映画「阿波の踊子」
「阿波の踊子」
監督: マキノ正博
脚本: 観世光太
撮影: 伊藤武夫,立花幹也
編集: 畑房雄
出演: 長谷川一夫,黒川弥太郎,入江たか子,高峰秀子,月田一郎,清水金一,
鳥羽陽之助,汐見洋,清川荘司,清川虹子,沢村貞子,横山運平,高堂国典,
進藤英太郎,沢井三郎,三田国夫,瀬川路三郎,冬木京三,永井柳筰,石川冷,
長島武夫
時間: 71分 [モノクロ]
製作年: 1941年/日本 東宝映画京都撮影所
(満足度:☆☆☆☆☆+)(5個で満点)
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理不尽な代官によって兄を殺され行方を眩ました弟が数年の時を経て、
阿波踊りのお祭りの日に帰還し代官に復讐を遂げる。
雨上がりの野外のシーンの多くが光の加減と構図が完全に絵画の世界に
なっていてとんでもなく感動してしまった。ストーリーはとてもシンプルだが
堅実に演技と映像で見せている。こういう作品は大好きだ。
登場人物達と長谷川一夫演じる主人公の兄の仇討ちをしようとする男が
ほどよくニアミスを繰り返しつつ徳島の地元の人々をエキストラとして大量
動員したという阿波踊りのシーンの怒涛のクライマックスは下手な何十億も
かけた大作映画など"屁"でもない圧倒的なパワーに満ちていて永久に観て
いたいとすら思った。もうこの映画は終わらなくていいと。
宿の女達や旅の男達等脇役達の軽妙なお喋りも簡素で美しいセットと共に
主役達を軽やかに盛り上げていく。
当然架空の話だが阿波踊りという実際にある踊りを映像として完璧な存在感で
描くことで他愛無い物語の展開が奇妙なリアリティを持って迫ってくる。
こんな美しく内容確かな面白い映画が観れない環境は何だかおかしいとすら
思う。日本を良くしたかったらこんな良作がどの街でもいつでも気軽に観れる
社会であってほしい。高峰秀子(本作制作当時17才)がとても愛らしく好演して
いるのも楽しい。
ウィキペディアによると、1937年の盧溝橋事件以降、徳島の阿波おどりは
自粛されていたが、本作における現地撮影がきっかけとなり再開された。
また、本作の公開は1941年5月であるが、同年12月に日本は太平洋戦争へと
突入する。
日本人ならば(日本人でなくとも)死ぬ前に観ておきたい一本。
「おーい、明日踊ろうぜぇぃ」
「踊ろう、踊ろう!」
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