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2010年12月 5日 (日)

映画「必勝歌」

「必勝歌」

原題名: 必勝歌
演出: 溝口健二,マキノ正博,木曽根辰夫,高木孝一,市川哲夫
撮影: 竹野治夫,斉藤毅,行山光一,三木滋人
出演: 佐野周二,小杉勇,田中絹代,轟夕起子,上原謙
時間: 80分 (1時間20分)
製作年: 1945年/日本 松竹京都

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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戦場の兵士達が次の戦闘が開始されるまでのほんの束の間、
上官の許可の下で家族への思いと郷愁に耽るという趣向で、国民が
一丸となって戦争遂行に向かう様をドラマシーンとドキュメンタリーシーンを
織り交ぜて描く戦争終結の年に公開されたプロパガンダ映画。

 

"情報局選定"の映画。内容も選定と呼ぶに相応しい。
太平洋戦時下の末期に製作・公開されたお上お墨付きの完璧なまでの
プロパンガンダ映画にして演出に実績豊かな監督陣が名を連ねた異色作。

溝口健二,田坂具隆,清水宏,マキノ正博といった豪華な顔ぶれが
クレジットされているが"監督"ではなく"演出"となっているのが興味深い。

兵士達がそれぞれ個々に故郷を思うというプロットで国民の様々な
立場での戦争遂行の模様が独立した挿話で割り当てられ、各自が
演出したようだ。

ゆえに各挿話はそれなりにきちんと成立しているが全体を統一して
糸を束ねることに責任を持って調和を図る一人の人間がいないらしい
ことがはっきり見てとれ、それぞれが異なるエピソードであるが
主張は皆一緒

国策を疑うな

目上の者・上官に逆らうな

親孝行せよ

国難に立ち向かえ 


ということで完全に一致している。要するに国民の"思考停止"を
目的とする実に由緒正しいプロパガンダ映画なのだが、それゆえに
大変興味深く観たことは観たが、作品そのものとしては物凄く退屈で
間延びしていて「一刻も早く終わって欲しい」と思った。
演出陣や俳優陣がいかに豪華でも内容が無いので80分は長過ぎで
"15分"くらいにすればもっといい作品になったかもしれない。

ドラマ部分には微妙ながらも「演出上の逡巡」(国威発揚に利用される
ことへの映画人としての抵抗)が確実に感じられ各監督やスタッフ達の
"声にならない(声に出来ない)声"が感じられ、それが全体のシャープさに
著しく欠ける結果となっているのだがどんなものだろう。そして情報局の
人間には、この逡巡や全力を出し切れないやりきれなさは、きっと
判らなかったことだろうと思う。「人間を描く」そしてフィルムに刻印することに
魂を削るほどに打ち込むことを生業とし、そのことで庶民から崇拝される
人間達であるのだからその真逆の凡そ本心とはかけ離れた空虚な
発言しかできない脚本なのだから、当然といえば当然だろう。田中絹代の
他の作品とは違い過ぎる別人のような能面のような感情表情の乏しさには
驚きを感じた。芸術を作り出すものの精一杯の抵抗であったのかもしれない。
上原謙は非常に微妙なお芝居をしていて興味深かったが、どのような
心象で本作に臨んだのだろうか。 

そういうわけでドラマパートは基本的に弛緩していてつまらないことが
その優秀なる顔ぶれからかえって明白で面白いのだが随所に挿入される
実際の当時の戦闘シーンや国民達の軍需工場で働くシーンがどれも
プロパガンダ映画ゆえに画面構成や勢いがとても素晴らしく且つ
今となっては非常に貴重な映像ばかりで大変見ごたえがある。空母から
飛び立つ戦闘機の尾翼についたカメラの映像はプロパー感抜群で
鳥肌が立ったくらいだ。

戦闘機の飛行時のフォーメーションの美しさや艦橋のシーンの構図
が美しいのは本来その目的からいっても当然なのだが敗戦国の
国民として自国の過去の軍事力の詳細が隠されてしまっているので
とても新鮮な思いがする。

黒澤明が遺した「虎 虎 虎」(「トラ!トラ!トラ!」として製作・公開)の
躍動感溢れる絵コンテを彷彿とさせた。

このスーパープロパーな戦争末期に公開された映画を
2009年の今を生きる私達は欠片も嗤う資格は無い。
私達は"彼ら"以上に思考停止した無知蒙昧の蔓延る世界で
平気で生きているのだから。

その描かれている世界の閉塞感と想像力の欠如と徹底的に
内向きな世界感はある意味で過去のこととしてではなく
充分に近未来の日本を描いた作品として観ることが可能だろう。

この映画を過去のこととしてしか観れない人間が今の日本の
舵取りを担っている者達の中に何人いるかでこの国の行く末も
決まる。多分ほぼ全員が過去の「そんなの関係ネー」事としてしか
観れないだろう。

今のような嘘と偽善に塗り固められた悪質且つ邪悪な世界ではなく
本当の『平和』を希求するのであれば本作のような作品は徹底的に
大事に保管され、健全な思考を持つ市民には鑑賞されるべき機会
があるべきだろう。馬鹿な為政者達には何を言ったとろで無駄であろうが。。

"我々の世代の戦争"はいつ終わるのだろうか。
平和はいつやってくるのだろうか。。
国家の中枢を"違法に占拠する"悪質極まりない化け物達のために
いつまで日本人は搾取され続けるのか。
日本人は誤解され続けるのだろうか。
歴史は捏造され続けるのだろう。
今も、この時代も制度は改善されたがそれを駆使する人間は
何一つ変わっていない。何も学んでいない。まあ日本人じゃない
人間に占拠されているのだから学んでいないのも当然ではある。

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