映画「帝銀事件 死刑囚」
2009年に見た映画(125) 「帝銀事件 死刑囚」
原題名: 帝銀事件 死刑囚
監督: 熊井啓
撮影: 岩佐一泉
音楽: 伊副部昭
美術: 千葉和彦
出演: 信欽三,内藤武敏,笹森礼子,柳川慶子,北林谷栄
時間: 108分 (1時間48分)
製作年: 1964年/日本
2009年 7月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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ある日、銀行の支店に一人の男がやって来る。近くで集団赤痢が発生したので
その予防にと行員等16人に予防薬と称して『液体』を飲ませて男は去る。
しかし、それは予防薬などではなかった。。1948年に発生した実在の事件
「帝銀事件」の真相に名匠熊井啓が鋭く迫る社会派大作。
作品の内容は太平洋戦争の暗部にも鋭く且つ果敢に迫った秀作である。
伊副部昭の音楽にもただひたすら圧倒される。特に、始まってすぐに訪れる大きな
山場である「男」が支店にいた人々に薬品を飲ませる一連のシーンでは犯人の
背後にカメラがべったりとへばりついて顔は決してわからないようにし事件全体の
不気味さが強調され、男のよく通る声と伊副部のこれから起こる一大悲劇を強く
暗示させる音楽がその不気味さに拍車をかけてまるでスペクタクルな戦争シーン
でも見ているかのように感情を揺さぶられる。そう、この事件では平和だと思いこんで
暮らしている非戦闘員を「最初から殺意をもって狙い撃ちしている」という点で
完全なテロであり、戦争そのものであるとも言える。
作品は可能な限り、事件を忠実に再現したとのことで支店での行員達の配置や
セットにも細心の注意が払われているとのこと。信欽三演じる平井という一人の
男が逮捕されるが冤罪と旧日本軍の秘密部隊に所属していた者の犯行を強く匂わせて
GHQの強力な横槍により真実は闇の中に葬られて物語は終わる。
平井の個人史的な鬱憤の発露からの衝動的な犯行という線から、使用された
劇薬の特殊性と犯行時の犯人の扱いの熟知性より旧日本軍と戦時中の世界が
一気にクローズアップされるが強大な権力の前に余りに呆気なく屈する後半の
展開は娯楽作品を観ている高揚感と大きな消化不良を同時に味わった。
そして、消化不良を観客に残すことこそが熊井啓の確かな狙いであると思う。
事件は今もって解決していない。解決していないどころか
戦前の日本も戦後の日本も真実や実体の何もかもが消えて国を挙げて
「なかったこと」にすらされようとしている。
[帝銀事件]
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帝銀事件(ていぎんじけん)とは、1948年(昭和23年)1月26日に東京都豊島区の
帝国銀行(後の三井銀行。現在の三井住友銀行)椎名町支店で発生した
毒物殺人事件。
戦後の混乱期、GHQの占領下で起きた事件であり、未だに多くの謎が
解明されていない。
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(ウィキペディアより)
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コメント
死刑判決後40年以上たっても死刑執行しなかったうえでの老衰死ということは
少なくとも歴代法務大臣&法務省は犯人でないことをわかってたってことでしょうね
しかし、元陸軍関係者が疑わしくなるとGHQから圧力がかかるってのがよくわからんです
何がまずかったのかさっぱり・・・
いちおう
1985年にGHQの機密文書が公開され
〇犯人の手口が軍秘密科学研究所が作成した毒薬の扱いに関する指導書に一致
〇犯行時に使用した器具が同研究所で使用されていたものと一致
〇1948年3月GHQが731部隊捜査報道を差し止めた
ことがわかったらしいんですけど
これだけでは・・・
しかし、まぁつくづく三権分立ができてない国ですなぁ・・・
投稿: 万物創造房店主 | 2010年7月18日 (日) 15時54分
>何がまずかったのかさっぱり・・・
・戦争は終わってなどいない
・秘密部隊の研究成果を「今」、どこで"誰"が管理しているのか?
この事件が解明されることにより
上記二点がクローズアップされることが
マズイということでしょう。
・戦争なんてものは過去のものである。
今はと~~~っても平和な世の中である。
・旧日本軍の研究の成果品なんてものは「存在しない」
ということに何がなんでもしたいと。
本当の『犯人』の動機はかなり深いところに
あったという見方はできますね。勿論その手段は
どこまでも許されざるべき非道な犯罪ですが。
映画自体はなかなか良い作品だと思います。
個人的には後半の斬り込みが物足りない
ですがもう絶対に作れない作品であることには
間違いないですね。残念ですが。
>三権分立ができてない国ですなぁ・・・
その"国"すらもう消えそうですが。。(ーー;)
投稿: kuroneko | 2010年7月19日 (月) 02時26分