聖なる日に見た光景
会社の近くの喫茶店(東京ではメジャーなチェーン店)で
コーヒーを飲んでいると目の前に一人の初老の男性が座っていた。
明らかに生きることに絶望していた。
絶望しているだけでなく恐らくこれからの生活を思い
恐怖しているような表情だった。
その目は怯えていた。
小さなバッグは明らかに所持品全部という感じだった。
行くところも全く無さそうでもあった。
「今まで何やってきたの?」
思わずそう思った。
上から目線ではなくて、その余りに怯えた表情に
こうなることを人生のどこかで予想して覚悟を持つ
または回避することは出来なかったのかと問いたくなってしまったのだ。
そんなことをこの男性に問うのは酷すぎることは勿論判っている。
ただただコーヒーを飲みつつ新聞を読みつつ
男性の表情と目を見つめていた。
彼の恐怖の表情に気付いたのは自分だけでなかったようだ。
男性の向かいにいた中年の女性が
「おじいちゃん、これで牛丼でも食べといで」
と言って近くのファーストフード店で使える
サービス券を差し出した。
男性は躊躇無く受け取りに女性に近づいた。
その躊躇の無さが私には残念だった。
「この券で食べられるから。味噌汁もつくからね」
男性は券を受け取って何度も会釈した。
正直、受け取って欲しくなかったな。
男性の健康状態はとりあえずは悪くも無さそうだった。
映画のワンシーンのようにただ黙って見ていた。
帰りの電車の改札前では
若い女性達が金きり声を上げてケーキを売っていた。
バナナの叩き売りのように。
全く売れそうもない雰囲気。
皆金が無いから買わないのでなくて
そんな安っぽい売り方をする実際に中身も(味も)安い
ケーキなんて食べたいとも思わないだろう。
ケーキでも何でも食べ物でさえあればいいという
人以外には。
どこもかしこもミスキャストで一杯だ。
それにしてもこのクリスマスの夜に住処も無く
外で過ごす人は一体都下に何人いることだろう?
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コメント
そうならざるを得ない状況下もわかります。
希望が持てる社会であってほしいものです。
もちろん自己責任もあっての上で…
しかし挨拶や会話が減った社会になりましたね…
投稿: きらら | 2008年12月26日 (金) 18時23分
>しかし挨拶や会話が減った社会になりましたね…
しみじみそうですね。
でもこんな時代だから"ささやかな喜び"
例えば"挨拶をする"ということの大切さが
実感できる社会ではないかとも思いますね。
希望はどこにでも常にある。
けどそれらを取り上げていることにあまりに
無自覚な人間もまた多いですね。
投稿: kuroneko | 2008年12月26日 (金) 22時41分
私には、挨拶仲間がいま~す(笑)
バイクや車ではありえませんが、自転車だと、すれ違うときに会釈したり、こんにちわって声かけたり、挨拶するんです。だから、顔しか知らないし、特に話もしないけど、挨拶だけする挨拶仲間です!
投稿: 理想 | 2008年12月27日 (土) 09時49分
"バイク"にもいるじゃないですか挨拶仲間(^0^)
「SAYONARA」2012年世界同時公開!
投稿: kuroneko | 2008年12月27日 (土) 13時48分