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2008年7月27日 (日)

映画「ぐるりのこと。」

2008年に見た映画(十五) 「ぐるりのこと。」

原題名: ぐるりのこと。
監督: 橋口亮輔
出演: 木村多江,リリー・フランキー,柄本明,賠償美津子,寺島進,安藤玉恵
時間: 140分 (2時間20分)
製作年: 2008年/日本
(渋谷 シネマライズ にて鑑賞)

2008年7月鑑賞
(満足度:☆☆☆)(5個で満点) -->>オフィシャルサイト<<--

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悩んだ末にスルーしようかと思っていたけれど某雑誌で監督の橋口亮輔
と松尾スズキが対談していて橋口監督が深刻な鬱であったと述べていたことと
彼らがほとんど同じ歳の60年代生まれということで、リリー・フランキーの演技も
観たいところでもあったし応援の意味を込めて観に行った。

リリー・フランキー演じるカナオは学んだ画業を生業には出来てはいないけれど
靴の修理工をして妻の翔子(木村多江)と仲睦まじく暮らしていた。
ひょんなことからカナオが法廷画家としてデビューするとやがてお互いの意識は
どこかですれ違い始め、翔子は中絶をきっかけに自分自身を激しく
追い詰めていくようになる。その時カナオは。。

個人的には「東京タワー」リアル版(著者が主人公版)だと感じた。
昨今、60年代生まれの方々の活躍が著しくその仕事の質も高い。

松岡錠司(1961年生まれ)
・・・近年の邦画を代表する傑作「東京タワー~僕とオカンと時々オトン~」の監督。

松尾スズキ(1962年生まれ)
・・・映画「東京タワー」の脚本を担当。こちらも傑作「クワイエットルームにようこそ」(2007)
の監督と原作をこなしている。

リリー・フランキー(1963年生まれ)
・・・映画「東京タワー」の原作者(220万部突破!(@_@))にしてイラストレーターにして
人間観察屋(^^)本作では満を持して主役を演じ役者としての本格的演技を初披露。

橋口亮輔(1962年生まれ)
・・・本作「ぐるりのこと。」監督。

彼らは自分達が生きてきて少しずつ蓄積してきた「何か」とがっちり格闘して
その痕跡を各自がエンターティメントとして昇華して素晴らしい活躍をされている。
そして時に『映画』という場で幾何学模様を描くように誰かが誰かと交錯している。

橋口亮輔の大仕事(6年振りの新作とのこと)である本作は鬱になったというのも
納得の悶絶振りの跡が随所に溢れていて(特に翔子の描写)なかなか良かった。

しかし幾つかのシーンが不快で頂けなかった。食事のシーンとか周辺の人物達の
心無い会話とか。テーマに関係ある"絶対に必要な"描かれ方とも思われず観客の
不快感を低下させることは可能だったと思う。それで作品の質が落ちるとも思われない。
全体としてはかなりいい感じで中年にさしかかった夫婦の絆の危機を描けているので
もったいないと思った。

食べ物の雑な扱いと描かれ方とか品の無い人間たちの長い描写に時に苛立ち、
「どうでもいいから早く次のシーンへ行ってくれ」と何回か思ってしまった。

またここ十数年に起きた重大犯罪事件の裁判の模様もカナオの目を通して
描写されているけど、メディアが周到に作り上げた「被告像」を妙に
丁寧になぞっているばかりで正直それもかなり不快だった。

テーマはそっち(法廷シーンそのもの)ではないという言い訳も成り立つけど
タイトルの「ぐるりのこと。」は誰もが何かが狂い始めたと感じるバブル崩壊以後の
90年代全般も捉えたかったことを意味していると監督は言っているのだから、
法廷シーンはもっとリサーチして決して報道されなかった「以外な事実」も
それとなく盛り込んでも良かったと思う。というかそうしなければいけなかった
のではないか。

木村多江演じる翔子の鬱になっていく過程の描写はリアルで恐ろしく
とても見ごたえがあった。リリー・フランキーも飄々とした夫像を期待通りに存分に
見せてくれる。彼女の心の崩壊をただ手をこまねいて傍観しているが
必ずしも翔子を冷たく突き放しているわけではないという極めて微妙な
二人の距離感を「さあ演じろ」と言われてもなかなか出来るものではないだろう。

彼女が追い詰められているのは「夫婦間」だけの話しでもなんでもなく
もっと"大きな系"だということが賠償美津子・寺島進・安藤玉恵
といった面々の騒がしさも含めてきっちりじっくり見せているのに
その回復の動機が"夫の献身"だけというのは何だか片手落ちの感
を感じてしまった。

きっとこの夫婦と同じか、より深刻な危機に陥っている20代~30代・40代の
夫婦なんていくらもいると思うけど、残念だけど本作のようにはとても
立ち直ることは出来ないだろう。

別に映画が処方箋を示す必要は全くないし、そういう映画に限って
とんでもない処方をするものだけど、本作は良くも悪くも頑張って
「ぐるりのこと」を描いているけど、カナオ演じるリリー・フランキー
を始め木村多江・柄本明といった素晴らしい俳優達に処理を
任せてしまった感があり、残念だ。柄本明の安定した演技にどれほど
作品全体が救われていることか!

凶悪事件の原因をひたすら「凶悪な」犯人(被告)だけに押し付けて
しまった裁判シーンと表裏を成しているようにも見える。

以上、ところどころ惜しい点はあるが帰りの電車でパンフレットを
読むのがとても楽しみではあったので総合的には私はこの作品を
愉しんだのだろう(がっかりした場合はパンフは買っても放置)。
140分ある上映時間も長くは感じなかった。

橋口亮輔の今後と彼ら60年代生まれの方々の活躍にこれからも期待!!
 
  
  
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