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2010年3月28日 (日)

映画「十月」

2009年に見た映画(111) 「十月」

原題名: Октябрь
監督: セルゲイ・エイゼンシュテイン,グレゴリー・アレクサンドロフ
時間: 103分 (1時間43分)
製作年: 1928年/ソビエト
(アテネ・フランセ文化センターにて鑑賞)

2009年 6月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)

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1917年10月から始まったレーニン率いる左翼勢力の革命を描く一大群集劇。

ただひたすらに全てのシーンのリアリティと蜂起した群集を描くパワーに
圧倒されっ放し。どのシーンをとっても「実際のニュース映像」と言われても全く
判らないだろうし今の我々は眼としても知識としても判断材料を何ら持ち合わせて
いない。ネットで検索したところで仕方ない。「進歩」など全くしていない証拠だ。

エイゼンシュタインはロシアや西欧のかつて大国だった諸国に蹂躙され続けた
ラトビアのリガ出身であることをこの度記事を書くあたって初めて知る。ただし彼の場合は
リガで生まれたことは「生まれた地域」であること以上の意味はそれほどないのかも
しれない。wikiによれば彼はドイツとスウェーデンの血を引いている。

エイゼンシュタインが生まれた1898年はラトビアはロシア帝国の支配下にあった。
「バトル・オブ・リガ」(2007)は1918年のロシアからの独立戦争をラトビア側から描いて
いるが、革命などという言葉が遠い他所の国の言葉であるままに21世紀を迎えた幸せな
極東の国の一人としては1917年から勃発するロシアでの革命とラトビアを始めとする
近隣諸国との戦争と支配はまるっきり矛盾しているだろうと思う。祖国を思い、
ラトビアを支配する側に与しながらも「革命の嘘」に悩みラトビア側に理解を示す人間も
きっといたことであろうと思う。戦争が政治の一手段として何ら憚らなかった
時代であるが、同時にまた人間の行動様式と思考の振幅も今からは想像も
付かないほどダイナミックな時代であったことは遺された優れた映画作品郡が
その証拠であるといえる。

21世紀に作られたラトビア映画でありながらもハリウッドテイスト感丸出しな
「バトル・オブ・リガ」を観たら彼は何というだろう。「映画は死んだ」とでもいうだろうか。
"うちの国"も人事でないどころか、半世紀以上も完全に母屋を取られた状態で
しかもここ数ヶ月の政権交代という名の嘘により事態はさらに悪化の一途を
辿っているわけであるが。

その映像が放つ怒涛のパワーと知人(外国人)を連れていき一緒に観たので
そのリアクションも気にしながら観たせいもあるが本作はもう一度、眼をよく
かっ開いて観なくてはならないと強く感じている。
監督として同じくエイゼンシュタインと共に名を連ねるグレゴリー・アレクサンドロフも
なかなか素晴らしい作品を幾つも残しているようだ。早いとこ出会いたい。
いま、会いにゆきます。

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