2009年に見た映画(十六) 「イントゥ・ザ・ワイルド」
原題名: INTO THE WILD
監督: ショーン・ペン
出演:エミール・ハーシュ,ハル・ホルブロック,モス・デフ,キャサリン・キーナー
時間: 148分 (2時間28分)
製作年: 2007年/アメリカ
(池袋 新文芸座にて鑑賞)
2009年 2月鑑賞
(満足度:☆☆)(5個で満点)
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大学を順調に卒業した成年クリス(エミール・ハーシュ)は
アラスカの荒野に向かった。身分証明書を捨て所持金を捨て家族も
名前も捨てて。2年間の放浪の末に目的地アラスカに着いた彼を
待ち構えていたものとは。。
ショーン・ペンと言えば自分にとってはデッドマン・ウォーキング(1995)であり
マドンナの元夫である。だけどてっきりデッドマン・ウォーキングでは確か
監督を務めていたっけと自分の頭の中では脳内変換されていたけど
調べてみたら監督ではなくて主演だった(監督は「ショーシャンクの空に」
で主演しているティム・ロビンス)。でも主演の男の演技はクライマックス以外では
特にあまり覚えていない。その主演の男がショーン・ペンだったんだな。
本作は新作として公開してた当時はある種の嫌な予感がしたので当然のように
スルーしたのだけど最近よく利用している新文芸座で流れる予告編を
何回も観ている間に主演の若者が「判っていそうな」表情をしていたのが
気に入り"信じて"観に行ってみた。でも、、
裏切られた。やっぱり。自分の直感は当たりだった。
幼少の頃から親の不仲を見せ付けられたこと(主に父親の妻へのDV)に
対して壮大な復讐を遂げるために大学卒業までは猫を被り続けて
卒業と同時に可愛い妹までも捨ててアレクサンダー・スーパートランプ
と名前を変えてアラスカに向かうまでは良し。"トランプ"は放浪者の意味。
ただそれだけだ。この映画は。
上映時間の大半をじっくりアラスカへの旅の軌跡を見せるけど
スーパートランプ君はワイルド(荒野)にイントゥ出来ない。きっとこの映画は
出来ないことを見せようとしているんじゃなくイントゥした若者が
やがて敗北していく様を描いているつもりだと思うけど
そうではないところがあまりにもあまりにも予想通りだった。
2年間もじっくり時間をかけてアラスカに向かったのに
アレクサンダー・スーパートランプ君の無智・無能振りは
観ていて時に腹立たしく時に悲しすぎる。でも自業自得すぎて
腹立たしい方が大きい。
最も腹立たしいのは現代の物質至上主義文明を散々批判して
「自分はその枠組みから自ら率先して外れました」みたいな
態度を取り続け周囲もそんな彼を温かく見守ってしまうわけだけど
ちゃんちゃらおかしい。
なぜなら彼は決して『銃』を捨てようとしないからだ。
銃ほど近代文明社会を象徴するハイテク機器があるだろうか。
莫大な設備投資を必要とし理路整然とした寸分の隙もない肯定の
連続からのみ生産され、しかも目的は"何かを殺すこと"だけだ。
銃器を持って反戦や反文明を唱える人間よりも会社で上司に叩かれ
家で家族に馬鹿にされ世の中のトレンドに流され翻弄されまくって
身包み剥がされてそれでも社会に塗れて生きるサラリーマンパパ・ママの方が
どれだけまともであろう。
しかもスーパートランプ君は好きで社会の歯車に飲まれているわけじゃない
人々を諭しながらアラスカに着いたら禄に自活も出来ずに
腹が減ったと叫んで荒野で銃を乱射する。
情けない。。
私は期待していた。そのうち当然のように銃を捨てて自分で
弓と矢を作って服も破り捨てて獣を獲って皮を剥いで自作の服を作って、、
とサバイバルを見事にやってくれるだろうと。ずーっと期待して観ていたけど
ダメだコイツ。[死んで]当然だよ。自然は甘くねーっす。
自然は過酷なんだよ。スーパートランプ。いやクリス。
だから皆街に逃げ込んで堕落して生きているんだよ。
ショーン・ペンは何が描きたかっったのかは推測出来るけど
全然できていないと思う。この作品はどこか空虚だ。
この作品観ることにより感化されて自然に入っていく輩が
自然を破壊しないことはきっと不可能だろう。
自然だけでなく社会も自分が破壊していることに気付かないだろう。
主演のエミール・ハーシュは何も悪くない。
体当たりできちんとこのボンボン君を演じている。
でもエミールが表現する主人公像は愛嬌があり過ぎて且つ
体格が良すぎて頭も良さそうで、つまりは問題解決能力が
ありそうなのでこの作品の主人公の行動と観ていて
チグハグ感が否めない。チグハグ感が計算された演出だった
としたらかなり面白かっただろうけど全然そうじゃない。
本当に自分の立場を捨ててアラスカに入っていった実在の若者の
話しをベースにしているらしいけど本当の話ならそれはそれで、
この恐るべき敗北の物語には語るべき多くのことがあるように思う。
「自分探しのロード・ムービー」っぽくしてしまったのは
勿体ないように思う。本作は沢山のいい素材を捨てている。
トランプ君最後まで自分のやっていることに全然疑問持って
ないようだし。まあそれだからの結末なんだけど。
途中で出てくる凄い美人のお嬢ちゃん(ジェナ・マローン)の描かれ方が
娼婦同然だったのも腹が立った。というか娼婦ですらなかった。
可哀そうに。ショーン・ペンの若い女性に対する見方のようにも思えた。
最後のロングショットも残念ながら失笑ものだった。
自然の偉大さではなくロケ場所の貧弱さと本編との矛盾を自ら見せて
しまっている。その貧相な景色は彼の住処となる廃バスのすぐ側に
コンビニでも出てくるんじゃないかとワクワクしてしまった。
そしたらかなりの皮肉が効いていて面白かったけどそんなことしたら
2時間20分も描いたことそのものが全部嘘になってしまうので
ありえないけど。このロングショットは製作者の中で疑問に思う人
もいなかったのだろうか。
「イントゥ・ザ・ブッシュ(森)」くらいだろう。本作は。
個人的にはショーン・ペンは俳優でいった方がいいんじゃないかと思う。
彼の次回作はきっと観ない。彼も自分のような人間を観客として
想定しては作っていないような気もする。
内容は☆1個だけどかなり長距離を移動したであろう撮影の
プロぶりに敬意を表し、主演の男の子の頑張りは評価して+☆1個。
演者は総じて良かったと思う。だから余計に残念な作品だった。
久しぶりにエンドクレジットの途中で劇場を出た。
これからは自分の直感をもっと信じよう。
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