« 映画「スカイ・クロラ」 | トップページ | オシニンの精神で! »

2008年9月 8日 (月)

映画「ダークナイト」

「ダークナイト」
THE DARK KNIGHT

原作: ボブ・ケイン,ビル・フィンガー
原案: デヴィッド・S・ゴイヤー,クリストファー・ノーラン
監督: クリストファー・ノーラン
脚本: クリストファー・ノーラン,ジョナサン・ノーラン
撮影: ウォーリー・フィスター
音楽: ハンス・ジマー,ジェームズ・ニュートン・ハワード
編集: リー・スミス
出演: クリスチャン・ベール,ヒース・レジャー,ゲイリー・オールドマン,モーガン・フリーマン

時間: 152分 (2時間32分)

製作年: 2008年/アメリカ
(満足度:☆☆☆☆☆ )(5個で満点)
---------------------------------------------------------------

予備知識が一切要らない点がまず賞賛に値する。
また主人公が超人的なパワーを持ち"正義"を謳うヒーロー物の
映画作品としてはあらゆる点で最高傑作と言える。

自分はバットマンは原作の漫画は全く未見だしこれまで製作されてきた
過去の映画も一つも見たことない(何の自慢にもなりませんが)。
一応本作と繋がりのある同じくクリストファー・ノーランが手掛けた
「バットマン・ビギンズ」(2005年)も全く未見。
それでも、いやそれだからこそ純粋に楽しめた気がする。

バットマンは蝙蝠をモチーフにしたヒーローでそのコスチュームも作品の
テーマも"闇"を象徴していることくらいは何となく判る。
予告編のシーンはほとんどが夜でその画面全体に漂う暗さとバットマンの
シルエットとのトーンの調和の美しさ。
ヒース・レジャー(本作撮影後、逝去)演じる映画史上に燦然と輝く
最高の悪役ジョーカーの不敵な妖しい笑みの存在感のリアルさ。

予告編は傑作映画の必要条件「予備知識が無くても楽しめる」が満たされている
ことを強く予感させ本編はそれを充分に実証してみせている。

悪は強く、善は弱い。世の常の鉄則だ。そして善がいつ何時も風前の灯で
あることもまた然りだ。

"善"も"悪"も具体的に視覚的に即物的に見た人間はただの一人もいない。
本作は2時間半弱この二つの言葉とイメージが登場人物を媒介にして
激しく点滅し観る者を惑わす。

悪は確かにある。しかし善とは何だろう?善なんて本当に存在するのか?と。

バットマンを取り巻く善の孤立感の必然性と善が存在する意義そのものの危うさが
終始破綻なく描けていて、その背景の世界観のリアリティも心地いい。そして善は
簡単に悪に染まる。悪がわざわざ誘惑ぜすとも善でいることは何の
見返りもなく、ただ疲れ、時に馬鹿馬鹿しくさえある。家族の為、自分の
為に人々は時に悪を見逃し時に悪に自ら走る。

クリスチャン・ベール演じる主人公ブルース・ウェイン(バットマン)は
悩み、苦しむ。バットマンが活躍すればするほどジョーカー等悪党の
報復は留まることを知らず市民や恋人・家族に、街に危機は迫り続ける。

ジョーカーの行為はエスカレートしバットマンだけでなく恋人や仲間果ては作品の
舞台ゴッサムシティの人々にまで悪に染まることを"選択の余地なく"強いていく。

アクション映画としてもSF映画としてもパニック映画としても素晴らしい。
何よりも本作を輝かせているのは登場人物達(主人公クラスから脇役レベルまで)
の行動の動機を陳腐に語らない監督のセンスの良さと技のレベルの高さ
でありヒース・レジャーの鬼気迫る演技というかジョーカーという存在の"創造"だ。

ジョーカーはご存知トランプゲームでは何にでも使える必殺カードだが、本作での
彼はのあまりの無法ぶりはまさにどこにでも存在し且つ何者でもないジョーカー
そのものでありその超然振りは美しく、ほとんど神々しくさえある。

バットマン達は負け続ける。なぜなら悪党は人の命を奪い秩序も破壊し放題
だが善は悪を裁けても彼らの命は決して奪えないからだ。しかし彼らは
市民を守るという幻想を健気にも捨てず何度でも立ち向かっていく。

素晴らしくエッジの利いたカーチェイスを観ていて「ブルース・ブラザーズ」(1981)
のそれを思い出したが両作品共シカゴでロケがされている

「ブルース~」の監督ジョン・ランディスは「今のシカゴでは(許可の問題とか
いろいろあって)当時の様には二度と撮れないよ」と自信たっぷりに、しかし
とても寂しそうに同作のメイキングで語っていたが本作は「ブルース~」に決して
見劣りしない壮絶なカーチェイスをこれでもかと見せ付けて嬉しいったらない。

監督のクリストファー・ノーランはハードボイルド映画の極北にして傑作
アルパチーノとロバート・デニーロの競演も嬉しいマイケル・マン監督の
「ヒート」(1995)を参考にしたそうだが、なるほどテイスティングとして
参考にしているのを感じる。

ダークな世界観、脚本、小道具・大道具のギミックの描写の完璧さ、カーチェイス、
特殊撮影、配役、演技、重厚な音楽、撮影技術の確かさ、etc、etc、、

個々のカテゴリにおいて突出した作品はこれからも作られるだろう。今までも
あっただろう。しかし本作のトータルパワーにおけるバランス感覚のレベルの高さ。
これ以上、望めるか。
奇跡の総合芸術=『映画』の誕生に一緒に立ち会えた喜び!

自分はもう一度本作を観に劇場に行きます。

---------------------------------------------------------------
映画感想一覧 [年代] >>
映画感想一覧 [スタッフ] >>
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

|

« 映画「スカイ・クロラ」 | トップページ | オシニンの精神で! »

映画」カテゴリの記事

コメント

バットマンは悪党殺さないんっすか???
さすが建前正義の国アメリカ、日本のヒーローとは違いますね
日本はライダーキックやゴレンジャーストーンで爆死させちゃいますからね

投稿: 万物創造房店主 | 2008年9月11日 (木) 19時45分

悪党を殺さないのは殺した瞬間に善は
消えるからですね。
馬鹿馬鹿しいこの建前に「ダークナイト」は
エンターティメントとして正攻法で挑んでいて
すげー傑作です。今日二回目観に行きました。
もう一回劇場に行ってもいいくらいです。
 
>爆死させちゃいますからね
だって放送時間はCM抜いて正味20分しかないし、
予算も無いから怪人には綺麗にさっさと
跡形も無く消えてもらわないと困りますから。
日本は島国で国土も狭いですし(^^)

投稿: kuroneko | 2008年9月12日 (金) 01時40分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 映画「ダークナイト」:

« 映画「スカイ・クロラ」 | トップページ | オシニンの精神で! »