映画「赤い影」
「赤い影」
原題名: 'DON'T LOOK NOW'
監督: ニコラス・ローグ
脚本: アラン・スコット,クリス・ブライアント
撮影: アンソニー・B・リッチモンド
音楽: ピノ・ドナッジオ
美術: ジョバンニ・ソッコロ
編集: グレイム・クリフォード
出演: ドナルド・サザーランド,ジュリー・クリスティー
時間: 106分 (1時間46分)
製作年: 1973年/イギリス・イタリア
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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森で遊ぶ真っ赤なコートを着た少女クリスティンと自転車に乗った少年。二人の
父親であるジョンは寺院の修理を手掛ける考古学者だ。ジョンは礼拝堂の写真を
見ていると赤い服を着た後姿が片隅に写っていることに気付く。その赤い後姿から
まるで血のような赤色が広がっていく。そしてジョンは二人に異常が起こったことを
察し、外に出て行くとクリスティンは池の中に沈んでいた。
ジョンは妻のローラと共にベニスにいた。寺院の修復を手掛けるために。二人が
レストランで出会った不思議な中年の姉妹の妹には強い霊感があり初対面のローラに
娘のクリスティンの存在を霊視して告げる。ローラはしだいに姉妹に惹かれてく。。
原作は、イギリスの小説家ダフネ・デュ・モーリアの短編「いまは見てはだめ」。
町山智浩氏がブログで本作を紹介していたのを見て面白そうなので中古ビデオを
購入して観た。予想とは違った展開の作品だったが期待自体は裏切られずとても
面白く見れた。
オカルトを扱った作品だが、「オーメン」(1976)や「シャイニング」(1980)と一緒で
"我々の世界は人智を超えた世界と繋がっている"という前提で作品の世界が作ら
れている。そして本作におけるその世界観の完成度は高く見ごたえ充分で素晴らしい。
この世界には人間が一度踏み込んだら決して帰ってこれない世界がある。人は
その世界に入らないように充分注意して生きなければならない。中年姉妹達は人間
社会と異世界の境界のところに棲む人間でありジョンとローラにそのことを遠まわしに
警告をするが、この世界が合理的な仕組みで定義されていることを疑わない二人は
混乱を深めていく。狭い路地と幾つもの細い運河と橋で構成される街ベニスが異世界
そのものとなり二人を精神の迷子に誘っていく。
作中の世界はオカルトが存在する世界として描くことに成功しているのでちょっとした
シーン、背景に写る群集にも何かの意味が存在するのではと気になってしょうがない。
登場人物全てが怪しく思えてくる。劇中の重要な鍵を握る姉妹が登場しただけで悲鳴を
あげそうになる。
ジョンとローラの夫婦の営みのシーンが長く描写されているが、最後まで観ると
その描写の意味が判る。少なくとも二人はその営みの夜までは確実に人の理解の
範囲内の世界にいたのだから。
オカルトに興味が無い人でも夫婦の心の機微や人間の心の片隅にいつもある
世界への畏怖のようなものが的確に描けていて観る価値あり。だたし怖いのが
駄目な人には全くお勧めしない。
映像のクオリティは極めて高く、現代ではこのレベルの映像を撮るのは難しいと
思える。というか多分不可能。
紛れも無い傑作映画だ。たまに観て映像美と恐怖の世界に酔いしれよう。
ベニスにはいつか行ってみたいがこの作品を観てしまった以上は夜は
独りでは歩けない。。
中年の姉妹に出会っちまったら素直に警告に従う(ーー;)
原作を手掛けたダフネ・デュ・モーリア(1907-1989)はヒッチコック作品「鳥」(1963)、
「レベッカ」(1940)の原作者として知られている。
公開時の上映時間は110分(1時間50分)であるが、ウィキペディアによると、
STUDIO CANAL社の原版は「PAL早回し版」と呼ばれ、再生時の速度が4%程度
早回しされ、本編が4分短く、約106分であるとのこと。本文については、鑑賞したのは
ビデオテープによるものであるが、「PAL早回し版」であると思われる。
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コメント
これが例の探してたやつですか
これは見たことないし
持ってないっすね
でも、なかなか面白そう
今後チェック対象に入れてみます
投稿: 万物創造房店主 | 2008年10月 7日 (火) 20時34分
そうですか。
ちょい嬉しいっすね。
これは傑作ですよ。
観て絶対に損ないです。
投稿: kuroneko | 2008年10月 8日 (水) 00時25分
DVD再発しますよ!
しかも廉価版、定価1800円
amazonによると発売日は2009年2月13日みたいです
投稿: 万物創造房店主 | 2008年11月30日 (日) 17時15分
情報ありがとうございます!
これはかなり嬉しいですね。
買います!(^0^)/
ニコラス・ローグって名匠なんですね。
この作品もとても奥深くて名作ですが
他の作品もバンバン観ようと思います。
それにしてもブルーレイまじで早くも
消えるかもしれませんねー
SDカードとかになっていくのかな。。
個人的には映画は今のDVDとかCDのような
円盤ディスクっぽくあって欲しい気がしますね。
投稿: kuroneko | 2008年11月30日 (日) 23時40分