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2008年7月 1日 (火)

映画「靖国 YASUKUNI」

2008年に見た映画(十一)「靖国 YASUKUNI」

原題名: YASUKUNI
監督: 李纓 (Li Ying)
出演: 刈谷 直治(刀匠の老人)他
時間: ---
製作年: 2007年/日本・中国・韓国
(渋谷 シネアミューズ・イースト/ウエストにて鑑賞)

2008年6月鑑賞
(満足度:☆☆)(5個で満点)

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公開"する"だの"しない"だの"させない"だのの騒動が鎮静化してみれば
結局東京ではロングランされしかも前売り券も売り切れの有様。
(前売り券は何回かの販売の波があることは知っているので後日Get)
あと一週間で公開終了するのでいいかげん閑散としているだろう
と思ったら意外とお客が入っていた(自分の整理券番号は35番目だった)。

とりあえず私が観た回の客層はいたって普通。雰囲気的に自分のように
「ようやく落ち着いて観れるよ」というような映画を普段から
観ていそうな感じの30~50歳代の方々が主だったが何となく
初老の男性の方(物腰は皆穏やかそうな感じ)が目立った。

さて、映画そのものはと言えば。。

全体の作りが「粗い」と思う。映像も編集も構成も。

映像はいくつかのショットで微妙にピントがずれていたり雨の水滴が
カメラのレンズについてしまって見にくかったりと結構気になった。

靖国神社に刀を納めていたという刀鍛冶のご老人(御歳90才)
へのインタビューと老人の刀を作る模様が全体の構成の縦糸となるが
質問する方の日本語が堪能でもなく意図も不明瞭な質問を
ぶしつけにするのでご老人の方も歳が歳なので明瞭には答えられない。
見方によっては誘導尋問とも言える質問にも不満を覚える。

"見方によっては"というところが好感を持てないのだ。
聞きたかったらはっきり聞けばいい。

納めた刀は戦争当時、将校達に配られ彼らは勇んで
その刀を戦場に携えていった。
その刃は誰に向けられたか?
製作者として何とも思わないのか?
と。

勿論そんなことを刀鍛冶に聞くのは失礼な話しだ。
斬れる刀を造るのが彼らの仕事であり使命であり誇りだからだ。

責任を取るべきは全く別の他人に命令をするだけしておいて
一切の責任を取らずに幸福に天寿を全うして鬼籍に入られた複数の
どこかの誰かであろう。

「こりゃあ誤解も招くわな」と観ていて思う。

カメラについてもショットも構図も安定していないものが多い。
靖国神社を訪れる様々な団体・個人を間近で捉えていてその混乱によるもの
だとか予算が少ないから充分な人を割けないとかという理由よりも
技術的な問題と"どういうショットを捉えて観る者に伝えたいのか"
という配慮が足りないせいだと思う。

ぶつかりそうなほど不用意に近づき過ぎてすっかり撮影慣れ
している撮影対象の御老人に優しく窘められる始末。

参拝に強いポリシーを持って訪れる"それらしい"方々が実に堂々と
撮影者を威圧したり特に制限することもなくある種自由に撮らせている
のに対し小泉純一郎元首相の参拝のシーンは明らかに隠し撮りに見えた。

作品の主旨からいって一国の首相のある意味では歴史的な参拝をきちんと
撮れない(取材できない)のならば(政府関係者に問答無用で撮影を拒まれたとか)
そのシーンこそ撮影して公開すべきだと思う。その上で隠し撮りの
ようにしか撮れない様も連続して見せれば、その意味を観客に強烈に
考えさせることになり、"それらしい"方々が堂々と撮らせていることの対比にもなる。

全体的に「敢えて主観は入れなかった」という作りというよりも
「撮った素材を並べてみました」的な印象を私は強く持った。
テーマがテーマだけにこの辺の焦点の曖昧さはいかがなものか。

8月15日の混乱しがちな日の模様や一般人からすると強烈な主張と
服装で参拝に訪れる団体・個人をこれでもかと捉えているが、

靖国神社の姿を浮き彫りにするなら静かな日の神社のシーンも
入れるべきだと思う(少しだけあるにはある)。

私は近くまで行った時に散歩がてら寄ることがたまにあるけど
当然のことだけど普段の靖国神社は結構静かで落ち着いたものである。

極めて静かな荘厳とした雰囲気の神社の一面も撮ってこそ様々な
主張が激しい怒声と危険な実力行使で文字通りぶつかるシーンが
観客により強烈な印象で伝わると思うし、パンフレットに何度も
書いてあるように

「靖国神社について考えて欲しい」

というメッセージが伝わると思う。

終盤、重厚な音楽と共に靖国神社や戦争に向かっていく日本の
貴重な記録映像が延々と流れてとても見ごたえがある。

しかし、、

ここでも長年議論がされてきた捏造の疑いのあるグレーゾーンの写真が
さりげなく使われていて(個人的には論破されていると思う写真も幾つかあった)
不用意さがまたしても気になる。

残念なのは、作品全体のしまりの無さと一緒でその写真を使用した意図が
曖昧だということだ。根拠のしっかりした写真だと"主張"したくて使っている
のか、もしかしてそういったことに無頓着なのか、さらに
もしかしてそんなことはご存知ないのか、、見ていてよくわからない。

ドキュメンタリーだというのであればとりあえずはそういった曖昧さは
極力避けるべきだろう。しかもテーマは見解の不一致の溝が国際的に
深くて事態の収束もまだまだ見えない「靖国神社」である。

最後に何だかとってつけたような東京の夜景が出てくるけどこれも
映像のピントがずれている。。意図的なのか映画館側の映写方法の問題
なのかわからない。

個人的には誰かに靖国神社について考えて欲しいと思ったら本作は勧めない。
主張が極端とか偏向しているとか誤っているとかいうよりも作りが甘い。
作りが甘いことによる誤解がどんな方向に向くことも起こり得てしまう
作品だ。

"靖国"というキーワードが抱える問題を提起していることは認めるし評価もするけど
全く無用な不毛な論争を起こしてしまう危険の方がどっちかというと高い。

また本作に支援金が拠出されていることを問題にするならもっと問題にすべき
低レベル過ぎる作品、予算を得るため"だけ"に企画されているような作品が
他に沢山あることと、その事が国民にほとんど認知されていないことこそ
問題にすべきだろう。

そういうわけで、、

本作を観るためにわざわざ集まってご丁寧にマスコミのインタビューに
「いい」だの「悪い」だの適当に答えている国会議員の皆様の見識を
疑わざるをえない。本当に暇なんだなあ国会議員て。私もなりたい。
日本の未来は危うい。。というか終わったな。
こんな人たちに一人当たり年間何千万円も税金を支給してるんだから。
またしても敗戦だ。今度は戦わずして。
敵は孫子の教え通り最上の勝ち(戦わずして勝つ)と永遠に搾取可能な
植民地の両方をすでに手に入れてるわけだ。
 
 
 
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映画感想一覧 >>
ある巨匠の言葉と映画「靖国」 (09/09/05)>>

 

 

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コメント

そういえば・・・ころっと忘れてた・・・(^_^;)
京都シネマ・・・今調べたら
いちおー4日までやってますねぇー
でもなんかもう見る気がなくなっちゃったんですけどね
公式HPの監督のコメント見たときにかなり萎えましたけど
クロネコさんの感想見てもう行く気ナッシング
昨日「聖獣学園」のDVD1650円で見つけちゃって
安いーっ!とか思って買っちゃったらお金なくなっちゃったし・・・
しかし
補助金出でて作られた映画なんて、ロクなのないんじゃなかろうかと思う
低予算で面白いものを撮ってる監督が潤沢な資金を得たとたんつまらない映画しか撮れなくなった
なんてこともよくある話で
予算を自分たちで集めて、そのギリギリの中でいかに撮るかを知恵を働かして撮ってる人たちの方がいいものを撮れんじゃないのとか思うのは僕だけ?
無駄な補助金行政はやめにしてもらいたいと思う

投稿: 万物創造房店主 | 2008年7月 2日 (水) 20時06分

>クロネコさんの感想見てもう行く気ナッシング
普段なら若干申し訳ないとも思いますが(^^;)
まあ今回はスルーして正解だと思います。
 
>無駄な補助金行政はやめにしてもらいたいと
自分が最近気になってるのは某大手銀行が
預金者にほぼ内緒で勝手に映画ファンドに投資
している様なんですよね。たまに金融系の
雑誌に担当の行員が嫌らしい笑みを浮かべて得意げに
スポンサー気取りで喋ってんのムカつきます。
預金者には超々低金利を強いて且つ手数料も取って
自分等は映画に投資して下手したらプロデゥーサー
気取りで作品に口出しまでしてるかも。。
映画への投資なんて本来は博打も同然てのは常識
ですから多分そのうち結構な額が焦げ付いて大問題
になると思います。

投稿: kuroneko | 2008年7月 3日 (木) 00時14分

>残念なのは、作品全体のしまりの無さと一緒でその写真を使用した意図が
曖昧だということだ。
根拠のしっかりした写真だと"主張"したくて使っているのか、
もしかしてそういったことに無頓着なのか、
さらにもしかしてそんなことはご存知ないのか、、見ていてよくわからない。

その類の質問に対するコメントを見つけましたので、ご参考までに↓
http://www.cinema-factory.net/contents/431_yasukuni/press.html

つまり「この写真の真偽がどうということは、私の視点ではありません」ということらしいです…(ーー;)
その甘さが映画全体に既に滲み出ているんですね。

投稿: 理想 | 2008年7月 3日 (木) 00時17分

アリガトウございます\(^^)/
大変参考になりました。ようするに真贋の定か
でない写真を使ったことに「深い意味」は
無いということすね。意図がわからなない
自分はある意味正解だったと。

投稿: kuroneko | 2008年7月 3日 (木) 00時35分

>自分はある意味正解だったと。
非常に優秀な観客ですー!

それにしても、何が真実で、何が嘘なのかを追求するのが、映画監督たるものの使命なんだと思っておりましたが、、、

投稿: 理想 | 2008年7月 3日 (木) 07時12分

>非常に優秀な観客ですー!
恐悦至極にござるm(_|_)m

>何が真実で、何が嘘なのかを追求するのが、映画監督たるものの使命
"真実"を解き明かすのは
ものすごい才能と勇気と資金と緻密さと優秀なスタッフと、、
他にもいろいろ必要で難しいすね。
一番必要なのは、、やっぱし才能すかね。
因みに押井守という日本の映画監督は
「映画は命を懸けてまで作るものではない」
と言っていてなかなか深い発言だと思います。

投稿: kuroneko | 2008年7月 3日 (木) 12時36分

>命を懸けてまで
作った結果として健康を害して亡くなるという
意味ではないことは言うまでもないすね。
「パトレイバー2」という日本の有事について
アニメーション映画としては相当なとこまで
踏み込んだ作品を作った時に最もヤバイことには
全然触れていないことを指摘された時の発言です。
真実というのは大抵ある勢力にとって極めて
知られてはマズイことであることが多いすね。

投稿: kuroneko | 2008年7月 3日 (木) 12時46分

>真実というのは大抵ある勢力にとって極めて
知られてはマズイことであることが多いすね。

そんな真実を、いくつもご存知なkuronekoさんが、明日も無事でありますように(-m-)

投稿: 理想 | 2008年7月 4日 (金) 00時29分

('-')アリガトウゴザイマ-ス!

投稿: kuroneko | 2008年7月 4日 (金) 01時28分

>「この写真の真偽がどうということは、私の視点ではありません」
「事実そのものを語る立場の者として、映画を撮ろうと決心したのです。」はどうなったのだろう・・・

>「映画は命を懸けてまで作るものではない」
まぁ確かにあの監督の立ち位置はそんな感じっぽいですね
僕は別に命懸けるのもアリだと思いますけどね
それはそれで面白いものができそう
まぁ面白いものができれば何でもありかと
ただ
スタントマンとかの人命軽視はダメですよ
香港映画ではたまにあります
女優さんが火達磨になって撮影が続行できなくなったりとか
http://hccweb5.bai.ne.jp/k-movie/gunrou.htm
ムーン・リー アクションできて可愛いっすよ
http://homepage3.nifty.com/hkaction/sub039a.htm
タイ映画の「七人のマッハ」では人死に出そうな超絶スタントがくり広げられるのだが
彼らの誇りはまだ誰も死んでないこと
いやーすばらしいっす
職人ですなー

投稿: 万物創造房店主 | 2008年7月 7日 (月) 19時39分

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