映画「肉屋」
「肉屋」
Boucher, Le
監督: クロード・シャブロル
脚本: クロード・シャブロル
撮影: ジャン・ラビエ
音楽: ピエール・ジャンセン,ドミニク・ザルディ
出演: スティファーヌ・オードラン,ジャン・ヤンヌ,アントニオ・パッサリア
時間: 89分 (1時間29分)
製作年: 1970年/フランス
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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若くして小学校の校長を務める独身の女性エレーヌ(スティファーヌ・オードラン)は
同校の教師の結婚式で肉屋を営む中年の男ポポール(ジャン・ヤンヌ)に出会う。
二人は意気投合して頻繁に会うようになるがエレーヌは恋人関係になることはなぜか
避け続ける。やがて村で陰惨な殺人事件が起こる。被害者は結婚した同僚の教師の
新妻だった。。
タイトルは『肉屋』。
オープニングではオドロオドロしく不協和音の音楽が流れ何万年も流れ続けた
水滴により磨かれて光沢を放つ鍾乳洞が観客を迎える。まるで新鮮な肉のような
輝きと滑らかさ。。
何かが起こるでぇ
と実に明確に伝えている。
誰かが肉になっちまうのか( ̄ロ ̄lll)
いやきっとそーに違いない。
オープニングが終わると小規模の結婚式披露宴が始まり肉屋が
出来立ての料理を厨房に運んでくる。
これか、この肉が問題のぉぉぉ??
質感たっぷりの肉が心なしか小刻みに震えてるようにも見える。
がただの気のせい。
くわえ煙草で歩く美しくて明るくて子供に優しい校長先生のエレーヌは
当然のように生徒からも村の人間からも慕われている。
エレーヌ演じるスティファーヌ・オードランがとにかく美しくて茶目っ気があって
大人の色気が充分あってとんでもない。肉屋の男でなくても誰でも男なら
こんな素敵な女性には惹かれるに決まっている。
そして変なケレンミの無い日常描写の積み重ねがかえって平和な村に起こった
事件の異常性を際立たせてどんなシーンでも見ていて全然飽きない。
殺人事件の犯人が誰なのか、結末はどうなるのかということよりもエレーヌと
ポポールの人物造型が丁寧に出来ていて二人とも澱みなく演じているので
彼らの微妙な距離感が恋愛感情という表面的なことよりも一個の人間同士の
力学的な引っ張られ合いとしてきちんとフィルムに収められていてハラハラ出来る。
途中まで相当にサスペンスフルになるが個人的にはそのまま何が何だか
判らない状態のままで観客を置いていってくれる展開だったのなら
ほぼ満点の出来だった。本作の結末の描かれ方でも全然悪くないけど。
というか好きな終り方ではある。
登場人物の中で一番罪深いのは、、そう
エレーヌ、君だよ。
魅力があり過ぎて罪なんだよエレーヌ。そりゃ男は誰でも狂うわさ。
肉屋の主人ポポール役のジャン・ヤンヌも中年独身男性を
バランス感覚抜群に演じていてとても安心して観ていられた。
総合的にレベルが高い秀作。
見て損なし。
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