「篤姫」第四十六話終了。
・第四十六話「慶喜救出」終了。
・徳川慶喜大阪城脱出。
クライマックスだけは今回の大河では初めてちょっと感動した。
しかし、この感動は撮影現場で作られたものであってつまり
役者と演出と現場スタッフの結晶であって脚本の力ではないん
だよな。
サクサクっと鳥羽伏見の戦いが描かれるけど「錦の御旗」が
翻ったから薩長の勝利に終わったのは単なる結果論にすぎない
のだからそこばかりクローズアップして西郷さぁにまで
「さあ錦の御旗じゃあかかってこんかいおんどれら。
歯向かう者はドイツもコイツも賊軍じゃあ!!」
と絶叫させるのは許し難い。(セリフはこんなんじゃないけど)
本当、このドラマは製作現場に近いスタッフのレベルは一貫して
高いのだけど主張がとて酷い。
どうしてこれほど何でもかんでも貶めなきゃならんのか。
恐らくは当時の人間の多くは心のどこかで徳川時代の終焉を
強く感じていたはずで270年かけて作り上げてきた巧妙で精巧な
徳川の支配システムにより諸藩のほとんどは慢性的且つ深刻な
窮乏に陥っており(今の県と国の関係と同じ)満足な戦いなぞ
出来るはずもない。
薩長は共に関ヶ原の戦いに敗れた恨みを延々と脈々と継承し続けて
さらに江戸幕府から遠いことをいいことに薩摩は密貿易などで蓄財を
続けて世界の動向も探り武器を購入して反抗の"刻"を待ちに待ったので
あるから強いのもある種当然である。
しかし当然鳥羽伏見の戦いは薩長にとっても賭けだった。
"錦の御旗"が最も効果を表したのは付和雷同したもともと日和見
で生きた多くの人間達にとってだ。
慶喜は賊軍になるのが嫌だったのは間違いないのだろうが
それよりも将軍でありながら幕府の未来を見限った(機構全体の
老朽化を的確に見切った)極めて現代的な最高経営者の一人だったに
過ぎない。
錦の御旗が出た瞬間に将軍も含めて皆逃げ出すって
どんだけ幼稚なロールプロイングゲームなんだよ。
小松帯刀の非戦論が終始坂本龍馬の賛同?を拠り所にしているのも
実に見苦しい。人として卑しい。
坂本龍馬が"平和の使徒"であったかのように描き彼に肯定的
に関った人すなわち善とするのは歴史への冒涜のなにものでも
ないだろう。錦の御旗の描き方と全く一緒で幼稚だ。
脚本書いている人ってもしかして10才くらいのゲーム好きの
世間知らずで歴史漫画ばかり(表面的にしか)読んでいない
少年なんだろうか。
小松帯刀という一個人の人間の苦しみぬいた挙句の個人的な
知識の集積の果ての非戦論であってそれを描かなくては
ならないはずなのに。
そして薩摩の人間でありながら公然と?西郷達を批判するならば
当然の如く龍馬と同じ運命にならなくてはならないだろう。
北大路欣也の勝海舟も他の出演者同様、露出は多いものの
演じる余地もたいして与えられずもてあまし気味で気の毒だ。
天障院に面会するように慶喜に促すシーンでも
「とにかく何でもいいから会ってみろ」
ってもう脚本いらんじゃん。
本当に脚本ないのかもしれないな今回は。
皮肉にも時代の終焉の混乱と登場人物達のアイデンティティの
所在の圧倒的な描写不足とが相乗効果を起こしてあと数回の
展開を見届けたくなってはきた。
見ながら適当に脳内で同時進行的に編集してセリフも変換して
対応することにしよう。
テレビドラマとは言え、こんな歴史の矮小化を一年もかけて
やるならせめて受信料を半分にしてくださいませ。
エヌエイチケーさん。
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コメント
いやー最近の篤姫はどんどん酷くなってますな
年表通りの歴史のうわべなぞっただけの垂れ流し部分が多い多い
人物描写も独断と偏見だけで感情移入もなしにいいかげんに行われてるし
つまらないを通り越して見たことすら頭に残らない・・・
もう全てのシーンを大奥だけにして
状況は篤姫への手紙とか報告だけで分かるみたいにした方がよかったのではと思います
投稿: 万物創造房店主 | 2008年11月25日 (火) 17時41分
『現場』は頑張ってるんですがねー。
事件は脚本の深層で起こっちゃってますね。
宮崎あおいちゃんの孤軍奮闘が痛ましいですね。
見届けてあげようとは思っています。
今回の大河の西郷さんはマジでダメだこりゃ(>_<)
投稿: kuroneko | 2008年11月26日 (水) 00時59分