« 映画「デカローグ 9,10」 | トップページ | 過去から未来へ »

2010年6月19日 (土)

映画「宮本武蔵 一乗寺の決斗」

「宮本武蔵 一乗寺の決斗」

監督: 内田吐夢
脚本: 鈴木尚也,内田吐夢
撮影: 吉田貞次   
音楽: 小杉太一郎
美術: 鈴木孝俊
編集: 宮本信太郎
出演: 中村錦之助,入江若菜,木村巧,高倉健,佐藤慶

時間: 128分 (2時間8分)
製作年: 1964年/日本 東映
 
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
吉岡清十郎を倒した宮本武蔵は弟の伝七郎との果し合いにも勝利する。
知り合った遊女からは余りに張り詰め過ぎた武蔵の気に"斬り殺される前の
よう"と評される武蔵。お通との再会と別れ、武門の誉れを汚され復讐に
燃える吉岡一門との壮絶な斬り合い。そして佐々木小次郎は。。
内田吐夢監督、中村錦之助主演による一大巨編「宮本武蔵」五部作の四作目。

 

邦画史上余りに名高い伝説の吉岡一門との『73対1の闘い』を遂にスクリーンで
観る喜びに嬉しくてオシッコちびりそう。。夜明け直前の畦道を進む
吉岡一派の篝火とそれを見下ろす武蔵。これまで観たどんな作品にも
負けない光加減と画面構成は将に名画そのものであり完璧なまでに美しい。

決闘シーンそのものは、主役の中村錦之助も吉岡一門筆頭を演じる佐藤慶も
皆大奮戦で当然満足の迫力だが、大人数での泥田の中での斬り合いと
そのほぼやり直しがきかないと思われる一発撮りに近い条件の中での
撮影のせいか予想よりも案外あっさり終わった。足元が大変な悪条件の中で
脇役はともかく主役が"こけたら"一瞬で撮影NGとなる緊張感を全身に漲らせて
チョコチョコと細かな足取りで必死の我等が錦之助がとってもラブリー。

子供といえども"大将"に立てて陣取りした以上は当然のことながら
その兵法としてのイロハを忠実に守るがゆえに武蔵の孤軍奮闘は決して
評価されることはなく、狂人のレッテルさえ貼られる「全島村社会」の
太平の世の日本で生きぬく武蔵の孤独はさらに深まっていく。

本作の本当の主役は究極のプラトニックラブというには"女"としてあまりにも
気の毒な役回りを演じ続けるお通(入江若菜)だ。第一作目の無垢な少女、
第二作での屈託なく武蔵を追い続ける菩薩そのものの笑顔を浮かべて
いたお通も本作では"女"としてただ一途に思い続け慕い続けることの苦悩と
その情念を武蔵にぶつける。

丹念に撮れば撮るほど欲とエゴのみで人生を消費して終わるといっていい
常人には全く理解できない"剣の道"という抽象的な概念に固執して生きる
『宮本武蔵』という人間の虚構性が浮き彫りになってなかなか
緊張感を維持し続けて物語を紡ぎ続けるのは巨匠の手であっても難しい。
況や才能の無い者にとってはとても無理だ。

内田吐夢の大人な演出、職人技のセットと美術、壮大な音楽、
本物のスター中村錦之助の存在感、佐藤慶や高倉健といった後の
邦画界を背負って立つ若手の台頭。。幾つもの"本物"が積み重なって
観る者を圧倒する映画という『本物の夢』がフィルムに焼きつけられている。

クライマックスの決闘ばかりが取り上げられがちな本作だが
吉岡伝七郎との決闘のシーンに降る雪の美しさは特筆に価する。
この時のシーンほどリアルで且つ映画的な情緒ある"演じる雪"は
そうは見れないだろう。

ドスを握るようになるより少し前の若くて細身で後の「寡黙で不器用な骨太の男」
とは大きく趣が異なる饒舌な健さんが見ていてとても楽しい。

邦画界の永遠の宝であり、誇りであり、希望であり続ける逸品。

---------------------------------------------------------------
映画感想一覧>>

 
 
 
  

|

« 映画「デカローグ 9,10」 | トップページ | 過去から未来へ »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 映画「デカローグ 9,10」 | トップページ | 過去から未来へ »