映画「カメラを持った男」
「カメラを持った男」
(これがロシアだ)
Человек с киноаппаратом
(Chelovek s kinoapparatom)
Людина з кіноапаратом
(Liudyna z Kinoaparatom)
Man with a Movie Camera
監督: ジガ・ヴェルトフ
脚本: ジガ・ヴェルトフ
撮影: ミカイル・カウフマン
編集: エルザヴェータ・スヴィロヴァ
時間: 75分 (1時間15分)
製作年: 1929年/ソビエト
(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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革命の熱気と勢いに乗って発展するソビエト連邦の社会をジガ・ヴェルトフが
あらゆる視点から捉えたドキュメンタリー。
社会主義国家建設の夢と希望に満ち溢れた実に由緒正しいプロパガンダ映画
であり『映画』としても傑作な作品。人々の"革命に抱く希望"と、恐らくは巧妙に
隠された強制とを原動力にした膨大な労働力を結集して次々と作られていくダムや
工場や街やあらゆるインフラ設備。
監督のジガ・ヴェルトフの視点はその"社会"という箱を『外から描くのだ』という
揺ぎ無い思いに満ち溢れていて、画面から放たれる圧倒されっ放し。カメラは
精密にコンピューター制御されてコントロール自在なクレーンに乗せられている
かのように労働に従事する姿に接近したかと思うと休暇を楽しむ人々と併走し、
かと思うと社会全体を俯瞰する。こんな国が本当にあるならば"誰でも住んで
みたい"と思うであろう。
本作の制作年の時点でジガ・ヴェルトフは33才の気力が最も充満する時期であり
自身の国家の向かう方向に対する心からの希望的観測も多分に入っている
と思われる。一方で本作の製作から数年前の1924年には恐らくは本意ではない
であろう資本主義社会を闇雲に罵倒するアニメーション「レーニンのキノ・プラウダ 」、
「ソヴェエトのおもちゃ」といった作品を監督している。
「ゴダールの映画史」(1990)に本作は当然のように使われてしていたと思うが
また是非とも本作と合わせて機会があるごとに確認しなくてはならない。
後世の志と才能ある人々に甚大な影響を与え続けるであろう。そして、
天才はいつの世も不遇であり、その活動時期に理解されることはおよそない。
[ジガ・ヴェルトフ]
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ジガ・ヴェルトフ(Dziga Vertov, Дзига Вертов, 1896年1月2日
(グレゴリオ暦では、同年1月15日) - 1954年2月12日)は、ロシア出身の映画監督。
(略)
『カメラを持った男』によりジガ・ヴェルトフの名前は西欧にも知れるところとなったが、
ソヴィエト政府からは形式主義的との批判を受け映画製作の機会を奪われ、
晩年はスターリンによる反ユダヤ政策の影響でニュース映画の編集に従事させられた。
(略)
商業映画から決別したジャン=リュック・ゴダールがジャン=ピエール・ゴランらと
つくった映画製作グループ「ジガ・ヴェルトフ集団」の名称は、この人物に由来している。
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(ウィキペディアより)
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