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2009年10月17日 (土)

映画「夜明け前」

「夜明け前」

原題名: 夜明け前
監督: 吉村公三郎
脚本: 新藤兼人
撮影: 宮島義男
音楽: 伊福部昭
出演: 滝沢修,乙羽信子,宇野重吉,清水将夫,細川ちか子,小夜福子

時間: 142分 (2時間22分)
製作年: 1953年/日本 近代映画協会,民芸

2009年 5月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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木曽馬籠の本陣を営む男青木半蔵から見た明治維新と人々と世相の激しい
移り変わりをダイナミックな物語構成と場面展開で描く大作。
島崎藤村の同名小説の映画化。

 

 西郷隆盛も、坂本龍馬も、木戸孝允も、新選組も出てこない、しかし幕末を
舞台にした映画としてはこれまで観た中では最も見応えがあった

 人々の暮らしだけではなく何よりもその精神が古いシステムの弊害から開放
されると心の底から信じきっていた男が期待した通りの"維新"は到来せずに
人心の刷新などほど遠いことに絶望しやがては周囲からも狂人扱いされ徹底的に
孤立していく様をじっくりじっくり描いている。

 籠。牛方。庄屋。農民。天狗党の残党。佐幕派。官軍。賊軍。

 実に多種多様な立場の人間達と物が木曽路の本陣を通過し、ある者は逗留し
ある者は時の権力者を罵倒しある者は半蔵に仲間になれと説き伏せる。時代は
刻々と流れ男は翻弄され自身の考え信じた維新と現実との大きすぎる乖離に
精神を引き裂かれる。

 親戚もそうでない者も従者達も皆で集まり夜通し飲めや謳えの騒ぎとなる前半の
半蔵の結婚の祝儀の何と壮大で楽しそうなことか。それに比べて維新後の急速な
個人主義とエゴイズムの台頭と本陣と木曽の衰退と半蔵の後半生の孤独の対比は
見事でその描写力は映画としてのダイナミズムに溢れていて心地いい。

 

維新とは一体何だったのか

ということを素直に考えさせられ映画としての鑑賞後の満足度も非常に高い逸品。
二時間強の長さは全く気にならない。

 恥ずかしながら原作は未読なのでしっかり読んでもう一度じっくり大画面で
観たい作品だ。

 本作にスケールと質において並ぶ作品を現在の日本で作るには何を、どうしたら
よいか考えて観るのも一興。

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