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2008年12月31日 (水)

映画「リダクテッド」

「リダクテッド」

原題名: REDACTED
監督: ブライアン・デ・パルマ
撮影: ジョナサン・クリフ
編集: ビル・パンコー
出演: パトリック・キャロル,ロブ・デヴァニー,イジー・ディアス

時間: 90分 (1時間30分)
製作年: 2007年/アメリカ・カナダ

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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イラクに駐留する一部隊の兵士達が自分達の駐留する意義を見出せず
やがて罪の無い地元のイラク人の家に侵入し少女を暴行し一家全員を
殺害するまでを追う擬似ドキュメンタリー。イラクで米兵が起こした実際に
起きた事件(マフムーディーヤ虐殺事件)に基づいている。

リダクテッド[redacted]とは削除済み・編集済みという専門用語
らしいが「スネーク・アイズ」を撮った監督らしく擬似ドキュメンタリー
という形態をとりながら限りなく本物の映像に近いリアリティを
保ちながら極めて政治的な題材を扱いつつこのタイトルを持って
きたところがデ・パルマらしいと思う。

内容が内容だけに大手は本作の製作に名乗りを挙げずに
町山智浩によればHDNet というテレビ専用ケーブルテレビ局が
てがけ撮影はHDビデオですまし予算は500万ドル(5億円程度)で
済ませているとのこと。

無名の俳優を起用し撮影の規模からいえばその程度かとも
思うが映像のクオリティと作品そのもののポテンシャルから
いえばこの事実は驚天動地といっても大袈裟ではない。

最早、映画のクオリティの低さを制作費のせいには全く出来ない
ということを本作は完璧に証明しているからだ。

一体5億円ぽっちでワンカットでも本作に匹敵する画が撮れる
システムを構築できる人間が日本では何人いるだろうか。
心細い限りだ。

その多くは奨学金目当てで志願しているといわれ本来は
実戦に参加する可能性はごく僅かのはずの"州兵"として
登録されているにも関らず碌な訓練も装備もなく運び込まれて
くる"米兵達"。何を守るかも明確でなく、誰が敵なのかも
判らず実弾を込めた銃を持って異国に駐屯する若者達。

そして彼らに監視され銃を突きつけられ時には発砲され
時には人間としての尊厳を踏みにじられるイラクの人々。

デジタルとはいえビデオ撮影とは到底思えない重厚な映像
と共に、兵士達の苛立ちとイラク市民の絶望と怒りと共に
ヘンデルのサラバンドがとても印象的にインサートされる。

規模は小さいとはいえ製作費の安さを感じさせない作り
と現在の社会で起きていることの幾つものファクター
終わらない戦争・情報ツールの氾濫によるの事実の錯綜・
人間社会のボーダーレス化による混沌
を詰め込んでいて作品としても破綻していないのは凄い。

何よりも本作で描かれている90%は当然のことながら
作り物であり絵空事であるがどんな小さなショットもニュース
ソースとして使用されても絶対に判らない。

全てが目の前に展開しながらもその全てが何なのか
事実なのかフェイクなのか一切判らない。

まさに自由とか何とか言われているが[編集"済み"]の社会に
我々は生きてる。

観ておいて全く損の無い作品だろう。
本作のような実験精神が高く社会性にも富み何よりもクオリティも
十分に高い作品を還暦を越えていながら5億円で撮ってしまう
デ・パルマと本作に関った関係諸氏の手腕は本当に凄い。

 
[Mahmudiyah killings]
================================================================
The Mahmudiyah killings were the gang-rape and killing of 14-year-old Iraqi girl
Abeer Qassim Hamza al-Janabi by United States Army soldiers on March 12,
2006, and the murder of her family, in a house to the southwest of Yusufiyah,
a village to the west of the town of Al-Mahmudiyah, Iraq. Charged with the
crimes were five U.S. Army soldiers of the 502nd Infantry Regiment consisting
of (I) SGT Paul E. ================================================================
(From Wikipedia, the free encyclopedia)
 
 
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コメント

デパルマこんなん撮ってたんですね
最近、最新映画情報全く調べる気ないもんですから
全く知りませんでした
チェックチェック!
デパルマの戦争モノと言えば「カジュアリティーズ」を思い出しますね
あれはベトナム戦争でしたが
テーマは今回と近いんじゃないでしょうか
これは是非見てみたいです

投稿: 万物創造房店主 | 2009年1月 9日 (金) 18時57分

>デパルマの戦争モノと言えば「カジュアリティーズ」
パンフでも比較されてました。
自分は「カジュアリティーズ」は中古ビデオ
買ったまんまですが観ないといけませんね。
デ・パルマと言えば私は
「アンタッチャブル」であり
「スネーク・アイズ」ですが
今回の「リダクテッド」はイラク戦争物では
第一級品の出来です。
この作品が僅か制作費5億円が本当に素晴らしい。
自分も一山当てたら映画作りたいすね。
万物創造房店主さんに美術関係丸投げっす。
幕末物撮りましょう(^0^)/

投稿: kuroneko | 2009年1月10日 (土) 00時20分

>デ・パルマと言えば
ぼくは「殺しのドレス」が一番に来ますね
まさにヒッチコック直系って感じの殺人鬼モノで
エロ・グロ・バイオレンス
三拍子そろってて
カメラワークもめちゃすごいです
犯罪モノでは「アンタッチャブル」より「スカーフェイス」&「カリートの道」が好きです
アルパチーノがいい味出してるんですよ
若かりし日の血気盛んな「スカーフェイス」と
対照的に時代に取り残され枯れた「カリートの道」
連続で見るととても楽しいですよ

投稿: 万物創造房店主 | 2009年1月18日 (日) 18時11分

>幕末物撮りましょう(^0^)/
ほのぼの系は三谷さんがやってしまったし
ヒーロー系は昔からよくあるし
ホームドラマ系は篤姫でやったし
やはり
エログロバイオレンス路線で
殺伐とした悪魔の部隊のような奇想天外系新撰組とかいいですね
で、主人公は女
主人公の家族はみんな新撰組に強姦され・皆殺しにされて
主人公も片足・片手・片耳・片目をなくすんですよ
(↑この設定だけで片腕ドラゴンは超えてますね、百鬼丸まではいかないですけど)
で残った片足・片手を鍛えて
必殺剣を得とく
復讐のため新撰組の面々を血祭りに上げていくと

死ぬ場所はなるべく史実通りに
土方は五稜郭で
近藤は処刑場に打ち行って
沖田は病床についているのを容赦なく
そうだ
ついでに竜馬も暗殺しましょう
今までにない極悪な竜馬にして(←これ意外に新しいかも)
いやもう
新撰組・竜馬ファンからブーイングの嵐でしょうね
すばらしいなぁ・・・うっとり

投稿: 万物創造房店主 | 2009年1月18日 (日) 18時27分

>奇想天外系新撰組
意外と大真面目で作ると裾野が広い世界
だと思いますね(^^)

>今までにない極悪な竜馬
史実の通りになぞると龍馬って
目の前にいたらかなり食えない奴で
ムカツクと思いますね。
ここだけの話し。。
 
撮影2日くらいでマジでやりたいすね。

投稿: kuroneko | 2009年1月19日 (月) 23時01分

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