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2009年6月 4日 (木)

映画「早春」

「早春」


原題名: 早春
監督: 小津安二郎
脚本: 野田高梧,小津安二郎
撮影: 厚田雄春
音楽: 斎藤高順
出演: 池部良,淡島千景,,高橋貞二,岸恵子,山村聰,笠智衆
時間: 145分 (2時間25分) [モノクロ]
製作年: 1956年/日本 (松竹)


(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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戦地から復員してサラリーマンを勤める男(池部良)とその妻(淡島千景)。
男は週末を一緒に過ごす仲間の一人の会社の同僚女性(岸恵子)と
関係を持つ。。

淡島千景の夫を待つ妻役がとても良い。池部良は二枚目で優しくて
ちょっときついところもあってモテリーマンをごく自然に演じている。
男共がラーメン食いながら麻雀打ってるところにスカートひらひらさせて
一人で平気でやってくる岸恵子もいいなあ。いるよなこういう娘。

家庭を持つ男性と関係を持つことを「好きだから」で済ましてすまう女。
それでいて別の男性ともまた平気で関係を持ってしまう。

こういう女性は大概は父親の愛情を充分に受けずに育ってしまっている
場合が圧倒的に多い。だから適齢の異性に父性を見せつけられると
免疫が絶対的に不足していらため理性では自分を制御できなくなってしまう。
どこの会社のどこの部署にも大抵一人はいるであろう。

岸恵子はそんな「困ったちゃん」を名匠小津の下、とてもリアルに
抑制の効いた演技で可愛く演じている。
ただし、本作では登場する若者達は皆なにかしら人生に戦争の
影響を確実に受けているという背景がきちんとある。

映画としては池部良達の電車での出勤シーンが駅のホームで
進入してくる電車も含めて大胆に撮影されてとても新鮮で爽快なシーンだ。
池部良達も場面設定の演技を超えて何だか楽しそうなのは気のせいか。

蒲田駅から大宮方面に向かう電車を皆で待つシーンだが
撮影も実際に当時の蒲田駅で行われたようだ。

鉄道ファンや当時の蒲田駅を知る人にとってはたまらないシーンであろう。
画面構成も実に素晴らしくてこの出勤シーンの撮影の過程を克明に
追っただけで一冊の本が出来てしまうだろう。

我等が宮口精二が若い夫婦の向かいに住むしっかりと女房の尻に
敷かれた中年男性役でちょっとだけ出演していて楽しい。

全体的に屈託の無い「"戦後の"青春時代」を手堅く描いていている。

撮影監督の厚田雄春は小津とは
晩春 (1949)
麦秋 (1951)
東京物語 (1953)
秋刀魚の味 (1962)
などの名作を多数手掛けている。

本作の駅のシーンは氏の"鉄道オタク"としての
こだわりが結実したものだとか。
出勤シーン以外のどのショットも当然のような
抜群の安定感を保っている。
池部と岸の別れの夕闇のシーンも素晴らしい出来。

邦画の黄金期を支えた天才と呼ぶに相応しい撮影監督達が
そろそろ出揃ってきたので彼らの仕事振りを色々と調べたくなってきた。
彼らの撮影に賭けた情熱と苦労は本編に負けず劣らず素晴らしく
時に感動的で時に悲壮で時に荘厳なものに違いないのだ。

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