« news「池部良死去」 | トップページ | 観_10_10_14 »

2010年10月14日 (木)

映画「怪談 お岩の亡霊」

「怪談 お岩の亡霊」

監督: 加藤泰
脚本: 加藤泰
撮影: 古谷伸
美術: 桂長四郎
出演: 若山富三郎,藤代佳子,桜田弘子,三原有美子,沢村訥升

時間: 94分(1時間34分)
製作年: 1961年/日本 東映

(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
---------------------------------------------------------------
無頼の男、御家人民谷伊右衛門(若山富三郎)に嫁いだばかりに
非業の死を遂げる妻のお岩(藤代佳子)と伊右衛門の悪友直助と
一方的に夫婦となるように迫られた妹のお袖(桜町弘子)。成仏できない
お岩の亡霊に悩まされた伊右衛門と直助は。。

  

加藤泰が"怪談"という気分に流されやすいジャンルをどう"料理"するのか、
映画を撮ると一体どうなるのかと興味津々で観た。本作では脚本も加藤泰が
手掛けているが、贔屓目で見なくても「流石」の一言の仕事であった。

主人公の伊右衛門の粗暴と運のない人生により転落していくお岩の
状況が丁寧に描かれているので、顛末をしっているためにすでに
お岩さんが生前の段階から怖い!そして、何よりも素晴らしく感動的ですら
あるのは"お岩の亡霊"という『存在』があって物語があるのではなく、
あくまでも無辜の人間達の運命を転落させてしまった咎人達が、僅かに
残る良心の呵責から"お岩の亡霊"という幻想を生み破滅していくという
人間の長い営みを肯定した上での脚本が完璧に確立しているという点である。

何でも勝手気ままに出来てしまうオカルトという頭の悪い世界に一寸も
逃げてしまわずに登場人物達の心理の中でお岩は暴れまわるというか
自分の非業の死を男達に責める。彼等の心の投影であるからお岩の存在
はどこまでも恐ろしく、象徴的に描かれる川はやがてただの川ではなく
三途の川となる。当然のようにそこに流れてくる"物"は全て凝視せずには
おかれない。恐怖の叫びを堪えながら。川のシーンのセットはとても
完成度が高く、美しくカメラワークもセットと一体となって素晴らしいシークエンス
を作り上げている。主人公達は何気なく何度も訪れる川だが、その意味は
訪れる旅に変化し、彼等は彼等の"死"に近づいているのである。

昨今のテロップか解説でも入ってしまいそうな幼稚園児レベル以下の画面作り
ではなく、ただひたすらに物語と映像で、人の心の闇と人生の果かな愚かさ
を描き、その描写の具体的な延長として"亡霊"や"あの世"というものが
作り出されそこで始めて映画の特殊撮影の効果は存分に発揮されるのである。

司馬遼太郎は小説とは"割符"のようなものだと言った。物語の半分は読者が
完成させるのだと。映画もまた間違いなく"割符"である。優れた映画とは
物語を存分に映像で語り尽くし尚、観客に想像の余地をきちんと残しておくのだ。
だから観客は何度観てもやはりまた同じ作品を観るために劇場に足を運ぶ
のである。

お岩の妹のお袖が強制的に夫婦(めおと)にさせられたとはいえ、それなりに
大事にされて、少なくともお岩よりは幸せそうであるという皮肉な描写も、
リアルで実社会を考えさせられて物語に厚みを与えている。

お岩という糸に絡められた人間達が最後に辿り着く混乱のクライマックスは
傑作「仇討崇禅寺馬場」(1957)を思い出した。どちらも亡霊にとり付かれるという点で
同じでどちらも最後への盛り上がりが素晴らしい。

加藤泰を知らないと人生は損だ。
加藤泰を観よう。
関った全てのスタッフに感謝!
素敵な作品を作ってくれてありがとうございます。

 

---------------------------------------------------------------
映画感想一覧>>

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
  

|

« news「池部良死去」 | トップページ | 観_10_10_14 »

映画」カテゴリの記事

コメント

着々と加藤泰を見たはりますなぁー
うらやましい!(゚-゚)
これもDVDで出てるけど高いしー
京都東映、なんとかしてくれっ!

投稿: 万物創造房店主 | 2010年10月14日 (木) 13時44分

映画サミットで
そのうち加藤泰ミニ特集も
やりたいですね(^-^)
今の東京は旧作上映の環境は
非常に恵まれているといえますが
加藤泰をある程度網羅するにはまだちょっと
時間かかりそうです。自分が嵌る以前に
これまでにも東京では加藤泰特集は
何度かやってしまっているようですし。
 
加藤泰が師事した伊藤大輔監督の
作品を是非観まくりたいところです。
伊藤大輔監督作品は自分はまだ
「下郎の首」(1955)しか観たことないので
虎視眈々と他の作品がやらないか
狙っているところです(^-^)
でもこれもなかなかやらないしー
渋谷シネマヴェーラ、
神保町シアター、なんとかしてくれっ!!

投稿: kuroneko | 2010年10月15日 (金) 01時49分

>伊藤大輔監督作品
 
切られ与三郎(1960年)
幕末(1970年)
    
↑観てました。不覚(^^;)
、、、まだまだ観たい!
 
血煙高田馬場(1928)
薩摩飛脚(1938年)
二刀流開眼(1943年)
宮本武藏 決鬪般若坂(19439
反逆児(1961年)
徳川家康(1965年)



投稿: kuroneko | 2010年10月16日 (土) 01時40分

お岩の話は高岡早紀と佐藤浩市のヴァージョンの映画を専門学校時代に学校で見たことがあります。

浴場の濡れ場とヌードシーンで何人かのクラスメートたちはきゃあきゃあ騒いでいましたが、私から見ればああいう程度で騒ぐ必要はないと思いました。

お岩の怨念は日本の怖い昔話では典型的な存在ですよね。私が小学校だった頃、児童向けの読み物にも収録されていました。

投稿: 台湾人 | 2010年10月16日 (土) 18時00分

>日本の怖い昔話では典型的な存在
 
良くも悪くもどれだけの日本人が
この典型を知っているか怪しいものです。
自分もオリジナルなんてきちんと説明できないですし(^^;)
その時代、その時代で素材から考え抜いた作品が
作られ、時折オリジナル(原典)も見直されて、、
でよいと思いますね。
 
それにしても台湾人さんはなかなか広い範囲に
渡って楽しまれているのですね。その情熱の
源泉はどこから来ているのでしょうか?
やはり台湾には一度行ってみたいものですね。


投稿: kuroneko | 2010年10月16日 (土) 23時40分

>高岡早紀と佐藤浩市
深作欣二ver.ですね
これは・・・ある意味邪道なお岩さんですな
半分忠臣蔵ですし
4分の一は高岡早紀の胸ですし(^.^)
怪談というよりはかなり娯楽よりの内容
これはこれで僕は好きですけど

投稿: 万物創造房店主 | 2010年10月22日 (金) 18時56分

>これはこれで僕は好きですけど
 
店主さんもなかなか広い範囲に
渡って楽しまれていますよねー(^^;)
第二回映画サミット楽しみにしています
(^-^)

投稿: kuroneko | 2010年10月23日 (土) 13時53分

深作欣二との出会いは映画「必殺4」ですね
小学校のときから必殺シリーズが好きやったんで、これも見に行ったんですが
今までに見た必殺と全くテイストが違って
ハードボイルドで
めちゃかっこよかったんですよ
それ以降、深作欣二を意識するようになったんですが
僕の中ではこの「必殺4」以上のものにはまだ出会ってませんね

>第二回映画サミット
この前、是非、香港映画鑑賞会をやってほしい
という京都在住らしき若者がやってきたんで
その前に京都香港映画サミットをやっちゃうかもしれません
そういや
間彩さんが「ミラクルカンフー阿修羅」のDVDを貸してくれやはったんで、見ました
思ったよりきっちり作ってあって
手のない人もかなりいいカンフーの動きしてました

投稿: 万物創造房店主 | 2010年10月27日 (水) 17時01分

>京都香港映画サミットをやっちゃうかもしれません
 
とりあえず、、
エヴァ・オーリン祭
は予約で\(^^)/
後、
ずるべちょ祭
も予約で( ̄▽ ̄;)
チャンチェの作品もサミットで観る機会が
もしあれば嬉しいすね。
それと、、←ウザイ
ま、まあそんなところで(^^;)
私が行けなくても是非二回三回四回と
ご遠慮せずにに開催してくださいませ。
 
>「ミラクルカンフー阿修羅」
こちらも機会がありましたら
ダイジェストで観たいすね。
少年時代のトラウマへの決着として
 
東京は今しばらく
映画ファンには良好な状態のようですので
京都も店主さんのお店を起点に
盛り上がることを祈念しております(^-^)

投稿: kuroneko | 2010年10月28日 (木) 00時48分

>ずるべちょ
って何っすか???(-_-)

>盛り上がることを
あんまり盛りあがり過ぎると
うちの掘り炬燵じゃ人数さばき切れないし
かと言って
大々的に人数集めてどこか借りて鑑賞会するとなると
著作権的問題が絡んできそうなのがジレンマですよね

投稿: 万物創造房店主 | 2010年11月 1日 (月) 15時15分

>>ずるべちょ
>って何っすか???(-_-)
 
「徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑」とか
アッチ系ですね。(^^;)
内臓ズルズルーベチョベチョ~みたいな。
といいつつ苦手ですが。
 
>著作権的問題が絡んできそうなのが
 
"営利目的"でなくければ大丈夫ですね。
利益が発生してしまえば当然問題になりますが
場所を提供して頂いて参加者は
飲み物or食いものor上映ソフト持参で。
来年も多分行けそうです。(^-^)
どうぞよろしく!
次回はCDを色々買いたいと思っております。
Super Fly いいすね。毎日聴いています。

投稿: kuroneko | 2010年11月 2日 (火) 01時28分

>アッチ系ですね。(^^;)
にゃるほどー
じゃ香港の三級片とかもいいですね
「人肉饅頭」を筆頭に
「香港大虐殺」とか
「実録残酷秘話・女肉堕胎地獄」とか
色々ビデオありますよ
あ、
香港の石井輝男といわれているカイチーホン監督の3作も買ってあります
「邪 ゴースト・オーメン」「魔 デビルズ・オーメン」「蛇姦」
このあたりもまだ見てないのでいいかもです

>利益が発生してしまえば
ま、うちの掘り炬燵でやってる間は大丈夫ですね

>次回はCDを色々買いたいと
うちはCD少ないのであるのが限られているのが難点ですね
オススメは色々あるけど、うちにはない、みたいなのが多い
とりあえず今すぐにでもオススメなのが
ネイキッドラインシリーズです
(グーグルでネイキッドラインを検索すると何故か僕のアマゾンリストが1番目に来ます、本家ページは見当たりません・・・)
このシリーズ
定価1300円という低価格で
海外評価が高く数万円で取引されていた日本の70年代幻のレコード群をCDで甦らしたシリーズです
とりあえずその中でも
ミッキーカーティスと侍の「侍」
をまずオススメ

投稿: Fe | 2010年11月 6日 (土) 18時19分

>「蛇姦」

これ気になりますね(^^;)
お馬鹿そうで良さ気です。
あくまで店主さんの見ていないので構いませんです。
 
食玩もまた買いたいですし、お猪口とか碗とかも
少し、、
お邪魔するの楽しみにして
小銭貯めるです(^-^;)

投稿: kuroneko | 2010年11月 7日 (日) 01時19分

>70年代幻のレコード群をCDで甦らしたシリーズです
>ミッキーカーティスと侍の「侍」

良さげですね。安いし。調べて購入します。
情報ありがとうございます。
とりあえず、Super Fly が相当に
気に入っているのであの系統でも
お勧めがありましたらご教授ください。
m(_ _)m
 
音楽に関してはなぜか自力での発掘能力
皆無ですのでなりふり構わず他力本願で
残りの人生を攻めていきたいと思います。
(^^;)

投稿: kuroneko | 2010年11月 8日 (月) 12時40分

>Super Flyが相当に気に入っている
いいーっすねー(^.^)bぐーっど
とりあえず定番としては
映画「コフィー」のサントラですね
http://www.amazon.co.jp/Coffy-Roy-Ayers/dp/B00005ABOB/ref=ntt_mus_ep_dpt_1
こちらパムグリアという黒人のおねーさんが主演の黒人万歳映画です
パムグリアはタランティーノも大好きらしく
おばちゃんになったパムグリアを主演に「ジャッキーブラウン」なんかも撮っております
ジョーカーペンター監督の「ゴーストオブマーズ」にも隊長役で出てますね
音楽はロイエアーズというヴィブラホン奏者の人が担当してます
 
「スーパーフライ」の音楽はカーティスメイフィールドという人がやってましたんで
カーティスの他のアルバムを買うのも手ですね
ただ、僕的にはカーティスの最高傑作が「スーパーフライ」なんで、他のアルバムもいいんですけど、やはり少し落ちる感じはあるのですよね・・・
 
あと僕の超お気に入りは
ボビーハンフリーの「Blacks & Blues」ですね
http://www.amazon.co.jp/Blacks-Blues-Bobbi-Humphrey/dp/B00000I0RM/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=music&qid=1289282344&sr=1-1-spell
ジャズファンク系で
ジャケ写のメインの人はフルート奏者です
実は女の人で
曲によってはめちゃかわいい声で歌ってます

投稿: 万物創造房店主 | 2010年11月 9日 (火) 15時04分

>カーティスの最高傑作が「スーパーフライ」
 
何となくわかる気がしますね。
この作品は"降りてきている"気がします。
 
>ボビーハンフリーの「Blacks & Blues」
 
これ良さ気ですね。聴いてみたいです。
ありがとうございます!

投稿: kuroneko | 2010年11月11日 (木) 00時26分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« news「池部良死去」 | トップページ | 観_10_10_14 »