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2008年5月25日 (日)

映画「つぐない」

「つぐない」
Atonement


原作: イアン・マキューアン
監督: ジョーライト
脚本: クリストファー・ハンプトン
撮影: シェイマス・マクガーヴェイ
音楽: ダリオ・マリアネッリ
編集: ポール・トーシル
編集: ポール・トーシル
プロダクションデザイン: サラ・グリーンウッド
出演: キーラ・ナイトレイ,ジェームズ・マカヴォイ,ロモーラ・ガライ,シアーシャ・ローナン

時間: 2時間3分(123分)
製作年: 2007年/イギリス

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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 チラシのキーラ・ナイトレイの横顔がやたらと美しく、そのどこか寂しげな表情と
映画のタイトルと雰囲気がとても『映画』っぽくて観に行った。

 なかなか映像もストーリー展開も凝っていて充分楽しめた。主人公はてっきり
キーラ・ナイトレイ演じる上流階級の娘セシーリアかと思ったら冒頭、シアーシャ・
ローナンが人生で最も多感な思春期のお年頃の少女を元気に演じて物語は始まる。

 この少女が成長した姿をキーラ・ナイトレイが演じるの?

 と思って観ていると冒頭の少女はセシーリアの妹のブライオニーでセシーリアは
最初ブライオニーの視点で描かれる。セシーリアと一途な恋に落ちる幼馴染の
ロビー(ジェームズ・マカヴォイ)もブライオニーの視点で描かれ、まだ少女である
ブライオニーには成年になった二人の微妙な心の変遷に伴う行動が理解出来ない。

 そしてブライオニーがお年頃ゆえに理解出来ないことがこの作品の鍵中の鍵となる。

 "つぐない"とはセシーリアではなくブライオニーの物なのだけれど、ヒロインは
間違いなくキーラ・ナイトレイ演じるセシーリアであるのが本作の面白いところだ

さらにキーラ・ナイトレイの美しさと少女期・娘期・老年期のブライオニーをそれぞれ
演じている女優さん達や相手役のロビーを演じるジェームズ・マカヴォイの演技の
確かさと美しい夏の田園風景や史上名高いダンケルクの撤退の壮大なシーン、
病院のシーンなどのセット及び見せかたの素晴らしさが作品全体をしっかり盛り立て
ている。

 徴兵されたロビーがいつのまにか戻ってきてセシーリアと暮らすシーンでは

 「おいおい再会シーンはこの手の映画で必須だろ、なぜスルー?」

と思って観ていると、成長して18才になったブライオニーが二人を訪問するが。。

。。。ヽ(゚⊿゚)ノ エッ!マジデー!

となり
。。。(´ー`)  ナーンダソウナンダ

となって、映画の最後で
。。。(゚Д゚;) ナンデスト!!!

となってとても愉しめた。

 人間の心の内面をテーマとして描いた映画は嫌いじゃない。

 というよりむしろかなり好きだ。そしていつも「心の内面を描くのって難すぃなあ。。」
とつくづく思う。

 本作は制作工程自体が相当上手くいってる成功例の作品だと思うが細かいこと
言うと微妙な点もある。

 ロビーが遭遇するダンケルク撤退のシークエンス自体はとても素晴らしい出来で
退廃的な雰囲気も個人的には好きなんだけれど作品のテーマからすると冗長過ぎる
と思われる。カメラもやや動き過ぎ。思いのほか良く出来たために短く切ることが
出来なかったのかも。

 そして、三人の運命については当然のことだけれど不可抗力がかなりあると思われ
ブライオニーが背負う「つぐない」の比率がちょっと高すぎて可哀想だと私は思って
しまう。

 ブライオニーだけが負う必要は無い。実はロビーの性格がそれ相当の鍵を握っている。

 映画はそのように(ロビーのキャラの重要性)も一応触れているけどブライオニーに
問題を帰しているように思えた。

 人の出会いは性格と年齢と立場とタイミングによっていかようにも、どうとでも変わる。
それぞれの立場と行動の一瞬の交錯が人生を永遠に変えてしまう(こともままある)。

 永遠に変えてしまうことをフィルムに焼き付けるのであれば細部のシーンまで動機が
とても重要になり、全体を一本の糸に束ねるのは古今東西至難の業だ。

 本作はとても頑張っているけど、その辺の"永遠のターニングポイント"の焦点はもっと
絞れるのではと思った。個人的にロビー君にはもうちょいとだけ頑張ってほしかった
ところだ。

 ロビー、君がもう少しだけ周到な性格の男ならば、、(--)

 監督ジョーライトの手腕はなかなかお見事。今後も注目していこう。因みに
キーラ・ナイトレイはスターウォーズでナタリー・ポートマン演じるアミダラ姫の
影武者を演じている。

 作品を鑑賞したテアトルタイムズスクウェア(新宿タカシマヤ12F)には何度か
行っているけど落ち着けていい映画館だ。入場するまでのんびりお茶も出来るし
新宿を一望できる広いベランダも開放されていて出入り自由だし同じ階にHMVも
あって商品も充実してるし。映画館内からも外の風景が楽しめてトイレが綺麗な
のもとても嬉しい。席に腰を下ろすまでの過程を楽しむのも映画の重要なファクター
だと思う。

 
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