映画「簪」
「簪」
原作: 井伏鱒二
監督: 清水宏
脚色: 清水宏
撮影: 猪飼助太郎
音楽: 浅井挙曄
美術: 本木勇
編集: 浜村義康
出演: 田中絹代,川崎弘子,笠智衆,斉藤達雄,日守新一,坂本武
時間: 75分 (1時間15分)
製作年: 1942年/日本 松竹大船 [モノクロ]
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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それぞれ異なる事情で湯治に来ていた人々。
皆個人で旅館に来ていたが集団で押し寄せ大騒ぎする団体客に辟易する。
そんな中で男(笠智衆)はいつものように露天風呂に入っていて足の裏を
簪(かんざし)が突き刺さり怪我をする。
簪は以前に宿泊した女性の物だった。
宿の主人はその女性(田中絹代)に連絡を付けると詫びを入れるために
わざわざやってきた。。
笠智衆若い!38才の時の作品。
田中絹代(この時33才)も容姿も佇まいも綺麗で堂々と女優していて
実に素晴らしい。
二人の淡く落ち着いた大人のロマンスと気を使いながらも時折
トンチンカンをやらかす湯治の仲間達も実に楽しい。
なぜかすぐには帰ろうとしない田中絹代演じる謎の美女を中心に
常会が結成される。
女は笠智衆演じる男の怪我の回復を他の人々と一緒に
最初は温かく見つめていた願っていたが歩けるようになったら
すぐに帰るという男に女は次第に微妙な気持ちを思い始める。
男の傷はやがて治り、一時の心の交流を持った人々は
当然のように湯治場を去っていく。
とても地味なストーリー展開。
というか展開というほどのこともない。
なのに、すっかり見入ってしまった。
それは、たった1時間強の他愛もない物語の中で
登場人物がとても生き生きと描かれているからだろう。
独り残された女と彼女が束の間味わった皆との楽しい思い出の川や神社。
そよ風。田中絹代の軟らかい表情。
全てが温かくて美しい。
因みにウィキペディアによれば
日本の大女優の一人である田中絹代は本作の監督の清水宏に
より主役に抜擢される(本作ではない)ことにより成功の階段を昇っていく。
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