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2009年8月22日 (土)

映画「大悪党」

2009年に見た映画(七十五) 「大悪党」

原題名: 大悪党
監督: 増村保造
音楽: 山内正
出演: 緑魔子,佐藤慶,田宮二郎.倉石巧
時間: 93分 (1時間39分) [モノクロ]
製作年: 1968年/日本 大映
(渋谷 シネマヴェーラにて鑑賞)

2009年 5月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)

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芳子(緑魔子)はヤクザの安井(佐藤慶)に声をかけられ一緒に酒を
飲むが睡眠薬を飲まされ犯された挙句に裸体を写真に撮られる。
安井は写真をばら撒くと脅し芳子に売春婦となることを強要する。
芳子は隙を見て逃げ出しやり手の弁護士得田(田宮二郎)に救済を
求めた。得田は安井の殺害を芳子に提案する。。

オープニングが映像・音楽共に大迫力のなかなか秀逸な出来。
(音楽担当の山内正は「大怪獣ガメラ」(1965)の音楽も担当)

緑魔子の大胆すぎる脱ぎっぷりと実力派俳優佐藤慶と田宮二郎の
嬉し過ぎる共演で肌の露出が多いながらも骨太な作品に仕上がっている。

都会の怖さを知らない無防備で美しい芳子と卑劣且つ凶悪なヤクザ者
の安井をそれぞれ演じる緑魔子と佐藤慶はかなり撮影が大変だった
だろう。芳子は全裸同然でベルトで何度もぶたれるは人前で脱がされて
犯されるは安井もこちらも裸でこれまでの復讐でありったけの力で芳子
にネクタイで首を締められる。。撮影は全て正面から体当たりで
撮られていて(勿論絶妙に避けるべき描写は避けている)二人の迫真の
演技にハラハラドキドキ。

全裸同然の緑魔子に数々の暴力を振るいまくる"寸止めの演技"を
炸裂し続ける佐藤慶の技術を(いろんな意味で)楽しむのも良し。

田宮二郎はどこまでも田宮二郎らしいアクのある演技を見せているけど
後半は意外に毒の弱い展開になって拍子抜けの感があった。

緑魔子がどこまでも凄い。美しくて演技が出来て脱ぎっぷりが
良くて際どいシーンもかなりあるが俗悪なエロさは皆無で悪党共の
餌食になる若き無垢な女性の総体としてのキャラクターを作り出している。
勿論これは緑魔子の体当り演技と監督含めた現場スタッフの優秀さ
と映画を撮る姿勢の誠実さが累積された結果でもある。

そして芳子は悪党共に揉まれ学習し逞しく成長(?)していく。
最後の結末は個人的には弱いと思うが芳子の世の全ての男共への
捨て台詞は一見の価値あり。

緑魔子ファン、佐藤慶ファン、田宮二郎ファン、あるいは
S系(安井視点でどうぞ!)、M系(芳子視点でぞうど!)の方々まで
幅広い層の皆様にご満足頂ける内容となっております。

さらに
彼氏のDVに悩む女性、あるいは交際がちっとも上手くいっていない
女性の方々、芳子の恐るべき悲劇とその絶望から這い上がる様を
目撃して明日への活力を見出すべし!

そして
特にこれから都会に出て行く10代後半から20代前半の女性も大必見!

緑魔子は世の全ての虐げられる女性の代弁者として熱演したのだ!

不幸にして安井のような男に出会ってしまい今この瞬間も喰いものに
されているうら若き女性は果たしてこの大東京に何百人何千人
いることだろうか。。

都会は魔物の巣窟だ。男と女という魔物の。。

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