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2009年3月 1日 (日)

映画「カルメン故郷に帰る」

「カルメン故郷に帰る」

監督: 木下恵介
脚本: 木下恵介   
撮影: 楠田浩之   
色彩技術: 小松崎正枝,赤沢定雄   
音楽: 木下忠司   
助監督: 小林正樹,松山善三,川頭義郎
出演: 高峰秀子,小林トシ子,佐野周造,佐田啓二,笠智衆,望月美惠子,井川邦子

時間: 86分 (1時間26分)
製作年: 1951年/日本

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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東京でリリー・カルメンという名で踊り子として活躍する"おきん"(高峰秀子)は
雄大な浅間山の裾野にある実家に同僚(小林トシ子)を連れて帰省する。
地元の小学校では運動会の準備が進んでいた。地元の人間にとっておきん達の
やることなすこと何もかもが奇異にしか写らない。都会で人気者になって故郷に
錦を飾ろうと意気揚々帰ってきた"きん"は当然面白くない。おきん達は自分達の
踊りを一夜披露することになるが"裸踊り"をするという噂で小さな村は大騒動になる。。

 "ゲージュツ"対"芸術"の決戦映画

 都会の毒にすっかりやられ何も判っていない"おきん"と同じ穴のムジナを快演する
のは小林トシ子。本作と同じく木下恵介が手掛ける秀作「破れ太鼓」(1949)では、
ほんの少しスカートがめくれても真っ赤になって泣いてしまいそうな可憐な娘さんを
涼やかに演じていたのに本作では小学校のイケメン先生を破廉恥にお股も広げそう
な誘惑をするオツムのよろしくない主人公の友達役を堂々と演じている。
 
 女優って凄いなあ。。

 かつて学校で教えていこともあるらしい盲目の男田口(佐野周二)は自ら作詞作曲
した浅間山の勇壮さを表現した唄を夕暮れが迫る校庭でオルガンを演奏する。
先生等はその歌詞と曲のイメージの確かさにしばし心打たれ聞き入る。子供達も
自然と遊ぶのを止め集まってくる。劇中で最も芸術的で美しいシーン。ど派手な
服装で所構わず自分達の一方的な主張ばかりを繰り返す"おきん"達、それでいて
何かといえば「田舎者はゲージュツが判らない」と口走る彼女達の厚顔無恥な行動と
田口の奏でる音は鮮やかな対比を見せる。

 運動会でクライマックスを迎えるはずだった田口の演奏発表はおきん達のデリカシー
皆無の騒がしさに妨害され台無しとなってしまう。名誉挽回とばかりに自分達の踊りを
披露することが決まり練習に励むおきん達だが"裸踊り"を見せるという宣伝に村の
男達は騒然となり静かだった村はいよいよ混沌の度を深める。

 断然踊りの披露を止めさせようとする小学校校長(笠智衆)とおきんの父だったが、
彼らは思い直す。

 「彼女達があんな振る舞いをして平気でいるのは、それを見ては喜んで平気で
お金を出す連中が都会にいるからだ。日本の真ん中で堂々と行われている行為
ならこんな片田舎でやることに一体なんの不都合があろう」
と。

 地元の雄大な自然を讃える美しい唄を作る才能ある者が貧しさのあまり唯一無二の
大切な財産であるオルガンを借金の形に取られ妻の荷馬車を引く仕事の僅かな収入で
生き、男達に適当な振り付けで肌を晒して生きる女達に金が集まり彼女達を金づるに
する者達はホテル開発だろうが何だろうが金になれば手段は一切選ばない。
芸術を根底から破壊して
何ら省みない者達によって"ゲージュツ"が語られ金になる

物だけが残っていく。しかしそれらも金にならなければ
捨てられていく。。

 監督の木下恵介は細やかな演出でリアルな人間の行動様式を描いてみせることで
観客に「果たしてこれでいいのだろうか?」と訴え考えさせることに成功しているように思う。
前掲の「破れ太鼓」においても、また「陸軍」(1944)でも同様の傾向の演出が見られ興味
深い。

 都会の毒を撒き散らす娘達と田舎にほんの僅かに残るのみの人間としての真っ当さ
の対比の見事さに終了後気が付いたら拍手をしていた。他の観客達も10数人が本作の
大団円に拍手を送った。拍手の嵐とならないところが胡散臭くなくてとても良かった。
映画は皆それぞれ自主的に楽しめばそれでいいんだ。
たった一人でもこの作品に拍手を送ることは何も恥ずかしくない。

 そして、実は劇中で何よりも最も美しいシーンそれは。。
笠智衆さん、貴方の見事な一本背負いです。
それはそれは国宝級に美しかった。。
あれこそ『芸術』。一生忘れません( ̄ー ̄)*キラン

 本作は記念すべき邦画初のカラー作品である。
wikiによれば、カラーフィルムによる製作が最終的に失敗と判断された場合に備えて
全てのシーンが白黒フィルムでも撮影されたとのこと。つまり映画丸々二本分の
労力が本作には費やされている。

 
 また、主演の高峰秀子の生涯の伴侶となった松山善三は本作において助監督を
務めている。

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コメント

なんか最近
なかなかハイペースで映画見たはりますね
しかも映画館で
羨ましい限りです
僕の方はやっとブレードランナーアルティメットbox手に入れました
とりあえず
ワークプリントと劇場公開版見ました
けっこう違いますね

投稿: 万物創造房店主 | 2009年3月 2日 (月) 15時35分

去年の秋頃から
kuroneko流幸せスキーム
「映画館で映画を見ることを生活の基盤に置く」
を構築開始しまして今年の2月から正式に発動っす。
まあまあ順調です(^-^)反比例して会社での
立場が危うくなってますがまあ会社になんて
未練もないし(^^)今日もさっさと6時であがって
観に行く予定っす。
 
>ブレードランナーアルティメットbox
メイキングもたっぷり見れて嬉しいすよね。
私はワークプリント版の荒削りな感じが好きすね。
特典では原作者とリドリーのレプリカントに対する
見解の相違や制作現場でのスタッフとリドリー
との確執とかも観れて楽しいすね。

投稿: kuroneko | 2009年3月 3日 (火) 12時50分

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