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2009年1月24日 (土)

映画「乱」

2009年に見た映画(一) 「乱」

原題名: 乱
監督: 黒澤明
出演: 仲代達也,寺尾聰,根津甚八,隆大介,原田美枝子
時間: 162分 (2時間42分)
製作年: 1985年/日本
(池袋 新文芸座にて鑑賞)

2009年 1月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)

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時は戦国乱世。己一代で領土を拡大してその名を轟かせた一文字秀虎
(仲代達也)も今や老いた。三人の息子達と周辺を分つ友好的な領主達と
猪狩りに興じたある日突然家督を長男の太郎に譲ると宣言する。
自分に父の領土と民を統治する力がないといいつつも満足げな
長男の太郎に対し三男の三郎(隆大介)は力量の無い長男が跡を継ぐ
ことを憂いその場で率直な進言を行い秀虎の怒りを買い追放となる。
やがて、隠居生活に入ったものの自分を軽んずる太郎に我慢ならない
秀虎は次男の二郎からも冷たい扱いを受けかつて三郎の住居だった三の丸
の城を占拠する。長男と次男の率いる両軍がほどなく三の丸に押し寄せ
圧倒的に不利な秀虎の軍勢は壮絶に討たれていった。。

中学生の頃、冒頭の武将達の会話のシーンを観て何が面白いのか皆目
判らず挫折。
高校生の頃、とにかく"クロサワエイガ"を観なくてはと思い立ち
観始めたがやはり冒頭のシーンでどうにも眠くなってしまい再び挫折。
...10数年が経過。
三回目のリベンジは事実上の初見で且つ大スクリーンで観る幸運に恵まれた。

全体的に大満足。子が親を討ち、親が子を討ち、妻は夫を脅し、
兄弟はお互いに弓を引く。弱者は虐げられ無残に死んでいく。
その救い難い世界はまさに"乱"そのものだ。
最初から最後の最後までダークなしかし人の心象の表現としては
リアルな世界感と凄惨でそれゆえ美しい合戦シーンの数々。
美しい衣装。圧倒的な風景描写。

2009年の今を生きる自分の正直な気持ちとしては「七人の侍」よりも
こっちの方が暗くて黒澤明の絶望感のようなものも見えて好きだ。

オープニングの馬上の武士たちの自分達の領土を見渡すシーンが
爽快な構図で武士達の馬上の姿勢も凛として素晴らしい。
劇場で観れて良かったとしみじみ思った。

黒澤明が画家を目指していたことは最早有名な話しだが
青空・入道雲・夕暮れ・闇・黒雲・巨大な石垣・城門・
登場人物達の心象と共に使い分けられた各シーンの変化に富んだ天候や
重厚なセットの見せ方、画面コントロールも見ごたえ充分だ。

俳優の演技や炎上する巨大な城のオープンセットとか色々と監督は
不満も沢山あったろうと観ていて何となく思うがそれでも

もうこんな映画誰も撮れやしねえだろうと諦めるしかない
ようなヤケクソとも思える戦闘シーンはそこいらのハリウッド製
ドンパチ映画なんて全然目じゃない。

壮絶な父子の骨肉の闘いによって人生を狂わせられ続ける人間達
が安易に報われない(というか全く報われない)のも大変よろしい。

原田美枝子が『女優』していていいなあ。

武満徹の音楽も実に素晴らしいが黒澤とは関係は悪かったようで
wikiによれば
「これ以後あなたの作品にかかわるつもりはないと言い放った。」
そうな。当然のことながら画面上からは判らない。

ただ大規模な撮影(主に合戦シーン)が多い作品なので監督含め
スタッフ・キャストにはスケジュールや予算の問題も含めて気苦労が
多かったような雰囲気は多分に感じられる。そしてそのイライラ感が
本作のダークな世界感にプラスに働いているように思うのは気のせい
だろうか。

こういった作品こそブルーレィ版で出すべきだし(もう出ているのか?)
そもそもいつでも劇場で観れる社会であるべきだ。

残念なことだがきっと国内ではなく海外でこそ高い評価を
今後も永久に与えられるであろう作品だろう。

こんな作品作りたくて仮に金があってもその技術も人もない。
俳優もいない。何よりも撮影するに足る美しい国土を自発的に
喜んで失っちまってる我々って何なんだろうか本当に。

また是非劇場で観たい。

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