映画「雨月物語」
2009年に見た映画(106) 「雨月物語」
原題名: 雨月物語
監督: 溝口健二
出演: 森雅之,京マチ子,田中絹代
撮影: 宮川一夫
音楽: 早坂文雄
時間: 97分 (1時間37分)
製作年: 1953年/日本 大映
(池袋 新文芸座にて鑑賞)
2009年 6月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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戦乱の世、立身出世を夢見て妻の制止を振り切って作り溜めた陶器を
売りに旅に出た男(森雅之)は自分の陶器を買い占めてくれた妖艶な
若い女(京マチ子)に惹かれ家族の事も忘れ色に溺れる。村に残された
家族達は戦火の中をただ無力に逃げ惑う。男はやがて見た世界は。。
やたらと名作の呼び声が高い本作。何度か見逃した挙句にようやく観る。
個人的には宮川一夫の撮影と美術全般が楽しみで観に行ったが、話しの展開や
世界観が予想よりも大きくて物語についていって観終わってしまったというのが
正直なところ。
監督を含めてスタッフ・キャスト皆が"戦争"を体験しているので
戦乱の中で一旗挙げ様とする男のゼロサムゲームの虚しさはとても良く
表現出来ている。ゼロサムゲームは足して"ゼロ"で「何もなかった」
のではなく、結果的に『全てを失うこと』なのだということがお説教や
教訓としてではなく、ある思慮の足りない男(=この世を生きる平均的な男)の
数奇な体験を通して実体のある何事かとして描かれる。
一家の大黒柱を失った女子供は戦争の混乱の中、誰にも看取られずに
道端で犬猫同然かそれ以下にただ死んでいく。ごくごく当たり前の人の
世の世界。
田中絹代の賢いが絶妙に一言多い主人公の女房役をリアルに演じている。
それにしてもこの人は冴えない男を支える良き妻をやらせたら流石に上手い。
状況把握が出来ずに向こう見ずな行動の連鎖の結果自分も家族も結果的に
悲惨な目に合ってしまう男にどうも感情移入できずにイラついてしまい
作品の出来とは別の次元で存分に楽しむとはいかなかった。自分の場合は
もう少し歳をとってから観ないとこの作品の凄さは判らないのかもしれない。
後、二三年経ったらもう一度じっくり観てみたい作品。
溝口作品はまだまだ全然観ていないのだが本作よりは「武蔵野夫人」(1951)
の方が今の段階では好きだ。
本作公開の1953年の翌年の1954年に「ゴジラ」「七人の侍」等々、後の
時代の枠組みを決定づける作品ばかりが公開され、邦画界は戦後9年目
にして頂点を向えることになる。勿論、本作もその頂点の一角を確実に
担っている作品の一つである。
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コメント
すごい想像力ですねぇ
脚本売りな映画だとは思いませんでしたけど
僕もこの映画は大好きです。
投稿: ベジ太 | 2015年4月19日 (日) 00時08分
rumichan 様
大変申し訳ありませんが、
私は、
・ネタばれしないこと
・映画の解釈や製作者の意図を量るのは観客の
大きな楽しみであり、それをお互いに楽しみたいこと
を大事に書いてきているつもりです。
rumichan 様の語れている切り口、結論については
ご自分のブログで論じるべきものであるように感じ
違和感を禁じえません。
ご自分のブログか私のブログ以外で大いに語って
頂くようよろしくお願い申し上げます。
m(_ _)m
投稿: kuroneko | 2015年4月19日 (日) 00時24分