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2009年8月24日 (月)

マクナマラの戦争

 

マクナマラの戦争(映画「フォグ・オブ・ウォー」)

ロバート・マクナマラ(1919-2009)はかつてアメリカ合衆国の
国防長官を務めベトナム戦争を『ベトナム戦争たらしめた』
張本人の一人として歴史にその名を刻んだ。

第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディの下で
国防長官として就任した時は若干41才という若さだった。

(国防長官に)就任する前には自動車会社のフォード社で
若くして社長を務めている。フォード家以外の出身者が同社の
社長に就任したのは彼が初めてだったとか。

名門ハーバード大学の出身で若くして大会社の社長にも
なったエリートがその頭脳をフルに駆使して参謀役として臨んだ
世紀の戦争ではなぜ勝利を掴むことができなかったのだろうか。
彼自身、生涯をかけて自らに問い続けたことだろうと思う。

映画「フォグ・オブ・ウォー」(2003年/アメリカ)ではベトナム戦争遂行時の
自他共に認めるアメリカの"戦略デザインのメインフレーム"であった
であろうマクナマラ本人がベトナム戦争についての自身の思いを語った
ドキュメンタリー作品だ。

公開当時はそこそこ話題になり興行収入もこの手の作品としては
まあまあではなかったかと記憶している。私も彼が一体何を喋って
くれるのかと楽しみに公開当時劇場に足を運んだ一人だ。

結果的には『何も語っていない』に等しかった。

本当は嘘で劇場で観たのか自宅で観たのか覚えていない。
劇場で観たのかレンタルで観たのかビデオなのかDVDなのか
判然としないようにこの作品はタイトル同様に中身も歯切れ悪く
霧がかっている。
(観た映画作品は相当つまらなくてもいつどこでどんな心境で
劇場なのかそうでないのか大概は覚えている)

私はひどく失望し、公開前の期待とは裏腹に始まってみれば同様に
失望した人が多かったのか公開後に話題が"より膨張する"ことは
決してなくお決まりのパターンで失速していったような気がする。

作中では本人は終始熱弁を揮っている。

・当時何をどうすべきだったのか
・そもそも何が誤りだったのか
・今、もし同じ状況になったら当時の経験をどう活かすべきか

至って真面目に本気で"気持ちの上では"誠実に
自分の気持ちを語っていたのであろうが

本人以外の全ての人々が同様に聞きたかったであろう点については
見事なまでに何一つ答えることもなく、氏が語っていることを要約すれば
つまりは

同じ状況になれば自分は全く同じことを繰り返すであろう。

ということになるかと思う。
(本人は決してそうは思っていないようだが)

過ちを繰り返したくないという"思い"は強く察せられるのだが
言っていることの要旨が不思議なほどに全部逆で好戦的と
さえ言えるのが「フォグ・オブ・ウォー」の一番の見所だ。

観終わった後の気持ちは「狐に摘ままれた思い」という感じ
がぴったりとくるであろうか。

何の捻りもなくこの作品が「フォグ・オブ・マクナマラ」と呼ばれたのも
至極当然であった。因みに彼の回顧録の読後感もドキュメンタリー
と全く同じ徒労感を味わえる。

例えるなら口説きたい素敵な女性が目の前にいて
その女性を口説き落とすべく

国籍、出身地、誕生日、趣味、長所、短所、特技、交友関係、
好みの食べ物、好みの異性のタイプ、etc、etcまで

全てパーフェクトに暗記して且つ
"その『データベースに対応する』マニュアル"
を徹夜で完成させて意気揚揚と初デートに向かったところ
全く欠片も相手にされなかった理由が

まるで判らない( ̄ロ ̄lll)

という感じか。

何十年も考えた挙句にマクナマラが出した結論は
『データベースの精度が悪かった』であった(笑)

つまり次回への対策はただ一つ
今度こそ合衆国の全てのハードウェア・ソフトウェアを駆使して
『データベースの精度を何十倍(何百倍)も上げる』である。

ヽ(´ー`)ノ

生の"彼女そのもの"をひたすら追うつまり
ベトナムそのものを知らなければならない。
自分の視点からではなく相手の事情を"相手の視点から"
判ろうとしなくてはならない。
という結論には残念ながら最後まで至らなかったようである。

もしかしたら生涯の最後の最後には気づいたかもしれない。

氏の『誤り』から学べる教訓は起こってしまった惨禍が
代償に値するものであったかというと残念ながら"否"であろう。

しかしその後の世界が延々と歩んできた歴史、アメリカ合衆国が
国際社会にしていることを見れば"マクナマラの教訓"は
活かされもせずマクナマラを決して笑っていられない。

頭のいい人間ほどデータを見て
"データの指示先(あるいは参照元)"は見ようとはしない。
そしてその結局は何も見ていないに等しい人々によって
世界の方向性は決められていく。

21世紀も早10年が経とうとしているが
世界は依然霧がかったままで
霧がかかっているだけでなく『幻』を日々映画顔負けの
リアルな映像と演出と編集で世界に"配信"され続けている。。

 
 

元米国防長官・マクナマラ氏死去 ベトナム「沈黙」の裏にあるもの
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 米国のケネディ、ジョンソン両政権で国防長官を務めた
マクナマラ氏が先月、死去した。フォード社長、世界銀行総裁なども
歴任したが、この人が歴史に名を残したのは何と言ってもベトナム戦争の
遂行者としてだった。しかし、当のベトナムは奇妙なことに旧敵の死に
ほとんど沈黙を貫いた。
(略)
 マクナマラ氏は晩年、自らの反省を踏まえてあの戦争の実相を
客観的に見つめ直そうとベトナム側との対話に取り組んだ。
沈黙や建前の裏に、自分に対するどんな思いがベトナム側に隠れているのか。
氏自身もそれを知りたかったに違いない。
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[http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/m20090807040.html]
2009年8月7日(金)08:05




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