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2010年10月 9日 (土)

映画「流れる」

「流れる」

原作: 幸田文   
監督: 成瀬巳喜男
脚色: 田中澄江,井手俊郎
撮影: 玉井正夫
音楽: 斎藤一郎
美術: 中古智
編集: 大井英史
出演: 山田五十鈴,田中絹代,高峰秀子,中北千枝子,松山なつ子,杉村春子,
岡田茉莉子,宮口精二

時間: 116分 (1時間56分)
製作年: 1956年/日本

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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芸妓置屋の女性達を暖かい視点で捉える傑作群像劇。名匠成瀬巳喜男の
代表作にして、50代半ばの円熟期を迎えたその演出は冴え渡る!

 
 オープニングの川の揺らぎとタイトルから何傑作の予感が濃厚に漂う。
監督・撮影・美術・俳優・音楽のコラボレーションがきちんと成功している
すなわち『映画』であると言える逸品。
 
 男性陣は物語に絡むのは事実上皆無で女性陣の際立ったキャラの作りと
演技だけで全編を弛まず楽しく盛り上げている。宮口精二や加東大介がほんの
少しのシーンだけで登場するがその一瞬一瞬が記憶に残る演技は流石の一言。
宮口精二は置屋に身を寄せる芸妓の叔父としてやってきて難癖をつけるオヤジ
役だが上手すぎる。そして、最後に一本芯の通った台詞を入れるのも実に宮口
らしい。
 
 女中の田中絹代が事実上の主役であるが、本作は群像劇であり田中絹代
演じる女中の眼を通して山田五十鈴(置屋の女主人)や杉村春子(芸妓)、
高峰秀子(置屋の娘)等の実在感溢れる等身大の姿が隣家を覗き見している
かのようなリアリティで描かれる。
 
 山田五十鈴、田中絹代、杉村春子、高峰秀子といった実力豊かな女優陣の
演技合戦の豪華さと完成された画面の"成果"が嬉しくて終始ニヤニヤ。
 
 田中絹代の完璧なる女中としての奮闘ぶりは演技を超えた安定感を醸しだして
いて流石の一言。
 
 杉村春子のベテラン芸妓としての演技は細部まで素晴らしく実に楽しそうに
演じている。他の女優人には絶対に負けまいという意地も当然あっての弛みない
演技なのかもしれない。この作品で助演女優賞を取るとすれば文句なく杉村だろう。
 
 出演者の巧み過ぎる演技と演出の自然さで最早、この物語は終わる必要もなく
定点カメラを置いてずっとずっと彼女達を見ていたい。そんな気持ちすら湧いた。

 成瀬巳喜男監督作品の個人的な最高峰は「山の音」(1954)であるが本作の完成度
も極めて高い。撮影はどちらも玉井正夫が手掛けていてどちらも映像設計的にも
優れているといえる。

 玉井正夫は他にも名匠溝口健二監督の「武蔵野夫人」(1951)、本多猪四郎
「ゴジラ」(1954)、成瀬の「鰯雲」(1958)、といった伝説的作品を手掛けていて今後
何度でも再評価され、評価は上がり続けていく「映画人」の一人であろう。
 
 美術監督の中古智(ちゅうこさとる)も「山の音」(1954)、「ゴジラ」等に集っていて、
「鰯雲」、「芝居道」(1944)などで成瀬作品に参加している常連である。
 
 成瀬巳喜男の諸作品がこれからも多くの人に観て頂く機会があることを願う
ばかりである。
 

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