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2008年7月20日 (日)

バブルと軍靴と映画

バブルと軍靴と映画

「226」(1989年)という映画がある。
1936年(昭和11年)に起こった一部青年将校による叛乱事件「二・二六事件」
をテーマに扱った作品だ。監督は五社英雄。

この作品は音楽が秀逸で特にメインテーマ曲は重厚で且つ
悲壮感が漂う雰囲気が多分にあって今だにテレビでよく使われている
のを耳にする。聴けば曲だけは耳にして知っている人も多いことだろう。
(太平洋戦争に向かっていく時代の映像を流す際には定番の曲になってる観もある)

五社英雄は映像の「雰囲気の豪奢さ」だけ(失礼)には当時、充分に
定評があって高校生だった私はその点の"ヤバさ"を期待して
劇場に足を運び映像と音楽はそこそこ楽しめた。

首謀者の一人、安藤輝三大尉(事件後刑死)を演じる三浦友和の演技が
なかなか締まっていて良かった。

内容は事件に至る背景には『一切』踏み込まずに事件当日の状況
のみを淡々と扱っていてその点が興行的に盛り上がりようもなかった
点かと思う。出演陣が今思えば相当豪華だったにも関らず。

ベテラン勢ではこんな方々が出演
梅宮辰夫
金子信雄
丹波哲郎
仲代達矢
長門裕之
松方弘樹
八千草薫

中堅(当時)ではこんな方々が出演
小野寺昭
賀来千香子
勝野洋
竹中直人
宅麻伸 
名取裕子
根津甚八
萩原健一
三浦友和

若手(当時)ではこんな方々が出演
うじきつよし
加藤昌也
藤谷美和子
南果歩
本木雅弘
安田成美

いろんな意味で豪華だ(^^)
これだけ出てて演者に遠慮(贔屓)せずに割と硬派に撮ってるのは
今となっては再評価してよいのかもしれない。

背景を語らない作りとなったのは公開当時の日本はバブルの余韻も
まだまだ残っていて昭和初期の大事件を背景からきちんと再検証するという
時代でもなかったこともあったのではないかと思う。それにしても
その全く触れないあまりの潔さは当時高校生ながらの私も奇異に感じた。
それゆえに正直に言って個人的にはヒットしなかったことを当時安堵した。

21世紀の今となってみると、この事件は(この事件も)単に軍内部の
派閥抗争だとか一部青年将校の暴走を許したというだけでは、
当然のことながら語れないとても大きな力が事件の前から背後で脈々と
働いていて、叛乱を起こした将校達への苛烈な処断と関係者への影響は
太平洋戦争の展開にも確実に影響を及ぼしていることは間違いない。
(昭和天皇はこの二・二六事件当時の積極的な鎮圧へ向けての関与が
返って後の太平洋戦争遂行前後に静観を続ける理由となった(主体的能動的な
関与を極力控えた)のは今では有名な話だ)

製作当時の諸事情(予算も含めて)で背景には触れなったこの作品が
かえって触れないことで今後、純粋にエンターティメントとして再評価されることも
あるかもしれない。というかすでにそういった意味での再評価がされつつあるようなのは
作品の質そのもの扱われる時代の関係を考える上で少々興味深い。

劇場で観た当時とても残念だったのは雪降る帝都を進む叛乱軍の
軍靴の音とその足並みがまるで揃っていなかったことだ。撮影上
仕方無いといえばそれまでだけど(叛乱軍を演じる多くはアルバイト
さん達だもんな)当時高校生だった私は私なりにある種の思い入れを
持って観に行ったのでこの点についてはとても残念に思ったことを覚えている。

一緒に観に行った先輩がとてつもなくつまらなそうだったことと
映画館を出たら知人の女の子二人が同じ回を観ていたことが判って
妙に新鮮な思い("面白かった"とのこと)をしたことも作品の評価とは関係なく
懐かしかったりする。

 
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コメント

五社英雄監督
けっこう好きですよ
「三匹の侍」と「鬼龍院花子の生涯」が特に好きですね
ところで
「ホットファズ」見て来ましたよ
かなりおもしろかったです

投稿: 万物創造房店主 | 2008年7月22日 (火) 19時33分

五社作品は自分は「226」以外はちゃんと
観てないすね。
「ホットファズ」評判いいすね。こんな素晴らしい
作品が署名集めなきゃやらないなんてホント
絶望的な状況す。前にも書きましたが
「悪意」と「逆ギレ」を感じますね。
日本の配給状況は。
本当にダメにしたいのでしょうな。。

投稿: kuroneko | 2008年7月23日 (水) 00時25分

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