映画「不貞の女」
「不貞の女」
LA FEMME INFIDELE
監督: クロード・シャブロル
出演: スティファーヌ・オードラン,ミシェル・ブーケ,モーリス・ロネ
時間: 95分 (1時間35分)
製作年: 1968年/フランス・イタリア
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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パリにほど近い緑豊かな郊外に邸宅を構え美しい妻(スティファーヌ・オードラン)と
実子の男の子一人を持ち、不自由なく暮らすごく普通の中年の男(ミシェル・ブーケ)。
しかし、妻の行動に不審を持った男は探偵に身辺を探らせると案の定、不倫をして
いたことが判明する。ある日、男は妻に内緒で不倫相手(モーリス・ロネ)の住居へと
向う。。
地位と金は充分持っているがただそれだけの今ひとつ、いや決定的にセックス
アピールに欠ける冴えない中年男性をミシェル・ブーケが100%演じているのが
本作に本質的なリアリティを与えている。良夫を頑張れば頑張るほどに比例して、
いや、累乗され妻の退屈感&倦怠感はズンズン増していく。
この女、不倫してねぇはずがねぇズラよ旦那ぁあ(゚д゚;)
淡々と夫婦の日常生活を描いていても緊張感と危機の予感は確実に確実に
蓄積され二人の行動から一時も目が離せない。
クロード・シャブロル上手いなあ(溜息)。
そして夫は決意する。相手に会おうと。不倫相手の邸宅での男同士の会話のシーン
はまさに拳闘そのもの。お互い軽いジャブの応酬からやがては壮絶な打ち合いか
やがてはクロスカウンターによる相打ちか。
しかして物語は、意外な方向に転がって行く。
『お互いの心の内には一切干渉しない』とルールを定めお互いにそのルールを
守り仮面夫婦の生活を10年近くも過ごしてきた二人の関係に実生活での破綻が
きたした時、二人が意図しないうちに本当の夫婦の絆がいつのまにか滲み出て
いるクライマックスは哀しくも美しい。
ずっと冴えない夫役を演じ続けたモーリス・ロネの最後の表情カッコイー。
中盤まで心の中で貶しまくってスミマソン。
君は間違いなくこの女の夫だよ。
世界に一人しかいない妻を心から愛する見事な夫だ。
本作を一言で言ってしまえば、雨降って地固まる。
にしても一体何だろうか。この弛緩無き面白さ・楽しさは。
尺も実に調度いい。2時間きっちり過不足無く楽しんだと思ったら90分ちょっとしか
ないんだなあ。
日本でも充分作れる作品(のはず)である。だが、そうおいそれと作れそうもない
この揺ぎ無い確信が『上手さ・テクニック・センス』なのだろう。
ちなみに本作で大人の魅力炸裂の美しき妻役のスティファーヌ・オードランの
不倫相手役を演じる二枚目俳優モーリス・ロネはバツ一の後、かの喜劇王
チャールズ・チャップリンの娘ジョセフィン・チャップリンと再婚している。
純粋な面白さは偉大だ。
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