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2010年1月11日 (月)

映画「新幹線大爆破」

「新幹線大爆破」

原題名: 新幹線大爆破
原案: 加藤阿礼
監督: 佐藤純彌
脚本: 小野竜之助,佐藤純弥
撮影: 飯村雅彦
音楽: 青山八郎
美術: 中村修一郎   
編集: 田中修
特殊撮影: 小西昌三,成田亨
出演: 高倉健,宇津井健,山本圭,千葉真一,丹波哲郎

時間: 152分 (2時間32分)
製作年: 1975年/日本 東映

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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人生に行き詰った男達が新幹線に爆薬をしかけ500万ドルを要求する。
犯行は成功するかに思われたが捜査の手は着実に伸び男達は追い詰められていく。

 物語が幕を開けてすぐに

千葉真一
郷鍈治
志穂美悦子

がそれぞれ次々とカメオ的に登場してきて思わずニヤリ。

 彼らは前年に公開されている「直撃地獄拳 大逆転」(1974)の主要メンバーで

「まさか彼らが爆破するのか、またはその回避に大活躍するのか、、」

と一瞬思わせるお遊びが嬉しい。
特に千葉真一は爆破物を仕掛けられる渦中の新幹線の運転手役。
いつ、その正体を現して大活躍するのかハラハラドキドキ。
しかし、物語はいたって硬派に驚くほどの直球勝負(剛速球)で展開していく。

 監督はツッコミ所はあれど骨太感ある佳作「男達の大和 YAMATO」(2005)
の佐藤純彌。個人的には彼の監督作は「敦煌」(1988)が十代の時に何となく
好きで何回もビデオで観ていた。

 本作はストーリー的にも映像的にも役者達の演技、スピード感・アクションシーンの
堅実さ等それらの総合としての映画としても実に良くできていて面白いという
前にエンターティメントとしての全体のバランスの良さが見事であり
今後確実に再評価され続けていくであろう作品だと思う。

 爆弾を仕掛ける主犯の男を演じる健さんはその感情を深く秘めた渋さが
男の犯行に走る追い込まれた哀愁と後ろめたさを隠させない人物像と
ベストマッチしていて任侠物以外の作品では相当に上位に入る演技では
なかろうか。

 一番のハマリ役は宇津井健だ。多くの人命を預かる新幹線の管制室の
責任者の一人を終始熱演。終盤で犯人達を騙すためとはいえテレビメディア
を利用して嘘の情報を流すことに最後まで躊躇し、"嘘を流した"ことに
たった一人最後の最後まで苦悩するフィクション性の高い人間像を
とても自然に演じていて作品の品位を高めている。
個人的には宇津井健主演作品の最高傑作。

 そのタイトルと内容ゆえに国鉄からの協力を拒否されたということだが
後半の新幹線の並列疾走シーンなんて本当に見事でクライマックスも
制約ありまくりの中で撮られたであろう撮影の苦労を感じさせない
出来映えで大満足。

 犯人グループが人命を軽視しても構わないという状況に心理的に
追い込まれていく様をカメラは極めて丁寧に追いながら、彼らに決して
同調しているわけでも、まして賛同しているわけでもないという視点の"揺ぎ無さ"が
本作の脚本と全体のシーンを強力に束ねて引き締めているので観客は
後ろめたくなく物語に素直に集中して愉しめる。これは重要な映画のセンス
であり、また理念でもあり昨今のアクション映画が決定的に失っているもの
だと思う。

 この根幹の理念が空洞である限り、いくら表面的に豪奢なシーンを
金をかけて積み上げても感動は起こらずにフラストレーションが溜まる
結果となる。本作はこの点見事であり、シーン自体を眺めてしまえば
ミニチュア感丸出しでも全く持って高揚感を持って愉しめる。

 トータルバランスでこの作品を越える邦画って案外無いのじゃなかろうか。
152分という尺も全く飽きることなく緩むこともない構成も素晴らしい。

 知る人ぞ知る作品のせいか、本作に限っては本当に奇跡的に
「映画を鑑賞したい人」が劇場に足を運んだようで静かに観れた。

 『映画を静かに観る』ということは最早今の日本では全く不可能なようで
ただの暇人馬鹿達(ほとんどの場合は60代前後と思える中高年)の騒乱に
耐えながら観なくてはいけないわけだが本作は例外中の例外でその
化け物達はいなかったようで映画が終わった時は面白い作品を最初から
最後まで静かに観れた感動に劇場が包まれたような気がした。
映画批評で著名な方々も見受けられた。

 多分、2009年に劇場で観た作品のうちほとんど唯一雑音無く静かに
鑑賞できた作品。
嬉しいやら哀しいやら。

 公開当時は、国内では興行的には失敗し、フランスでなぜか記録的
大ヒットを飛ばしたとか。当時の国内での成績不振は、純粋に、作品として、
観客を動員できなかったとしては、余りにも不自然な一級品の娯楽大作に
仕上がっている。前後の数多(あまたの)邦画と比較しても。とその内容から
諸所からの「力」が働いたのか、、

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コメント

前も書きましたが
いやーこの映画はほんと面白いですよね
キャストもちょっと変わってて、かつ端役までけっこう豪華だし(当時はそんなに豪華ではなかったのかもしれませんけど)
爆破予告して金をとるという単純な話の中に二転三転するドラマ&見せ場が折り込まれてて時間が長いにもかかわらず、最後の最後、空港での捕まるか捕まらないかのドキドキまで飽きさせないですし
(しかも見つかるきっかけが憎い!)
全てのパラメーターがバランス良く高いっすよね
やっぱ映画は低予算です
今、最大の期待作はピータージャクソンが新人監督に作らせたSF映画「第9地区」です
これ、低予算で作ったけど全米興行収入一億ドルを突破したらしいです
まぁ予算3000万ドルなんで、ハリウッドにしては低予算ってだけで、そんなに低予算っちゅーわけですもないですけど
日本なんて予算ついて10憶とか20憶とかですし
ちなみに、邦画史上最高額は「天と地と」の50億円らしいですね
でも「七人の侍」も昭和29年の製作当時でおよそ2億4000万円で、これは現在の物価レートで換算すると約50~60億円に相当するらしいです
また、海外スタッフの共作・アニメを入れると「ファイナル・ファンタジー」が163億円でダントツのトップらしいです
ま、「天と地と」も「ファイナル・ファンタジー」もハッキリ言って駄作ですけどね
当然どちらも興行収入超赤字です

投稿: 万物創造房店主 | 2010年1月13日 (水) 18時48分

そうですね。
これだけ見せ場がテンコ盛りで
一つ一つのシークエンスが相当にしっかりしている
邦画って本当に数えるほどしかないのでは。
本作の制作費が幾らだったのかが重要な
バロメーターになるのではないでしょうか。
個人的にはバイクとパトカーのチェイスシーンや
犯人の一人が立てこもって最後は○死するシーン
の迫力とかがありがちな安っぽさが無くて
関心しきりでした。
 
>「天と地と」
これは角川映画の予告編の上手さに騙されて
観にいきました。小室が手掛けたBGMも悪くなかったし
まだバブル期だったので金をかけている気分は
画面から感じられますね。しかし何が言いたいか
判らない作品でしたね。当初は渡辺謙が主役を
演るはずだったのでもしそうなっていれば
確実に少しはましになったでしょうね。
見所としてはクライマックスの川中島の合戦シーンは
外国で現地人をエキストラに大量投入しているので
見るからに日本人の体型ではない異形の大きさの
足軽がズラズラ歩いているシーンとかでしょうか(^^)
 
>「ファイナル・ファンタジー」が163億円
これは製作体制が一本化できずに誰が資金を束ね
ていくボスなのか曖昧だった結果ではないかと思う
のですがどうなのでしょうね。当時、テレビで
登場人物の"まつ毛"の一本一本やアップの時の
顔の"産毛"まで再現したと自慢気に放映されていたので
「200%コケル」と周囲に予言しまくって見事に
当りましたね。
"リアル"ってそういうことじゃねーのにヽ(´ー`)ノ
 
>「七人の侍」
クライマックスの雨の中の戦いのシーンに資金を相当つぎ込んで
いるらしいですね。終盤まで資金を出し渋る理解の無い
人間達を黒澤明はその現場に来させて納得させたとか。
金をかけるべくしてかけて成功した好例の一つですね。
 
>SF映画「第9地区」
一月ほど前にチェック済みです\(^^)/
この手の映画は大概自分の妄想の方が遥かに勝つので
期待し過ぎないように静かに待ちます。
ローランド・エメリッヒの「インデペンデンス・デイ」 (1996年)
は良かったと思います。
大画面でもう一度観たいなー。お馬鹿度が高くて傑作(^^)
ジェフ・ゴールドブラムも良かったですね。

投稿: kuroneko | 2010年1月14日 (木) 00時26分

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