映画「昭和残侠伝 死んで貰います」
「昭和残侠伝 死んで貰います」
監督: マキノ雅弘
脚本: 大和久守正
撮影: 林七郎
音楽: 菊池俊輔
美術: 藤田博
編集: 田中修
出演: 高倉健,藤純子,池部良,中村竹弥,加藤嘉
時間: 93分 (1時間33分)
製作年: 1970年/日本
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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大きな銀杏の木の下で秀次郎(高倉健)と幾江は偶然出会う。
秀次郎は賭博の帰りにヤクザ達に喧嘩を売られ傷を負っていた。
芸者の卵の幾江は言い付けで買った酒を秀次郎に飲ませる。
やがて秀次郎は因縁の博打打を襲撃し傷を負わせ捕まる。
出所した秀次郎は板前からやり直そうとするが。。
これぞ由緒正しい『ザ・ヤクザ映画』( ̄ー+ ̄)
タイトルから登場人物達の台詞からストーリー展開から要所要所で
流れる演歌調の音楽から王道を行く殺陣の数々からクライマックスの
健さんの敵の組事務所への討ち入りまで完璧。
パロディじゃない心地よさが本作にはギュウギュウ詰まっている。
この映画観ればもう他のヤクザ映画観る必要無し。
何本ヤクザ映画観てもこの映画を観ないと意味無し。
と言えるくらいの逸品中の逸品。
秀次郎を温かく厳しく見つめ続ける重吉を演じる池部良(最後は
秀次郎と一緒に討ち入り!)が素晴らしい。今、こういうオーラ
出す俳優少ないすな。
昭和二年という設定の材木置き場での乱闘シーンも
河でのロケシーンが映像がとても素晴らしく美しい。
親分達も子分達もそれらしくて見ていてただひたすら嬉しい。
良くも悪くも滅んでしまった風景・人情模様が終始続く。
このジャンルが斜陽に向かう原因となる芽も確実に本作に芽生えている
のも見て取れうるのがまた興味深い。
クライマックスの健さんと池部良のドスを持ってたった二人で
敵地に向かうシーンはスタッフの全てが一体となって作り出した
国宝級の完璧さだ。
冷静に観ていると、残酷な血しぶきとかグロテスクなシーンは
実は驚くほど少ないのだけど、「暴力の恐怖」はきちんと描かれている。
最後の最後、ほんの一瞬まさに1秒程度だけど闘い終えた
秀次郎が自分で右手に握ったドスを左手で賢明に剥がそう
とするシーンに大拍手!!
人を刃物で"斬る"というのは実際にはとても大変なことだそうで
斬ってしまった後は自分の手が硬直してしまうと何かの本で
読んだがまさにそれだ。
「ヤクザ映画は正直好きじゃないなー」としみじみ思ったけど
本作は『映画』として観る価値あり。
ちなみに、自分が好きなヤクザ物としては
「二代目はクリスチャン」(1985 監督 井筒和幸)がある。
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コメント
「この映画観ればもう他のヤクザ映画観る必要無し。
何本ヤクザ映画観てもこの映画を観ないと意味無し。」
これは
意義アリーっ!って感じです
この映画は僕の中では博徒映画の中堅ぐらいっす
やっぱり最高の博徒映画は
緋牡丹博徒の加藤泰監督三部作です!
この映画と比べやすいのが
3作目「花札勝負」
この映画では純情な芸者役の藤純子が主演で健さんが相手役を演じてるのですが
二人の無言の恋愛模様や
最後のカチコミ
全てに渡ってこの作品を凌駕しています
是非
緋牡丹博徒見てみて下さい
投稿: 万物創造房店主 | 2008年11月25日 (火) 18時12分
>意義アリーっ!って感じです
えーupした時に多分言われるだろうと
激しい予感がしました(^^;)
>緋牡丹博徒見てみて下さい
必ず!観ます!!
この作品"弛緩"は確実に感じるんですよね。
この後ジャンルがダメになっていく予感が
何箇所かに確実にある。。
これより前の作品を幾つか観て追記を
したいと思います。
って言ってもやっぱしこの手の作品は
どうも自分には合わないようですが(^^)
投稿: kuroneko | 2008年11月26日 (水) 01時04分
まぁ博徒モノ好きじゃなくても楽しめる
博徒系オススメなんかもあっちゃいますよ
石井輝男監督「やさぐれ姐御伝総括リンチ」
http://jp.youtube.com/watch?v=g69c8sCUHPg
石井輝男監督「怪談昇り竜」
http://jp.youtube.com/watch?v=q96BUjU1L2o
藤田敏八監督「修羅雪姫」
http://jp.youtube.com/watch?v=4ThZKTdZHds
は是非どうぞ
投稿: 万物創造房店主 | 2008年11月30日 (日) 17時46分
作品紹介ありがとうございます。
石井輝男前から何度も言及されてますよね。
機会あれば観てみます。
多分自分は根っからの「リアリズム賞賛派」
なんだと思いますね。本物という意味での
リアリズムではなくキャラクターとか場面
設定がどこまでも精巧であって欲しいと思う
という意味で。「昭和残侠伝 死んで貰います」
はキャラクターの設定や動機の描写が丁寧で
良かったです。"ヤクザ映画"というジャンルに
作り手が枠を作ってしまって甘えているような
作品は全く評価しないですね。
「二代目はクリスチャン」はその点
エンターティメントという土俵でちゃんと
勝負していて評価できます。
クライマックスの討ち入りも良い出来です。
緋牡丹博徒は一刻も早く観たいですね(^^;)
投稿: kuroneko | 2008年11月30日 (日) 23時50分
あ、上でご紹介した三つはリアリズムあまり重視してありませんから気をつけて下さい
とことん娯楽追求型です
「やさぐれ姐御伝総括リンチ」は
降雨の中の殺陣でなぜか着物がどんどん脱げていくぐらいですから・・・
ついでに全編に渡ってむちゃ下品です
姉妹作品に「不良姐御伝 猪鹿お蝶」というのもあります
こちらには昔日本で一世を風靡した(らしい)スウェーデンポルノ女優クリスチーナ・リンドバーグも出ております
「怪談昇り竜」は
怪談+任侠+座頭市+江戸川乱歩とどうやって接点持たせるんだってモノを石井輝男味でまとめちゃった感じで
任侠モノと思って見に行った人は100%がっかりする気がします
「修羅雪姫」は
ありえないぐらいの血しぶきに染まる梶芽衣子がめちゃかっこいいんですが
子供時代に樽のなかに入れられ坂から転がり落とされる一見何の役にも立ちそうにない謎の修行などしてますし・・・
投稿: 万物創造房店主 | 2008年12月 9日 (火) 15時51分
>殺陣でなぜか着物がどんどん脱げていく
>全編に渡ってむちゃ下品です
とりあえず見たくなりました(^^;)
内容は下品でも「確信犯」はいいですよね。
志は高い。
最近の映画と呼べない代物の
の家族だの平和だの愛だの未来だの世界だの
といった極薄(ナノの世界?)の主張の方が
犯罪的に下衆で下品ですよね。
投稿: kuroneko | 2008年12月10日 (水) 00時48分