映画「妻として女として」
「妻として女として」
監督: 成瀬巳喜男
脚本: 井手俊郎,松山善三
撮影: 安本淳
音楽: 斎藤一郎
美術: 中古智
編集: 大井英史
出演: 淡島千景,高峰秀子,森雅之,仲代達矢,星由里子
時間: 106分 (1時間46分)
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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森雅之演じる一男一女の二児の父である中年男と長年の愛人関係にあって
バーを切り盛りする女(高峰秀子)と男の妻(淡島千景)。妻は夫とのある約束
によって愛人を持つことを黙認してきた。しかしバーの所有権を持つ妻が
バーを別の女性に任せようとことから三角関係の均衡は破れ愛人の女は
妻に直談判を挑み愛人の存在を許容してきた『理由』に踏み込む。。
成瀬巳喜男監督によるカラー作品を初めてみる。
(氏が手掛ける初の劇場カラー作品は「鰯雲」(1958)か)
『テレビ』が茶の間へ進出してきたせいか人々の言動も佇まいも何やら
狂騒的になり新鮮な感じと共に"動きの美"という観点からは人々は確実に
劣化していると思った。
夫の優柔不断によりずるずると十数年も続いてきた三角関係は妻と愛人の
それぞれの決断により亀裂は当然のように深まっていく。その亀裂の溝の深さが
正確に物語に反映されていき終盤の展開はただの一瞬も目が離せなくなる。
成瀬巳喜男の作品は登場人物達の行動と動機のひずみ・齟齬を
脚本の展開とか、
時間の経過とか、
場面の転換とか、
といった映画の持つ仕組みとして物語に対する寸断や間延びや並べ替え
とかのせいにすることなく、且ついい加減にもしない。
彼らの行動には"動機"がしっかりあって動機には理由がある。
その行動はそれぞれの次の動機付けに繋がり溜まればいずれ爆発する。
彼の作品に描かれる人々の行動は力学的な方程式に変換できるように
思えて、破綻が少なく見ていて心地いい。
星由里子が娘役を演じ初々しく且つとても可愛い。この時18才。
仲代達矢は他の作品でもみられる飄々と掴みどころの無い男を
無難に演じている。
淡島千景と高峰秀子の
互いに一歩も譲らない『女の闘い』は一見の価値充分有り。
成瀬巳喜男の演出も俳優達の演技も実に確かなお得な一編。
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