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2009年2月22日 (日)

映画「アラビアのロレンス」

「アラビアのロレンス」(完全版)
LAWRENCE OF ARABIA

原作: T・E・ロレンス
監督: デヴィッド・リーン
脚本: ロバート・ボルト
撮影: フレデリック・A・ヤング,ニコラス・ローグ(第二班)
音楽: モーリス・ジャール
編集: アン・V・コーツ
出演: ピーター・オトゥール,アレック・ギネス,オマー・シャリフ,アンソニー・クイン,
ジャック・ホーキンス,アーサー・ケネディ,クロード・レインズ,ホセ・ファーラー,
アンソニー・クエイルドライデン,ドナルド・ウォルフィット,マイケル・レイ

時間: 227分 (3時間47分)
製作年: 1985年/イギリス

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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ある朝、一人の男がオートバイ事故に会い一週間後に死んだ。彼の死は大々的に
報じられ、イギリスの上流階級の多くの大物達が彼の死を惜しんだ。
1935年の春のことだった。男の名はトマス・エドワード・ロレンス。
空軍の一少佐にすぎない学者肌の男がアラビア世界に独り身を投じて砂漠の民を
率いて中東戦線で決定的な役割を果たしながらも偽名を使ってまで一介の空軍兵士
に成り下がった男。一体彼は何者であったのか。学者か?優れた戦略家か?偉大な
指導者か?ただの山師か?その手ははっきりと血で汚れていた。大量の血で。

「いつかそのうち観ることだろう」というか
「いつか観ればいいや」と
思っていた作品をとうとう観た。

初めて観たのが完全版でしかも劇場だったことはとても嬉しい。
テーマの深さも撮影の規模もストーリー展開の大きさも文字通りの
史上空前の超大作だ。

しかもその内容は
想像を遥かに遥かに超えたぶっ飛んだ作品だった。

主役は灼熱の砂漠と駱駝。そしてT・E・ロレンスという奇妙な男。

前半は何となくイメージした通りの展開だった。
ロレンス少佐(後、大佐)が徒手空拳で砂漠の部族達とコネをつけて
イギリスが敵対していたトルコ軍の背後を突かせる。
懐疑的だった者達は勇気があるのか無謀なのか判らないロレンスに
ある者は心酔しある者は実利的な見返りのみを求めて従う。

奇襲に成功して当面の目的を達成し本国からも一躍認められたが
やがてイギリス軍の統制から外れた"ロレンス軍"は列車強盗を
繰り返しロレンス自身も凄惨な殺戮を厭わなくなる。

ロレンス役のピーター・オトゥールの容姿が日本人からみて
端正すぎて、砂漠の映像と全編の音楽が壮大過ぎてこの作品は
何とも言えない"ロマン"の匂いが漂う。実際、たった一人の男が
やってのけるのにはほとんど最大級といっていい功と罪を
余すことなく描いていてその振幅の大きさそのものがロマン
といえばロマン。そして何よりも本作の大作ぶりそのものが
現代社会のロマンそのものなんだけど、

エンドクレジット直後の一種の後味の悪さは一体なんだろう。
オレンス(ロレンスはアラビアの民からそう呼ばれることを好んだ)
君は一体何ということをしてしまったんだい?

本国に勝利をもたらすことだけを望んだ、そしてほんの少し中東世界に興味の
あっただけの男が引き起こしたカタルシスの大きさにただ呆然。自分のやった
ことに素直に恐怖して何もかも投げ出そうとして実際に投げ出してしまう
アンチヒーローぶりにまた呆然。完璧なまでな映像化にまたまた呆然。

何百人何千人という人間が組織化してやがては国家にもなり何十年もかけて行う
生理的な現象(略奪とその正当化と報復の連鎖)をたった一人の行動に託して
見せてしまうことの異常さ。

これが実在の人物だというのだから
事実は小説よりも映画よりも奇なり。

「毀誉褒貶の激しい男の一代記」と記してしまうには
犠牲があまりに大きすぎ突き放すには社会は彼らを利用
し過ぎて後戻りなどとても出来ない。

一体20世紀だけで何人のロレンスを先進国は生んで
しまったのだろう。21世紀の今も生み続けているのだろう。

観ていて途中から怖くて震えた。
観終わって怖くてさっさと帰って鍵をかけてさっさと寝た。
人間はつくづく恐ろしい。今、自分一個の命の存在なんて
何と儚く偶然の所産に過ぎないことか。

可能な限り大きなスクリーンで可能な限り精度の高い画面で観るべき作品。

彼は我々の代理人なんだ。彼は我々が何者なのかを教えてくれる。

ジョセフ・コンラッドの「闇の奥」もいよいよ読まなくてはいけなくなった。

パンフレットの表紙がとても秀逸な出来。
砂の底なし地獄に嵌った仲間を救おうとする下僕をロレンスが慌てて引き止める
シーンだが意図的にピントをぼかして魅惑的な人々の幻想を誘う中東の砂漠世界を
絵画のように美しく表現している。
『本物の』T・E・ロレンスの写真も掲載されているのだが
その人なつこすぎる子犬のような眼は演じたピーター・オトゥール
と余りに瓜二つで不気味ですらある。

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コメント

まぁこのお話は中東の現在に直結するお話ですからねぇ・・・
当時の英国は極悪です
たぶんナチスよりもヒドイ
イスラエルの建国あたりまでもからめてあるともっと面白かったかもしれませんね

投稿: 万物創造房店主 | 2009年2月23日 (月) 18時40分

>イスラエルの建国あたりまでもからめて
ここまで絡めるとイデオロギー色が強いので
本作はこれでいいと思います。
「山河遥かなり」っていう映画
http://tokyo-kuroneko.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-2cc2.html
のラストは孤児の子等がイスラエルに向かって
旅立つエンディングですが映画自体は秀作だし
大戦終結直後でその楽観的な描写もまあ
許されるかもしれませんがその政治臭は
やはり観ていて何だかなーと思いました。
 
中東の情勢はむしろ911後の今の世界の方が
エンターティメントを失わずに赤裸々に
描いてしまう映画が出来そうですよね。
だって皆「知っている」のですから。


投稿: kuroneko | 2009年2月23日 (月) 22時26分

ランボーの逆映画とか作れないですかね
タイトル「ボンラー」とかで
アブグレイブ刑務所に収容されて拷問チン切り・妻子強姦惨殺されたイラク人ひとりが
修行を積んで暗殺術をマスターし
イラク駐留のアメリカ兵を残らず抹殺するお話で
当然、アメリカ兵の俳優はにくたらしそうで極悪なキャラばかり使います
「俺の名前を言ってみろ!」
「はぁ~聞こえんなぁ~」
「息をするのもめんどくせー」
みたいなキャラもいるといいですね

投稿: 万物創造房店主 | 2009年3月 2日 (月) 15時23分

>「ボンラー」
受けました(^-^)
この漂うチープ感がいいすね。
中東のレンタルビデオ屋(←あるのか知らないけど)
に余裕でありそうな作品ですね。
タイトルはともかく。
そういえば世の中深刻・混沌となり過ぎて
"パロディ"というのも細分化して世代を問わず
皆で笑うという作品ようなもすっかり作りにくく
なりましたね。「トロピックサンダー」は
そんな中でもパロディとしては規模が大きく
しかし中身もよろしくてお勧めっすよ。

投稿: kuroneko | 2009年3月 3日 (火) 12時42分

そうだ
「修行を積んで暗殺術をマスターし」の前に
「性転換手術で絶世の美女に生まれ変わり」
を加えよう
せっかくチン切りされたのだから

投稿: 万物創造房店主 | 2009年3月 9日 (月) 18時23分

>「性転換手術で絶世の美女に生まれ変わり」
うーん今は流石に不況なので
キワモノ過ぎると興行成績が下がるかな(^^;)

投稿: kuroneko | 2009年3月10日 (火) 00時36分

全く別の超キレイな女性の役者さん使いますので、そんなにキワモノにはならないと思います

投稿: 万物創造房店主 | 2009年3月17日 (火) 19時09分

そういえば
真木よう子の本格主演(アクション)映画
観たいなーなんて思ってたら
妊娠してしまいましたね(ーー;)
あんまり芸能界に未練も無さそうですね
この人は。楽しそうでもないし。
ダイヤを磨く人材が不足すね
今の日本映画界は。

投稿: kuroneko | 2009年3月18日 (水) 01時02分

>真木よう子の本格主演(アクション)映画
アクションできそうだし
巨乳も披露しちゃってくれそうですしいいですね
やってほしいなぁ・・・

投稿: 万物創造房店主 | 2009年3月25日 (水) 18時44分

予想としては
出産を終えて一段落したら
映画に主演するのではないかと
思いますね。
「週刊真木よう子」も絶賛されたし
来年あたり何か動きがするのでは。
監督は、、大根仁がいいなかあ(^^)

投稿: kuroneko | 2009年3月25日 (水) 22時17分

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