映画「破れ太鼓」
2009年に見た映画(十三) 「破れ太鼓」
原題名: 破れ太鼓
監督: 木下恵介
出演: 坂東妻三郎,小林トシ子,宇野重吉,木下忠司,桂木洋子
時間: 108分 (1時間48分)
製作年: 1949年/日本
(池袋 新文芸座にて鑑賞)
2009年 2月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
若い頃から裸一貫叩き上げで財を築き中企業の社長を営む男。
何室も部屋がある庭付きの屋敷で女中も常時二人雇い
ブルジョアな暮らしを妻と6人の子供達(4男2女)にさせているが
誰一人として今ひとつ感謝してくれない。それどころか
ガミガミと日々ガナリたてる自分の様を音楽家志望の次男に
"破れ太鼓"と称され作詞作曲をして妻と子供達に大合唱されて
しまう始末。
戦争が終結してまだたった5年とは映画を観ていても全くどこにも
そんな気配は感じられないのがやたらと新鮮だった。
芝居に夢中の10代中盤の年頃の次女を快活に演じているのは
てっきり高峰秀子だと勝手に脳内で変換して終始観ていたが
全然違った。調べてみると桂木洋子という女優さんだったが日本人
離れしたプロポーションでお年頃のお嬢さんをとても可愛らしく
演じている。
小林トシ子演じる長女と恋に落ちた画家志望の青年が満天の
星空の下で走り出して「僕たちは自由だ」と叫ぶシーンがある。
何だか一昔前の藤子不二夫漫画のワンシーンのように
"真横"から走る二人を捉える構図(土手のようなところを走って
いあるけど普通の道だったら地面の中が映るような構図)
なのだけどそのマンガチックな画面構成が恋人達の楽しくて
仕方無い気持ちが溢れていて楽しい。走る二人の背景には
建物は何もなく広大な星空が広がっているのだけど今という
時代では100%ファンタジーな首都圏では当たりまえだがどこにも
ありえない景色なので変に感動してしまう。
"破れ太鼓"は坂東妻三郎演じるそれなりの地位の男が年中うるさく
不快な音を家族に向けて発し続ける様を指しているわけだけど
立派な豪邸に住んでいるのに家族で暮らす幸せをちっとも
分かち合えないこの8人家族全員のことをさしているようにも
思えた。
父と企業戦略を兼ね備えた縁談を台無しにして貧乏画家と恋に
落ちる長女から始まって父の会社を継がずに叔母とオルゴール
製造会社を始めてしまう長男と長年のつもり積った不満を一気に
大爆発させる妻とリズミカルに家族の一大攻防戦が描かれ
まったくもって楽しく観れた。
演出も出演者の演技もとても良く出来ているが時代背景を考えると
ロケーションだけとっても充分見る価値のある作品だ。
---------------------------------------------------------------
映画感想一覧>>
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 映画と賞を取ることについて関係性における独り言(2021.05.02)
- 映画「ジョーカー」(2020.12.09)
- 映画「魂のゆくえ」(2020.07.24)
- 映画「愛の渇き」(2020.05.01)
- 特撮映画における或る命題について(2020.04.29)
コメント