トミー・リー・ジョーンズ)。

観ようと決めている映画に関しては基本的に一切の情報を
シャットアウトして観るので保安官役でトミー・リー・ジョーンズ
が登場した瞬間もうこの作品は自分にとって『勝利』だった。
本作は間違いなく彼の代表作となりもしかしたら最高傑作に
なるかもしれない。役柄・セリフ・全てがハマッテいて文句なし!

主人公を演じるジョシュ・ブローリンは「アメリカン・ギャングスター」(2007年)
では悪の匂いがプンプンする汚職警察官を憎憎しげに貫禄を持って
演じていたけど本作では見た目はごついけど"悪人"ではないだろう
と直感的に観る者に思わせるナイスタフガイを寡黙なのにユーモア
を交えて好演している。

そして本作の実質上の主役。圧搾空気の噴出するボンベを殺人凶器
にして行く先々で陰惨な死を撒き散らす破壊の帝王!アントン・シガー
を演じるはスペインの注目株俳優ハビエル・バルデス(本作で最優秀助演男
優賞を受賞)。

本作はR-15指定なのだがコイツが問答無用に仕掛けていく殺戮とその
描写はまさしくR指定に相応しくアントン・シガーは遂にシュワルッツェ・
ネッガー演じるターミネーターを超えた!
冗談抜きでターミネーターより凶悪!

いつもなら私は「こんな(映画)別に餓鬼に見せてもええでしょ」
と思うけどこの男の"殺意"はマジヤバイ!子供は大人しくお家で寝て
いるがいいでしょう。

殺人鬼アントン・シガーのあまりの躊躇しない殺しっぷりに
パンフレットではなぜか日本人評論家は口をそろえて"自然災害のような"
超自然的な存在だとしているのにたいして出演した俳優陣は
これまたそろってシガーを"超越した存在"として見ることに否定的な
見解をみせているのが面白い。

私は後者に賛成する。なぜならアントン・シガーは人間であり彼の殺し
には動機がありなによりも彼は行為を"愉しんでいる"からである。
名作「セブン」(1995年)で神と自称して殺人を正当化する犯人ジョン・ドゥ
(ケヴィン・スペイシー)を老刑事サマセット(モーガン・フリーマン)は
完全否定する。神であれば決して自身の行為を愉しみはしないから。

アントン・シガーは確実に人間であって殺す理由も劇中で時に雄弁に語る。
しかし彼がキル・マシーンになった理由は決して語られない。

コーエン兄弟の作品らしく、ちょいちょい登場する脇役達が光る。事務のおばさんや
雑貨屋のオヤジの表情や小話、作品全体の小道具がとても楽しく映像は
いつものように素晴らしい。

ラストについては物議を醸しているようだけど、最近の映画のトレンドの
流れと勧善懲悪など描いても説得力の欠片もない"今"という時代に沿った
中でのクライマックスだと私には思えて且つ自然で特に唐突感すら
なかった。

人は苦労して生き、ヘマばかりして、例えヘマをしなくても最悪な
人間と出会ってしまえば大した理由もなく簡単に殺されてしまう。
コーエン兄弟のそういった難儀な人生をトボトボ歩いていく人々を
見つめる視点は時に温かく時にシニカルでいつも面白い。

とりあえず今年観た映画で暫定一位(いろいろ考えて☆は4つですが)。
そして今まで観たコーエン兄弟の作品では「ビッグ・リボウスキ」(1998年)が
かなり好きだったけど、トータルバランス的に本作のポテンシャルは
とても高くてこちらでも暫定一位。

「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006年)でいい味出していたウッディ・ハレルソンが
何だか似たようなキャラクターで本作でも印象的な演技で
巨人アントン・シガーに果敢に挑んでいく!

また「トレインスポッティング」(1996年)での女子学生役で大ブレイクした
ケリー・マクドナルドがコーエン映画らしくちょっと不思議でお茶目な
キャラでルウェリンの妻役を演じているのもとても楽しい。

本作を観てコーエン作品の中でも評価が特に高い「ファーゴ」(1996年)を
思い出す方も多いと思うが私はデヴィッド・クローネンバーグ監督の佳作
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(2005年)を思い出しながら観ていた。
ラストの本作との比較という点でも「ヒストリー~」はお勧め。

劇中でのアントン・シガーの世界感の完成度の高さに原作がどうなっているのか
気になったのでそのうち読んでみたい。

原作 「血と暴力の国」コーマック・マッカシー著

 
 
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コメント

僕もコーエン兄弟の作品では「ビッグ・リボウスキ」が好きですね
「ファーゴ」は何でそんなに評価高いのかよくわかりません
僕はつまらなかったです
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」はずっと見たいと思ってそのままですね
中古で安くであったら買おうと思っているのですが
未だに高い

投稿: 万物創造房店主 | 2008年4月21日 (月) 17時44分

「ビッグ・リボウスキ」いいですよね。
全編のセリフが何とも味わい深い笑いがあります。
確か生粋のアジアの某国の人のことを主人公が
「おい!差別するなちゃんと○○系アメリカ人て言え」
っていうような大国の自己中エゴを逆手に取った
セリフがあったと思いましたが最高に受けました。
      
>「ヒストリー・オブ・バイオレンス」
こちらもいいですよ。ちょっと主人公
がカッコ良すぎるけど。面白いのでお勧めっす。
単純比較は出来ませんが「ノーカントリー」
と類似点は幾つかあると私は思いました。
「ノーカントリー」は映画館で観る価値ありますよ
(^^)/

投稿: kuroneko | 2008年4月21日 (月) 23時01分

「ヒストリー・オブ・バイオレンス」
手に入れました!(^。^)/
新品が1596円で買えました
ついでに
「血まみれギャングママ」
こちら↑コーエンじゃなくてコーマンですが(^。^)
も新品1672円で手に入れました
うれしいなっと

投稿: 万物創造房店主 | 2008年4月29日 (火) 20時24分

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