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2009年2月 8日 (日)

映画「JLG/自画像」

2009年に見た映画(四) 「JLG/自画像」

原題名: JLG/JLG-autoportrait de december
監督: ジャン・リュック・ゴダール
出演: ジャン・リュック・ゴダール
時間: 56分
製作年: 1995年/フランス・スイス
(池袋 新文芸座にて鑑賞)

2009年 2月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)

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森の中を通る一本の路。
雨の降る日の路。
風の吹く日の路。
穏やかな午後の陽の射す路。
寂しい夕暮れ前の路。
雪が降り積り人が通るのを拒む路。

様々な季節と時間とで全く表情を変える路を
とても効果的に随所に見せながら
圧倒的な海辺の描写と波の音、風の音、
部屋の内外から見える風景、静物と共に
タイトル通りゴダール自身の日常の断片が
モノローグとして古今の警句を交え描かれていく。

「フレディ・ビュアシュへの手紙」から10数年後の
作品でありその発展形であり完成形といってもいいような作品。
ゴダールの奏でる言葉は音楽の調べそのもので
一言一句が何だかとても心打たれるものがある。

自身が沈黙して過ごす部屋の最低十分な家具"しか"ない
美しさ。時折登場する人間達との微妙だが決定的な
心理的な齟齬の可笑しさ。

何でもない日常の1コマを演じながら凡人には
どこを切ってもとてつもなく非日常的でしかない
到底辿り着けない領域で生きる初老の男の
エロチシズムが漂っていて凄いとしかいいようがない。

成長した精神の充実は肉体的な老いなどなんでもない
ことを教えてくれるような気がした。

ゴダールはとても愉しんで本作を撮っているようで
観ていてとても羨ましい。モノローグ以外はたいした
台詞もなく登場する女性の美しさと無意味な露出といっても
無味乾燥なエロさとも違う描写もとても楽しい。

個人的には今後の生きる指針の一つを鮮やかに
指し示してくれた。もし10年後、20年後に
本作と遭遇してしまったら勝手に敗北感に
打ちのめされてしまって相当やばかったかもしれない。

数年間に一回は観て自分の生き方が間違っていないか
点検しなくてはおれないような、それでいて
まるで鏡のようにその時折の自分を映し出し
全く異なる作品であるかのような印象を持つような、
本作を観る時間もないような人生はきっとかなり
深刻に間違っているに違いないような強い確信を持った。

本作は時たま観なくては。
ゴダールの至高の人生には遥かに及びもつかないが
その欠片を垣間見て勝手に自分の人生のどこかを
無理やり投影させて勘違いして生きなくては
やっていられやしない。

これほど海の詩的な美しさをフィルムに捉えた作品も
ちょっと他に思い浮かばない。

本作の台本を是非読んでみたい。

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