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2009年12月26日 (土)

映画「一万三千人の容疑者」

2009年に見た映画(九十一) 「一万三千人の容疑者」

原題名: 一万三千人の容疑者
監督: 関川秀雄
撮影: 飯村雅彦
音楽: 伊福部昭
出演: 芦田伸介,小川明子,田畑隆,稲葉義男,井川比佐志
時間: 88分 (1時間28分)
製作年: 1966年/日本 東映東京
(       にて鑑賞)

2009年 5月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)

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"吉展ちゃん事件"と呼ばれる実際に起きた誘拐事件を担当した刑事の
手記を元にして製作された異色のドキュメンタリー・ドラマ。二年三ヶ月に
渡る捜査を繰り広げる刑事達の苦闘を描く。

実際の誘拐事件を極めて真面目に忠実に撮っているので作品の中身そのもの
については言及しにくいが忠実に描かれているが故に警察の初動捜査の
決定的なミスが最後の最後まで実にもどかしい。

「映画」としてはまずは伊福部昭の重厚極まる音楽が実に素晴らしくこれは
サントラが是非とも欲しい。誘拐事件という家族や関った当事者には
当然であるが耐え難い悲劇性をとてもよく表現している。
しかし「帝銀事件 死刑囚」(1964)とどこまでも似ていて両方観てしまうと
思い出しても違いがさっぱり判らなかったりする。個人的には最初に本作を
観たので刷り込みとしてインパクトはこちらが大。

内容が内容だけに初動捜査のミスが根本にあるとは言え、
「卑劣な犯罪は許すマジ」という今の日本ではほぼ消失してしまった感のある
正義感や理念といったメタファーは確実に作品の隅々まで行き渡っており
澱みのない画面を作り上げている飯村雅彦の功績も大きいといえる。

飯村雅彦のフィルモグラフィーはまさに『職人』の名に値する。
マイスターですな。独断と偏見で一部拾い挙げてみよう。

「遊星王子」(1959)
「一万三千人の容疑者」(1966)
「ごろつき」(1968)
「日本侠客伝 花と竜」(1969)
「昭和残侠伝 破れ傘」(1972)
「新幹線大爆破」(1975)
「怪猫トルコ風呂」(1975)
「二百三高地」(1980)
「大日本帝国」(1982)
「日本海大海戦 海ゆかば」(1983)
「空海」(1984)
「首都消失」(1987)
「REX 恐竜物語」(1993)
「ひめゆりの塔」(1995)

知る人ぞ知る大傑作映画「新幹線大爆破」(1975)を手掛けているのは
大いに着目してよいだろう。

上映時間は88分と短いが刑事役の諸氏の熱い頑張りと
作品の箱としての完成度の高さで見終わった後はきっちり映画を観た
という満足感がある。

実際に起きた事件であるということと映画の完成度の高さによる
鑑賞の満足感というアンビバレンツな後ろめたさにもばっちり浸れるのもまた
映画の醍醐味の一つであり、本作は充分にボーダーに達している。

どんなに高尚な理想を掲げようが
やはり

『映画を撮ることは犯罪である』  (大島渚)
のだろう。

犯罪でも何でもないエイガの氾濫が続く昨今の日本の状況はそれゆえに
逆説的に真の意味で犯罪といえるのかもしれない。

クライマックスの雨のシーンが悲しくも美しい。

 
 
 

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コメント

「新幹線大爆破」は面白いですね、名作です
日本人は意外に知ってる人少なかったりするんですが、アメリカではけっこう有名みたいで、何故か千葉真一BOXにコレが入ってたりします(千葉真一はどう見ても主役ではないと思うのですが・・・)
ヤンデボン監督がこれに影響を受けて「スピード」を作ったという話もありましたね

投稿: 万物創造房店主 | 2009年12月31日 (木) 16時07分

>「新幹線大爆破」

そうですね。ずっと前から知っていた
作品ですが今年観れて嬉しかったです。
そのタイトルと内容から当時の国鉄から
全面的な「協力拒否」を喰らったそうですが(^^)
作品はそんなことは全然感じさせないパワー
に溢れていましたね。
 
>千葉真一
運転手役で充分目立ってましたね(^^)
「直撃地獄拳」メンバー
(千葉真一,郷鍈治,志穂美悦子)が楽しく
揃って出演してましたね。三人が悪さして
本筋に絡むのかと見ていてワクワクしました。
 
>「スピード」
全然"こっち"(新幹線~)の方が勝ってると思います。
「スピード」はクライマックスはカッコよかったかな。
地下鉄が制御不能になってサンドラとキアヌが
抱き合うシーンは良かったすかね。

投稿: kuroneko | 2009年12月31日 (木) 21時13分

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