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2009年4月11日 (土)

映画「宮本武蔵(第一部)」

「宮本武蔵(第一部)」

原作: 吉川英治
監督: 内田吐夢
脚本: 鈴木尚之,成沢昌茂,内田吐夢
音楽: 伊福部昭
撮影: 坪井誠
美術: 鈴木孝俊
編集: 宮本信太郎
出演: 中村錦之助,三國連太郎,入江若葉,木村功,丘さとみ

時間: 110分 (1時間50分)
製作年: 1961年/日本 (東映京都)

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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吉川英治原作の同名小説の映画化であり五部作のうちの第一作。友人の又八と
一緒に功を得ようと関ヶ原の合戦に参加した宮本村の悪童、武蔵(たけぞう)が
沢庵和尚、お通達との心の触れ合いの中で葛藤しやがて学問に目覚めるまでの
剣豪宮本武蔵の若き日々を描く。

名匠内田吐夢と当時の大スター中村錦之助(後の萬屋錦之介)が
がっちりタッグを組んだ堂々の大作。吉川英治の原作の方は井上雄彦の
漫画「バガボンド」の原作といえば判り易いだろう。

中村錦之助の演技というか動き(アクション)が素晴らしい。
お尋ね者となった武蔵(たけぞう)が裏切られ、追われ、走る走る。
ワンカットで、物凄いロングショットで走る走る。また走る。
その躍動感はまるで実写版「未来少年コナン」。

もともと生きるエネルギーに満ち溢れていた人間"たけぞう"は
体制に従順に生きる人間達に疎まれ蔑まれさらに傍若無人となり
まさに野獣のように逃げ回り追い詰められ人を斬る。

その"たけぞう"に人間に生まれ変わる路を指し示す沢庵和尚を
演じるのは三國連太郎。三國連太郎は優れた役者なのだろうことは
"知ってはいる"が個人的に琴線に触れた決定的な作品はこれまで
なかった(「復讐するは我にあり」(1979)での怪演はなかなか良かったけど)が
本作での辣腕和尚振りは全くもって凄い。主役の錦之助を食うほどの余裕の演技。

人間を信じる心を失った"たけぞう"と弱さの象徴のような生き方
をしていく又八、仏の道を生きる人間として人間の諸行を見つめ
生きる沢庵和尚、美しき心を宿す少女お通。

ただカタログ的にずらずら並べて登場してくるのではなく
彼らは皆"人間"という得たいの知れない生き物の持つある側面を
ほどよく増幅したキャラクターとしてそれぞれ魅力的に描かれている。

その演出の造型のダイナミックさは戦前に成人となり、終戦後
しばらく独自の判断で中国大陸に残り甘粕正彦の死も看取ったと
言われている振幅の大きな異色の人生を送った監督内田吐夢の
世の中を見る目の奥深さに大いに関係がるように思われる。

沢庵の術中に嵌り杉の木に吊るされた"たけぞう"。
その境遇の全てを自分以外の何かに責任転嫁して罵詈雑言を放ち
続ける"たけぞう"と全ては己の心の未熟さの所産であることを
懇々と語る沢庵和尚。彼らを照らす月。。
まだ映画がその"質"において他の追随を許さない娯楽の王様だった
時代の揺るぐことの無い名シーン。

中村錦之助、三國連太郎、内田吐夢という才能を美術・音楽・撮影
のプロのスタッフががっちり固めた文句なしの傑作エンターティメントだ。

これ書きながらwebを検索してみると三國連太郎はかつて稲垣浩監督で
宮本武蔵を連作で演じている。さらに三國版の「宮本武蔵」第一作の
1954年の作品ではアカデミー外国語映画賞名誉賞を受賞しているようだ。
こちらも機会がれば是非観てみたい。

さらに検索すると押井守作品を多く世に出しているプロダクションI.G
の2009年の新作は宮本武蔵である模様。
「宮本武蔵-双剣に馳せる夢-」公式サイト
押井守は原案と脚本を担当。押井守と宮本武蔵、、何か今ひとつ結びつかない。。

宮本武蔵は日本人にとって今もこれからもまだまだ優良コンテンツであることは
間違いないのだろう。革命は夢想しない範囲で孤独に頂点を目指すという
辺りが共感を得るのであろうか。。

血湧き肉踊る大傑作の本作には若い時に出会っておいた方がより
楽しいかもしれない。

五部作の第一作だけど本作一作だけでテーマ的には起承転結が
しっかり出来ているので他のを観れなくても存分に楽しめる。
(スターウォーズのエピソードⅣみたいなものであろうか)

内田吐夢を始め携わった関係諸氏全てにありがとうと言おう。
面白かった!

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