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2009年8月23日 (日)

映画「小早川家の秋」

2009年に見た映画(七十六) 「小早川家の秋」

原題名: 小早川家の秋
監督: 小津安二郎
出演: 中村鴈治郎(二代目),原節子,司葉子,新珠三千代,小林桂樹,森繁久彌
時間: 103分 (1時間43分)
製作年: 1961年/日本 東宝
(池袋 新文芸座にて鑑賞)

2009年 5月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)

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酒造家の家長でチョイ悪の老人(中村鴈治郎)を中心に娘夫婦と
未婚の娘達の心模様を描く。

仕事は生真面目な娘婿(小林桂樹)に任せて元愛人の下に
足繁く通う中村鴈治郎の軽やかな演技が実に楽しい一編。

遊ぼうとせがむ孫や年甲斐のない軽挙に疑惑の目を厳しく向ける
長女子供(新珠三千代)を鮮やかに煙に巻き出かける不良老人
演じる中村鴈治郎の一挙手一挙動の肩の力の抜き加減の
絶妙さと名匠小津の全体的な演出の安定感は完全に調和
していて映画が終わることなくこの一家の物語をただひたすら
ずっと観ていたいと思った。

いい作品に出会うと毎度毎度思うが
『映画』というのは込み入ったストーリー展開や無駄に豪奢で
金のかかった撮影方法や美術セットなんて
はっきり言ってどーでもよくて

一. 良い役者("演技が出来る"人のこと)
二. 的確な演出
三. それらを味付けする(出しゃばり過ぎない)美術その他

が満たされていればまずは観客は納得できるそれ相当の
面白いものになる。脚本も勿論重要だが上記が満たされていれば
マズイ脚本もそれなりにカバーされる。

新珠三千代は絵に描いたような良妻(「人間の條件」1959-61)から
男を貶める悪女(「鬼の棲む館」(1969))、本作のような口うるさいが
嫌味にはならない長女役などどれをやっても手堅くて品があって
素晴らしい女優だ。

中村鴈治郎と小林桂樹はこちらも邦画が永遠に誇る名匠
成瀬巳喜男による良作「鰯雲」(1958)で親子役を二人共好演
している。本作では小林桂樹は婿だが「鰯雲」の方では実の
長男役で両作品ともに血縁関係の違いが演技の細部まで
明確に現れているのが役者・演出共に"優れて出来ている"。

原節子はどこまでも原節子らしい安定感ある演技。
本作公開時は41才だが全然見えない。未婚前の清楚感漂う女性
を卒無くこなしている。

原節子は本作と翌年の「忠臣蔵」を最後に銀幕から姿を消す。
そして小津安二郎は本作公開から二年後の1963年に逝去。

"プロ"がきちんと作った作品はしみじみ観ていて癒される。
まさに絶妙の温度の風呂に浸かる心地。

小津安二郎晩年の秀作。


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