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2010年2月21日 (日)

映画「グラン・トリノ」

「グラン・トリノ」
GRAN TORINO


原案: デヴィッド・ジョハンソン,ニック・シェンク
監督: クリント・イーストウッド
脚本: ニック・シェンク
撮影: トム・スターン
音楽: カイル・イーストウッド,マイケル・スティーヴンス   
プロダクションデザイン: ジェームズ・J・ムラカミ   
衣装デザイン: デボラ・ホッパー   
編集: ジョエル・コックス,ゲイリー・D・ローチ
出演: クリント・イーストウッド,ビー・バン,アーニーハー,クリストファー・カーリー

時間: 117分 (1時間57分)
製作年: 2008年/アメリカ

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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妻に先立たれ、息子夫婦ともソリが全く合わない(合わせようともしない)
独自の人生哲学をどこまでも貫く男ウォルト(クリント・イーストウッド)は小さいが
自慢の自宅の芝刈りに精を出し、その芝を愛犬と眺め独り静かにビールを
飲むことを楽しむ。そんなウォルトの"自分だけ"穏やかな日常は隣りに引っ越して
きたモン族の一家によって乱されることになる。最初は理解不能なやっかいな
隣人に怒りを爆発させるだけのウォルトだったが、次第に隣人一家の姉と弟との
交流を深めていく。将来への展望を全く描けず不良達への対処も判らない
やられるままの弟のタオ・ロー(,ビー・バン)と物怖じせず明るい男顔負けの
スー・ロー(アーニーハー)にウォルトはあくまでも自分流に接する。二人は
頑固で怖いだけではないウォルトにしだいに惹かれ父親像を重ねていく。
そして事件は起こった。。
 
 
「オブラートしない」脚本にとても驚いた。そしてそのオブラートの無さと今の
社会とのリンクがクリント・イーストウッドをして本作を作らせた動機ではないかと
勝手に推測しながら観た。現代社会のシステムと人々の心の病巣を物語や
登場人物に置き換えるのではなく、システムとその結果である暴力をそのまま、
有りのままに描く迫力

そのまんま描いているので暴力装置たる不良達は単純に原因であり除外すべき
対象とはならず、彼等を凶暴化させたのはそのまま彼等を包む背景であることが
透かされているわけだが、「ここまで率直に描かれ世界中の人が皆喜んで
観ているのか」
ということも少なからず驚いた。世界的に"父親"または父親的な
有無を言わせない強制力が良くも悪くも弱っていて多くの人間が好き勝手に生きて
いながらそのパワーに束縛されることを実は欲しているのだと。

数日後に公開終了なのに劇場は完全に満席(40代から20代の層がメイン)だったが
好きで観に来ているくせに微妙にマナーの悪い人間(本作ですら途中退席!)が
気になり登場する中途半端を極めた悪質な不良達と重なった。劇場も最新設備
を備えた映画館であるがその設計により稼動するシステムも「快適に映画を観る環境」
とは言えず、その帰結としての「マナーの悪い客が集まる」という構造が本作の
中盤以降の哀しい展開と妙に重なって見えた。

イラクでの煙硝や同時多発テロの不可解性がまだ収まらない中でアフガニスタンで
"次の仕込み"がすでに完了しているらしいという一般社会の人間には耳障りの
良くない情報ばかりが溢れ自身の人生は五里霧中という歪(ひずみ)ばかりが増大
して一つの臨界を向かえた観があった2008年と本作はリンクして多くの人間が
劇場に足を運んだのではなかろうか。それほど信心深くもないのに藁をもすがる
思いで教会に行きただただ祈る人々のように。

エンディングのグラン・トリノを運転する"男"と曲の融合度の高さと澄み切った
透明感が素晴らしい。

本作公開時においてクリント・イーストウッドは78歳。78歳で監督・主演というのは
映画史上において実はとてつもない事らしいが78歳で監督・主演の作品の
本編自体が最初から最後まで弛緩無く面白くイーストウッド演じるウォルトの
入浴シーンが父性のオーラ充分でとてもエロティカルであるというのも実に
とんでもない事だと思う。

本作でクリント・イーストウッドは世界の悩めるクソガキ(年齢問わず)共を
導く『父』となった。

クリント・イーストウッド、ありがとう。

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コメント

この映画は気になってたんですよねー
やっぱりよかったですか
そのうち見よう・・・
社会問題を描いたアメリカ映画としては「闇の列車、光の旅」もけっこう面白そうです
http://www.yami-hikari.com/

投稿: 万物創造房店主 | 2010年2月23日 (火) 12時15分

ウォルトのキャラクター設定と
イーストウッドの演技の完成度は高く
観た方がよろしいかと思います。
 
「闇の列車、光の旅」
なかなか良さげな雰囲気ありますね。
チェックしておきます。

投稿: kuroneko | 2010年2月23日 (火) 12時48分

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