映画「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」
2009年に見た映画(六十一) 「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」
原題名: 江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間
監督: 石井輝男
出演: 吉田輝雄,由美てる子,土方巽
時間: 70分 (1時間10分)
製作年: 1969年/日本 (東映)
(池袋 新文芸座にて鑑賞)
2009年 4月鑑賞
(満足度:☆☆☆+)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
自分と瓜二つの人間の死をきっかけにして男( 吉田輝雄)は
『裏日本』の存在を知る。真実を知ろうとすることによりやがて
迫害され強制的に精神病院に監禁されるも脱出した男は
裏日本の真実と自身の恐るべきルーツに辿り着く。。
主人公の男の父親(土方巽)の初登場シーンがンパクト大で
且つ素晴らしい。指の間に水かきを持つ男が前衛舞踏のような
動きと共に現れ動物のように四肢を使って海岸を走る!!
"奇形"であるがゆえに虐げられた男の父親。それは奇形で
あるがゆえに妻を目の前で寝取られても耐えなければいけ
なかった惨めな男。
そして遂に奇形の男は復讐を開始する。無人島に妻を監禁し
自分と同じ"奇形人間"を次々と造りはじめる。
監督石井輝男は主人公の父親の凶行の原因をその異形の
外見のせいではなくあくまでも責任転嫁をして省みない歪んだ
心の所産として描いているところが本作を単なるカルト映画として
埋没させていない所以であり他の氏の諸作品にも通じる
立場や生まれによらない"人間の本性そのものを描く"
「石井イズム」とでも呼ぶべきものではなかろうか。他の
石井作品同様、女人の裸がとても綺麗に撮れていてビックリ(とくに胸)。
父親の登場するシーンと主人公達が奇形人間達の棲む
最深エリアに上陸する超前衛的なシーンがこの作品の"全て"
ではなかろうかと思う。特に後者のシーンはコッポラの
「地獄の黙示録」(1979)でカーツ大佐の統べる地にウィラード大尉
一行が辿り着くシーンを思いおこさせながら異常性では完全に
上を行っている。
クライマックスは上記のシーンの全てを凌駕する『伝説』『カルト』といった
言葉を永遠に欲しいままにするであろう
大爆発・大暴走・俺飲みに行くからさ後、助監てきとーにヨロシクな
的なその結末も選ばれし人間たる石井輝男にのみ許された
『技』なのかもしれない。
後半は肉体的な"異形"と精神としての"異形"がごっちゃになって
展開が失速していまっているので若干ダレて100分くらいあったように感じた。
でも、まあ驚愕のクライマックスを観れたので満足。
本作を観るほんの数日前にたまたま立ち寄った都内某所の本屋の
外国人御用達のコーナーで立ち読みした日本語練習長に『裏日本』
という言葉が確かにあった。「なんだコレ?」と思った数日後には
その言葉が明確にキーワードとなる映画を見てしまう自分。。
こういった自分のごく個人的な衝動的な行動なのに偶然に一致する
という事柄が昔から自分にはやたら多い。それにしてもこの某日本語
練習帳の執筆者は一体外国人に何を伝えようとしてるねん?
本作鑑賞後にその本があまりにも気になったので購入しようと
書店に走ったがすでに売れてしまった後だった。。
観る機会が僅かでもあれば躊躇することなくしかと見届けるべし。
石井輝男は天才だ。
---------------------------------------------------------------
映画感想一覧>>
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 映画と賞を取ることについて関係性における独り言(2021.05.02)
- 映画「ジョーカー」(2020.12.09)
- 映画「魂のゆくえ」(2020.07.24)
- 映画「愛の渇き」(2020.05.01)
- 特撮映画における或る命題について(2020.04.29)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
ついに見てしまいましたね
地獄拳とはある意味対極にある作品
石井輝男の振り幅の端と端みたいな
まぁこの作品は
面白いかどうかというと微妙で
ただただ「スゲー」としか言いようがない映画ですね
江戸川乱歩を継ぎ接ぎした無茶苦茶なストーリーといい
ラストの急展開といい
常人には作れないっす
それから
裸の女が出てきても何故かエロくないのも石井輝男の持ち味ですね
次は「ポルノ時代劇忘八武士道」ですね
投稿: 万物創造房店主 | 2009年6月16日 (火) 21時02分
>ついに見てしまいましたね
見てしまいました!!(^0^;)
店主さんのブログでの紹介が
なければどれだけ後になったかと思うと
ちょっと怖いすねー
http://banbutsusozobo.air-nifty.com/tensyu/2007/10/post_b3f3.html
石井輝男を観ずして戦後の邦画を
語ってはいけませんね。
>ただただ「スゲー」としか言いようがない映画
御意。奇形人間達が出迎えるシーンは
マジで素晴らしいと思いましたよ。
>何故かエロくないのも石井輝男の持ち味
自分が驚嘆したのはですねー
記事でも書きましたが女性の"胸"の形の
美しさですね。チラと映る女性でも本当に
綺麗。ストーリーそっちの気で拘る石井輝男の
気合と男気を感じました(^^)
こういう人が同じ日本人だと思うと本当に
嬉しく思います。
>次は「ポルノ時代劇忘八武士道」
フフフ( ̄ー+ ̄)
順次感想載っけていくので
コメント下さればコレ幸いです。
投稿: kuroneko | 2009年6月17日 (水) 01時07分