映画「マン・オン・ワイヤー」
2009年に見た映画(133) 「マン・オン・ワイヤー」
原題名: MAN ON WIRE
監督: ジェームズ・マーシュ
出演: フィリップ・プティ
時間: 95分 (1時間35分)
製作年: 2008年/イギリス
2009年 7月鑑賞
(満足度:☆☆+)(5個で満点)
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1974年8月7日、今は無き世界貿易センタービルのツインタワーにワイアーを
架けたった独りで渡り切った男がいた。男の名はフィリップ・プティ。110階の
モンスタータワーにワイアーを架けるのに必要な装備の総重量は1トンにも達した。
フィリップと仲間達はいかにして世界で最も有名で最も人々が出入りするビルの
屋上に装備を運び、設営し、不可能なミッションを成し遂げたのか。。当時の
実際の映像と再現シーン、当事者達へのインタビューで構成されたドキュメンタリー。
幾つかの点で期待して観に行ったがガッカリな内容だった。
フィリップ・プティという大道芸人の挑戦自体は賞賛に値する。世界的に著名な
橋や寺院で白昼堂々綱渡りをするというのは当然の如く賛否は判れるだろうが
複雑怪奇で悪意と欺瞞に満ちた現代社会にとって彼の「不可能に挑戦する」という
シンプルであるがそれゆえに誤解と障害がつきまとう行動とそれをサポートする
仲間達との友情と困難に立ち向かう情熱は観ていて共感できる。
ガッカリした最大の理由は「映画」あるいは「ドキュメンタリー」として観た場合に
ストレスをかなり感じた為である。あまりにどうでもいい再現シーンが多すぎる。
元々後でドキュメンタリーをいつか作るつもりだったのか1970年代のフィリップと
その仲間達の若い頃の映像が観ていて違和感を覚えるほどに充分に残っている
のでその当時のフィルムと今現在の彼らのインタビューだけで充分見ごたえある
のに過剰なまでの再現シーンにとても辟易してしまい作品のリズムもポテンシャル
もひどく壊してしまっている。
ワールドトレードセンターに到着してから最上階に荷をあげるための警備の目を
潜り抜けるのは大変だっただろうが他にも掘り下げるべきいいテーマが転がって
いたのに再現シーンの無駄に細かいカット割りに時間を割きすぎ。
最初はフィリップと恋人と僅かな親友だけだったのが世界最高のビルに
挑戦するという目的の下にほとんど面識の無い男もプロジェクトに
引き入れて計画を練っていく古いメンバーとの葛藤。
そして最大の目的を達した後、逮捕はされたもののフィリップだけが突出して
英雄扱いされ司法取引で無罪同然となった裏で仲間の一部は国外退去を
受けるという当然の現実。
個人的にはワールドトレードセンターを渡るという究極の目標を達成した
後の長年団結してきたチームに亀裂が発生しそしてフィリップ・プティに長年
尽くしてきた女性との別れ。そちらの方にも焦点を当てて欲しかった。
若さと情熱と才能によって達成された夢とそれによって払った代償まで
描いてこそよりその「夢」の偉大さと儚さが強調されると思う。
本作はコンテンツは素晴らしいがそれ以上のものはないと思う。
製作側のコンテンツを汲み取る努力というか視点が甘い。
実にMOTTTAINAI作品。
同じように実際の出来事を扱って同じような手法でコンテンツを扱って作品を
紡いでいる「アライブ」(2007)の方が作品の出来としては上だと思う。
これらの系等の作品が好きな人や業界関係者、業界に行きたい人は
比較して観ると有益ではなかろうか。
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