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2009年4月 5日 (日)

映画「明治天皇と日露大戦争」

2009年に見た映画(二十八) 「明治天皇と日露大戦争」

原題名: 明治天皇と日露大戦争
監督: 渡辺邦男
出演: 嵐寛寿郎,藤田進,高田稔
時間: 114分 (1時間54分)
製作年: 1957年/日本 (新東宝)
(六本木 シネマート六本木にて鑑賞)

2009年 3月鑑賞
(満足度:☆☆☆+)(5個で満点)

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日露戦争(1904-1905)を開戦から旅順港閉塞作戦・黄海海戦・
遼陽会戦・旅順攻略(二百三高地での激戦)・奉天会戦を経て
日本海海戦までを一貫して明治天皇と主要閣僚達の視点から描く。

アラカンこと嵐寛寿郎がどこまでも国民と国を思う明治天皇を熱演。
プロパガンダ映画と言ってしまえばそれまでの内容だが
「戦うしかない」と国のトップから庶民まで最初にして最後、
最も意思を共有出来ていたであろう"気分"はとても良く表現
出来ていると思う。

軍人役を演じる人々の背筋が端役に至るまでことごとく全員ピンと
伸びていて観ていて心地よい。

一兵卒達の顔も丸いの、四角いの、ヒゲと色々で全国かた徴兵
されてきた雰囲気が非常に感じられ最初で最後の国民による戦争
(それが嘘か真かはここでは置く)を描いた映画としてはとてもよろしい。

旅順港閉塞作戦(敵の艦隊が出てこれないように船を自沈させ湾口を
閉鎖する作戦)のシーンでは予算の都合で当然のように実物大での
甲板シーンは片方の側からしか見せていないが俳優達のキビキビとした
動作と照明の当てかたの工夫で気合の入ったいい夜戦シーンに
なっていて驚いた。

大陸を進んでいく行軍もこういった映画は往々にしてカーキ色の
軍服を着せてただゴルフ場のようなところをテレテレ歩かせるだけ
だが本作は歩行もままならない荒野をひたすら行軍する兵士とその
脇をかけぬけていく馬に跨った兵士達も勇ましく駆け抜け記録映画
と見紛うようなリアリティが随所に溢れていてよろし。

天皇から閣僚、軍人、庶民まで「どうやったら勝てるか」という
一点に向かって行動する様は事実はどうであれ気持ちのいいものだ。

残念だったのは旅順攻略が乃木希典大将の指揮による愚直なまでの
人海戦術によってだけで成功したと描かれている点か。
実際には当時世界最強の要塞と謳われた旅順要塞を落とすには
兵士の力だけでは不可能で最終的には海軍から大砲を借り受け
数ヶ月かかるといわれた設置を数週間でやってのけ勝利に貢献
している。また地下をひたすら掘り抜いて爆破により攻略する
という計画も実施されたようだ。

日露戦争の時にすでに陸軍と海軍の確執と組織の深刻な硬直化は
始まっていて海軍から大砲を借りる・借りないというやりとり
については司馬遼太郎の長編小説「坂の上の雲」に詳しい。

また地下を掘って爆破を試みる作戦や二百三高地での兵士達の壮絶な
戦い振りについては「二百三高地」(1980)で詳しく描写されている。

旅順が墜ちた時のドラマチックな盛り上がりは「二百三高地」が
上だけど良くも悪くも当時の日本が抱いていた戦争への高揚感と
無邪気さ楽観性は本作はなかなかよく雰囲気を出しているのでは
なかろうか。

あくまでも真っ正直な"戦"(いくさ)によって大勝利を得られたかの
ように描いてあるのでエンターティメントとして愉しめよいと
思う。

現実的には日本を海外で良く見せて戦時国債をより買わせるように
というメディアによる戦争も当然のことのように日本は戦って
いたし何よりもロシアの国内情勢の不安定さが日本にとって
大きく功奏したことも間違いない。そしてロシアの国内情勢の
揺さぶりを煽る人間も当然のように投入していたことと戦争遂行
へのその影響の大きさについてもそろそろ白日の下にしてもう
いいのではないだろうか。

どこまでも娯楽作品であり、それなりに良く出来ているが
本作がいたずらに賞賛される時代はこないで欲しいものだ。

若き頃の高島忠夫が乃木希典の息子役で出ている。

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