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2010年3月13日 (土)

映画「トリコロール 赤の愛」

「トリコロール 赤の愛」

原題名: Trzy kolory:Czerwiny
監督: クシシュトフ・ケェシロフスキ
出演: イレーヌ・ジャコブ,ジャン=ルイ・トランティニャン

時間: 96分 (1時間36分)
製作年: 1994年/フランス・ポーランド・スイス

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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隣りの家を盗聴する元判事と称する男(ジャン=ルイ・トランティニャン)と
大学生でモデルのバランティーヌ(イレーヌ・ジャコブ)の二人の心の邂逅を描く。
トリコロール三部作の完結編にしてケェシロフスキの遺作。

ヒロインのバランティーヌ演じるイレーヌ・ジャコブの「完璧」と言っても過言では
ない美しさにただただ撃沈。男の対としての女のそれではなく地上生きとし生ける
ものどもの全てを肯定するかのような博愛に満ちた眼差しとその清楚という言葉が
ぴったりの容姿からかもし出される「美」。それゆえに煩悩の詰まったお脳を終生
何らバージョンアップも出来ずに不平と不満と矛盾に満ちた社会を自己防衛に
奔走していきる哀れな男共は彼女に八つ当たりをし、その輝く瞳に映る己の醜い姿に
逆切れするしかない。

元判事の初老の男を演じるのは稀代の色男にして名優のジャン=ルイ・トランティニャン。
クロード・シャブロル監督の秀作「女鹿」(1968)で二人の美女から一方的に愛される
という羨ましい役を嫌味なく演じている。でも観ている間は彼とは判らなかった。
1930年生まれの彼は「女鹿」の時は男盛りの直前の38才で本作では64才。
「女鹿」では才気溢れ容姿も端麗なる実業家を華麗に演じ本作では厭世主義
にどっぷり嵌る神経質な初老の怪しい男を好演している。彼だと判ってみれば
もっと本作を味わって観れたと思う。

本作は、またケェシロフスキの遺作ということだが奇しくもトリコロール三部作の中では
一番『愛』の容積と世界感は広いように思える。寂しいことではるが遺作としては
相応しいかもしれない。

の愛: 1993年/フランス
の愛: 1993年/フランス・ポーランド
の愛: 1994年/フランス・ポーランド・スイス

トリコロール三部作の はフランスの国旗の"自由"・"平等"・"博愛"から
取られているモチーフとのことだが、本作の"赤の愛"が色と作品のテーマが
一番合致していると思われる。製作国がだんだん増えているのも興行的見地から
興味深い。支持が国際的に拡大したゆえか、はたまた単なる資金集めの苦労からの
結果か。。

三部作のどの作品も人間の心の生み出す"愛の形"へのアプローチの仕方も
掘り下げる方向も異なるので作品と出会うタイミングや観る者によってもいかようにも
印象は変わるだろう。そう、ケェシロフスキの作品はまるでプリズムのようだ。
ケェシロフスキもそれを意識しているせいか多くの作品で様々な"光"がフィルム
に焼き付けられている。本作では血の輝き、情熱の輝き、エロスの象徴としての
赤い光が。

個人的には三部作の中ではヒロインの圧倒的なマリア的な愛と容姿の美しさと
男の偏屈さにやや共感するものがあり本作が一番面白く観れた。
ケェシロフスキ版「羊達の沈黙」(1991)と言ってもいいような趣も本作には多分に有って
方向性の危なっかしさも秘めていてよろしい。(「羊達の沈黙」ってもう20年も前の
作品になるのか!!)

血、正義、人類愛、マリア、法の外、
孤独、未完成、、
 
 
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『トリコロール/赤の愛』の構成は複雑だ。アイデアをスクリーン上で理解させられ
るかどうかとなると、よくわからない。必要なものは全てそろっていた。俳優がよい。
イレーヌ・ジャコブもジャン=ルイ・トランティニャンも上図な俳優だからだ。撮影は
うまいし、条件はそろっていた。セットもすばらしい。ロケ地にジュネーブを選んだ
のもよかった。つまり、きわめて複雑であるにしろ、言わんとすることを理解させる
ために必要なものはすべてそろっていた。だから、私の思いついたアイデアを理解
してもらえないとすると、映画という媒体がプリミティブすぎて、この映画の複雑な
構成を支えきれないか、製作者全員の力を結集してもそれを描き出す才能が
不十分であるかのいずれかなのである。
   
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(「キェシロフスキの世界」クシシュトフ・キェシロフスキ著 河出書房新社より) 
 
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