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2010年7月24日 (土)

映画「ターミネーター4」

2009年に見た映画(128) 「ターミネーター4」

原題名: Terminator Salvation
監督: マックG
脚本: ジョン・D・ブランケート,マイケル・フェリス,デヴィッド・キャンベル・ウィルソン
音楽: ダニー・エルフマン
出演: クリスチャン・ベール,サム・ワーシントン,ヘレナ・ボナム=カーター
時間: 114分 (1時間54分)
製作年: 2009年/アメリカ
 
2009年 7月鑑賞
(満足度:☆☆)(5個で満点)

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意識を持った機械(スカイネット)VS人類の壮絶な闘いを描くシリーズ第4作。
シリーズで初めてスカイネットに本格的な支配を許した後の世界が描かれる。

 

ターミネーターシリーズについては自分はちょっとだけうるさい男だ。
(完全版とかはそれほど興味はなく、あくまで劇場公開時の作品だけ)
これまでのシリーズ(1,2,3)は誰よりも楽しんだ自負があり今回の新作の
公開を恐らく都内の人間としてはでは楽しみにしていた偏差値は相当高いと思う。
地元であれば文句無く「ターミネーター4を楽しみにしていた男」No.1だろう。
公開直後からの世の中の微妙~なリアクションもなかなか興味深いものが
あったがさて。。

はっきり言って良くない出来だ。

悪いところを上げれば10本の指では足りないが
まあまあいい線をいっている部分は10本の指で充分足りてしまう。

そして数少ないいい芽は結果的には残念ながら活かせていない。後半は
『ターミネーター』というよりも一連のジェームズ・キャメロン(シリーズ1,2の監督)
映画のクライマックスだけを安易に集めた再編集かと見紛えるようなカメラ割りと
テンポにリスペクトよりもパクリに近い(というかアマチュアが絵作りを真似を
しているだけのような)才能の息切れと製作陣の浅知恵かはたまた動揺のような
ものも感じてしまった。

ターミネーター3には前作,前々作へのつまりはJMキャメロンが創造した世界観への
充分過ぎるほどのリスペクトと畏怖を感じたけど、本作の前作までの扱い方はどうも違う。
意地悪い言い方をしてしまえば、「コンテンツを自由に使っていい『権利』を金でゲットした」
そこそこ経験と才能はあるけど天才ではないお金持ちが好き勝手にやっている感じが
全体的にある。

作品を決定的に微妙にしてしまっているのが一番最後の展開だろう。

機械 VS 人間

ではなく

人間と機械に違いはあるののか?

という大きな問いかけでもなく

人間となんぞ?人類に未来はあるのか??

というさらに大きな問いでも勿論なく

純粋なまでのマシーンへの単なる差別だ。
しかもかなり悪質で幼稚で陰湿な差別。
恐らくは故意ではなく、人間と人間に限りなく近づいた機械という関係性への
考察とイマジネーションの著しい欠如がもたらした結果としての子供っぽい
浅墓な結論と無意識ゆえに罪深い差別として帰結してしまっている。

スカイネットがどーとか機械の意識の目覚めがどーとかじゃなくて
人間共がの自分達の生きる環境を自分達の力で構築できない状況を的確とまで
言わなくてもある程度客観的に見ることが微塵も出来ないダメ人間達が互いに
疑心暗鬼になって滅ぼしあうだけだ。

スカイネット君が何もしなくてもシュワちゃんが裸で
出てこなくても人類は勝手に滅亡するよこれじゃ。

ターミネーターズを操るスカイネットに狩られた人間達が銃器を突きつけられている
とはいえ、その余りの無抵抗ぶりは異常としか言いようが無く描写が不気味過ぎる。
本作の多くのシーンはシューティングゲーム等でプレイヤーが強制的に見せられる
物語を理解するための繋ぎのシーン以上の意味がほとんど無いためにシリーズが
持ってきた「人間の未来を自分達の手で開こうとする情熱」の対極に位置してしまって
いることでストレスはより増してしまう。

そういう意味では今の世界で起こっていること(人間達の知能の劣化を直接の原因
とした人災の連鎖)をそのまんま平坦に描いてみせただけの作品ともいえる。

映像は素晴らしいシーンは幾つもあるしプロットも凄くいい線いっている箇所もある。
しかしそれを全然磨いていない。何よりもテクノロジーと人類との共生関係についての
現時点での検証とか予想とか可能性の提示とかが全く無いのがあまりにも致命的だった。

シリーズを貫く縦糸の一つカイル・リースのキャラクターが完全にストーリー展開の
犠牲になっているのも痛い。且つ1作目から楽しんでいる人間としてはその物語のキー
としてのウェイトを置かない扱いが哀しい過ぎる。かといって本作のカイル・リース自体の
キャラだけに焦点をあてればまあそれほど悪くはないのがまた残念具合を加速している。。

本作のカイルはとってもいい奴そうではあるが華奢で栄えある題一作に繋がるカイル
になるにはあと2・3作必要だろうか。。
人類にそげな時間は残されてねーぞやカイル!気合入れんかあ!!

出演陣の方を見てみると
クリスチャン・ベール自体は悪くないけど演じる人類の救世主ジョン・コナー君のキャラが
何だかヒステリックになってしまっていて可哀相。あり得ない異常で過酷な体験が長年続き
過ぎたせいか(笑)

サム・ワーシントンは本作ではマッチョで優しいタフガイを過不足なく演じているが
すぐ後で世界的大ブレークを果たす「アバター」よりはキャラの奥行きに欠けている感が
ある。演出側の問題だろうか。

ダニー・エルフマン手掛ける音楽はまあまあ良い。
シリーズが維持してきた荘厳でダークな雰囲気をそれなりに継承している。
超傑作B級ドタバタホラー「ビートルジュース」(1988)や秀作「シザーハンズ」(1990)、
「バットマン」(1989)などティム・バートンとの作品も多数あるベテラン。

プロット全体はそれほど悪くはなかった。
「俺に脚本リライトさせえ!」って心の中で絶叫しながら観ていた奴は世界に何千人いるだろうか。
一応自分もその一人。将来数千億円くらい儲けたら権利の諸問題を全てクリアーして
すんげーの作ろう。

 

そんなわけで、マックGに才能があることは一応認めよう。
ただどちらかと言えば「物語る才能」ではなくて一つ一つの「画面構成力」的な才能で
あって「物語る力」の欠如が本作を決定的に今一つなものにしてしまった。
大甘採点てことでシリーズを「完全には潰さなかった」ことは評価しましょう。

もう一回だけリベンジしていいよ。
もう一回だけ観に行ってもいいよ。
もしかしたら「足りないものは何か」気付くかもしれないからね。

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