赤塚不二夫なのだ!!
プレミアム10「赤塚不二夫なのだ!!」
・赤塚不二夫氏への熱い思いが
番組全体から感じられてとても良かった。
文字通りギャグ漫画の永遠の金字塔を
打ち立てた氏だが数年前から闘病生活を送っていて
意識はかなり前からずっと戻らないままだ。
古田新田扮するバカボンも作者への敬意が何となく
感じられて、それでいて本当に実写ドラマを
そのまま作れそうなフィット感があって良かったが
何といっても松尾スズキ監督のアニメ作品は
感動して涙が出そうになった。
現役を『引退』して悠々自適の裕福な生活を送るニャロメに
松尾スズキがインタビューをしにいくというトリッキーだけど
単純な構成の内容なのだが(レレレのおじさんはニャロメの執事になってる!)
"笑わせる"ことと"笑われる"ことの違いからエンターティメント
としての暴力・差別の表現の限界について等々この
たった数分のアニメに込められた情報量はとても多い。
作画も声も素晴らしい(松尾スズキは本人が声あて)。
ただ視聴率目当てに昔のアニメをろくなアレンジすらもなく
安易に復活させ、それでも支持を得られずに
有名タレントをゲスト出演させることが今や
当たり前になってしまったが、そのことが
いかに破廉恥なことか、傑作作品を作ってきた
人々とその時代すらを愚弄することか。。
ニャロメに赤塚不二夫氏の心情も込めてみたという
松尾スズキの弁だが氏が意識を取り戻して
このアニメを見たら、きっと大喜びするのでは
ないだろうか、または自分のキャラクターを
通して今という時代のアイロニーが見事に描かれていることに
号泣するのではないか。
10年ほど前に氏は
「天才は皆早死にしている。だから自分も、そろそろ死なねばならない」
と喫煙も飲酒を敢えて続けて自ら遺書と称した対談集も
何冊か出していた。
私は正直に言うと赤塚氏の漫画にはほとんど親しまなかった。
そのギャグの辛辣さと残酷さを好まなかった。
ただ表現としてのパワーには圧倒された。
アニメで散々見ていた「天才バカボン」の原作漫画をたった
一度だけ読んだ日の衝撃は今でも忘れない。その見た絵、その日に
食べた物、天気、その日に自分は何をしていたかまではっきり覚えている。
少年の頃の夏のある日に氏の漫画を読んだ。ただそれだけのことなのに。
今は、ただ意識を取り戻して数日間でも数時間でも
いいので平静な時を少しでも過ごして頂ければと願うばかりだ。
表現者達の会話
松尾スズキ監督作品 「ニャロメ2008」より
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松尾:
まったく状況は悪くなる一方さ。
僕はよく過激な表現を求められるけど
でもなるべく安全な範囲でって言われるんだ。
そんなのちっとも過激じゃないよ。
ニャロメ:
そんなの今に始まったことじゃないんだ。
いいかい!
バカボンにせよレッツラゴンにしても
その辺の分別があったからポップスターになれたんだ。
その分別の匙加減が時代の気分によって
変わったってだけさ。
...
ニャロメ:
ずいぶんバカになったつもりだろうけど
足りないな。思うに君は僕のことを尊敬
し過ぎているんだ。
きちんと虐げられなきゃ僕だって壊れては
あげられないよ。
もう一度言うよ!
君は圧倒的に足りないんだ。
松尾:
...残念だ。
今の時代に君を虐げられるほどの価値のある
人間は本当に残念だがいないんだよ。
ニャロメ:
いやいやいや落ち込むことはない。
君はそこそこやったよ。
似合うよ。オムツ。
松尾:
...45才なんだ。
ニャロメ:
だろうね。いかにも45才らしいよ。君は。
じゃあまた会おう。
ちゃんと服を着て帰ってくれたまえ。
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この後の展開は涙を禁じえない。
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コメント
とてもいい番組だったようですね。
あちこちで感想が述べられています。
再放送大好きなNHKですから、次回見ようと思います!
投稿: 理想 | 2008年6月 3日 (火) 19時32分
NHKスペじゃないから再放送はかなり
期間が空くと思いますね(^^;)通常放送では。
一年後にミッドナイトチャンネルとかでやり
そうすね。
衛星でならすぐやる気がします。
見かけたらお知らせしますよ(^0^)
「ニャロメ2008」はお宝ビデオになりました。
これから何回も見ると思いますね。
投稿: kuroneko | 2008年6月 4日 (水) 02時17分