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2009年7月10日 (金)

映画「武蔵と小次郎」

2009年に見た映画(六十五) 「武蔵と小次郎」

原題名: 武蔵と小次郎
監督: マキノ雅弘
出演: 島田正吾,辰巳柳太郎,淡島千景,桂木洋子
時間: 96分 (1時間36分)
製作年: 1952年/日本 松竹
(池袋 新文芸座にて鑑賞)

2009年 4月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)

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吉岡道場一門との一条寺での決闘から宿敵佐々木小次郎との
巌流島での決闘までをオリジナルの展開で描くマキノ版「宮本武蔵」。

佐々木小次郎が割と早い段階から登場。
吉岡道場一門と武蔵の壮絶な闘いをジーと傍観して眺めている
島田正吾演じる小次郎がとってもラブリー。

上映時間は1時間半と短いながら吉岡一門との壮絶な斬りあいから
宮本武蔵を慕う娘(桂木洋子)と佐々木小次郎等がそれぞれ異なる
理由で失踪した武蔵を追うロードムービーの流れの展開がきちんと
出来ていて、且つ今の邦画で決定的に滅んでしまった脇役のオッサン
達の堅実な演技とその群像シーンの楽しさ(役者の層のぶ厚さ)や
堅実な美術とカメラワークが気軽に楽しめる。

役者・監督・現場のスタッフが決められた予算と日程でプロとして
当たり前のように作った当時としては大衆食堂のカツレツ定食の
ような安価で美味しい作品なのであるが今となってはどんなに
大金を出そうが作れない幻の逸品となってしまった寂しさも観ていて
痛切に感じた。

映画の醍醐味である総合芸術作品に当然のように出来上がって
いる頼もしさと楽しさを味わいつつもそんな総合芸術がシステマチックに
作られた「豊かな時代」が遠い過去のことであることの空しさ。
戦争が終わってまだ10年も経っていないというのに!

レシピは残っているし食材も揃えることは21世紀の今でも
必ずしも不可能ではないが最終的にお客(観客)の前に
盛り付けてサプライすることは到底出来ない『何か』。。

武蔵と小次郎は唯一無二の"最強の存在であることを
証明するために闘うのでは"なく"、単にその腕を買ってもらって
仕官したいだけであり、それは限られたポストを相争う
とうことでありまたその騒ぎを最大限に己の器の大きさの
証明に利用したいだけの領主という今のリーマン社会と
全く微塵も変わらない構図がごく自然に描けていて
侍をストイックな求道者の存在であることなどナンセンス
といわんばかりのマキノの視点は常識を持った"大人"
の視点でありこの視点もまや今の日本には決定的に
存在しないものだ。

武蔵を慕う娘役の桂木洋子の美少女振りも萌え。
公開時には22才だけど画面では16,7才の可憐な
小娘にしか見えない。こげな美少女に剣の道を捨てろと
言われればオイラは即効捨てる!ええ捨てますとも。
魂の刀も柄もさっさと売り払いますとも。

クライマックスの巌流島での決闘も当然安心の揺らぐことのない
プロの演出で大満足。

島田正吾演じる小次郎が何をするにも背中に馬鹿長い
通称"物干し竿"と呼ばれる刀を背負いっ放しなのは
観ていて失笑ものだし淡島千景は相変わらずお美しいが
一人二役を演じたことに一体どれだけ意味があるのか
とかいったツッコミどころもあるがどこまでも
庶民を楽しませることに徹したその全体の作りは
お見事というしかない。

大人がいて子供がいて老人がいた時代に作られた『映画』。

マキノ映画はいつだって面白い。


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