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2009年2月14日 (土)

映画「愛に関する短いフィルム」

「愛に関する短いフィルム」
Krótki film o miłości
A Short Film About Love


監督: クシシュトフ・キェシロフスキ
脚本: クシシュトフ・キェシロフスキ,クシシュトフ・ピェシェヴィチ
撮影: ヴィトルド・アダメク
音楽: ズビグニエフ・プレイスネル
美術: ハリナ・ドブロヴォルスカ
出演: グラジナ・シャポウォフスカ,オラフ・ルバシェンコ

時間: 87分 (1時間27分)
製作年: 1988年/ポーランド

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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訳あって友人の母親と二人で暮らし郵便局で働く19才の青年トメク。向かいの
アパートに住む女性マグダの部屋を望遠鏡で毎日のように覗いていた。トメクは
その女性を恋い慕うあまり彼女の郵便物をも盗んでいた。牛乳配達のアルバイトを
始め彼女の部屋に牛乳を配達する日々。トメクはある事件をきっかけにマグダに
覗き見していることを打ち明ける。。


 青年のあまりのダメっぷりと冷静な犯罪ぶりに思わず

ストーカー礼賛映画かよ。

と思ってしまったがそうではなかった

 これは、題名通りの『愛に関する』フィルムだ。

 郵便局と、アパート二棟とその間にある空間と街の描写。

 そして、後半は重要な展開が起こるマグダの部屋。

 主要な舞台はそれだけであるが青年の「思いを外に出せないもどかしさ」が
細かい演出及び演技と、映像美で丁寧に表現されているので全く飽きない。

 マグダに自分の正体を明かすトメクだが、異性経験が豊富な彼女は最初は
怒りを露わにするがすぐにトメクに興味本位な好奇心で接するようになる。

 手紙を盗むは、覗き見はするは、異性に何のアプローチも出来ない
どうしようもないダメ男のトメクが実は数ヶ国語を取得していると判るとマグダは
急に犯罪者扱いから異性として認める兆候を見せ始める

 観ている観客もそんなことで彼のそれまでの行動を帳消しにしてもいいように
思えてしまう。

 マグダは、トメクに何が望みなのか、交際か肉体関係かと再三迫るが
トメクはただ「君を愛している」と呟くばかり。

 そんなトメクの真意をマグダはつかめずに覗き見しているとしりながら窓から
全て丸見えにしてボーイフレンドとの交わりを楽しみ、やがて牛乳を配達してきた
トメクを部屋に招き居れ。。

 可哀相な、しかし複雑で繊細な心を持つトメク役の青年がギリギリのところで
揺れまくる10代を見事に好演しているから破綻していない。

 ただのストーカーにいつでも墜ちそうだが、物語は、コミニュケーションを
取りたくても取れない孤独な人間は何もトメクだけではないことを徐々に炙り
出していく。

 ラストは、オープニング時の印象とはうってかわって心を打たれた

 可哀相なのは、トメクではなかった

 無記名的なのに、印象を深く残す建物の撮りかたも見事だ。

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