« 映画「野獣死すべし」(1959) | トップページ | 次に見る光景(二) »

2009年5月31日 (日)

映画「若い人」

「若い人」


原作: 石坂洋次郎
監督: 豊田四郎
脚本: 八田尚之
撮影: 小倉金弥   
美術: 河野鷹思   
音楽: 久保田公平
出演: 大日方傳,市川春代,夏川静,英百合子,江,山口勇

時間: 81分 (1時間21分)
製作年: 1937年/日本 (東京発声)

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
一女学生であることと"恋"に憧れ生きることそのものに日々情熱を注ぐ江波
(市川春代)と彼女を"学生"として教え導こうとする中堅の教師の男(大日方傳)。
彼が教師として接すれば接するほど江波は恋の対象として捉え周囲が見えなく
なっていく。修学旅行を終えたある日、江波が妊娠した噂が立ち。。

 理想に燃える熱血教師と世間体に最も囚われず且つ囚われることを嫌う青春と
思春期の真っ只中を生きる女学生。

 原作があり何度か映画化されているようだ。本作はその最初の映画化らしい。

 「あの生徒(江波)に目をかけるなら結婚する気でやれ」という教師としては
全く穏やかじゃない同僚の女教師の発言で物語は始まり、自由奔放に生き、
性にも好奇心を抑えきれない"若い命"を市川春代が熱演しに翻弄される男教師役を
大日方傳(おびなたでん)が好演。

 教師を恋慕う女学生が妊娠(作中では噂のみ)という1937年当時としてはセンセー
ショナルな内容だが大日方傳演じる教師の聖職としての揺ぎ無い信念が劇中で
貫かれているので興味本位じゃない一本しっかりした芯が通った良作に仕上がっている。

 男が男でありながらも『教師』として生きることに微塵のぶれも見せない"ほんまもん"
であることを観客にきちんと伝えることが出来ているからこそ安心して女学生江波の
奔放な活躍を見て女教師の嫉妬に共感し江波が他の女生徒が皆出来ている自制が
全く出来ない理由を生い立ちに求める後半はとても説得力がある。

 クライマックス、一時行方不明となる江波を必死で捜しようやく見つけた女教師が
街灯の下で江波に決して動かないようにと告げて大日方傳演じる同僚教師を呼びに
行くシーンの緊張感のリアリティは素晴らしい。

 待てといった街灯が照らす道端は坂道の途中ですぐ脇は崖になっている。妊娠の
噂が立ち好奇の目の対象となったことに深く傷ついた江波は何をするか判らない。。

 個人的にはここで映画が終わってくれると謎が残って嬉しかったのだが。

 主人公の江波恵子を演じた市川春代は名作「鴛鴦歌合戦」(1939)で志村喬演じる
骨董好きのオヤジの娘を可愛らしく演じて歌も披露している。「鴛鴦歌合戦」の時点で
市川春代は26才!ということで本作の出演時は24才。見えない。。ちゃんと女学生してる。

 今という時代においても全く抵抗なく心地よく観れる普遍性を持った素晴らしい作品。

 ウィキペディアによれば教師役を見事に演じた大日方傳は戦前主役級で多くの
作品に出演し戦後の1953年家族揃ってブラジルに移民し牧場を経営しつつも日本で
監督作品を数本手掛けるいうなかなかダイナミックな振幅の大きい人生を送ったようだ。

大日方傳は1980年に73才で死去。
市川春代は2004年に91才で死去。

 「鴛鴦歌合戦」での市川春代の笑顔と歌声は素敵だった。志村喬の軽やかな演技と
歌も楽しい。また劇場で観たいものだ。

[東京発声映画製作所]
================================================================
かつて東京に存在した映画会社である。
日活資本のもとに、重宗務、八田尚之、豊田四郎、あるいは八木保太郎らが
トーキーを手がけ、豊田が監督した『若い人』や『小島の春』が代表作として知られる。
のちに東宝資本に換わり、現在の東宝を形成する流れに合流した。
================================================================
(ウィキペディアより) 

 

---------------------------------------------------------------
映画感想一覧>>

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

  

|

« 映画「野獣死すべし」(1959) | トップページ | 次に見る光景(二) »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 映画「野獣死すべし」(1959) | トップページ | 次に見る光景(二) »