映画「動くな、死ね、甦れ!」
2009年に見た映画(162) 「動くな、死ね、甦れ!」
原題名: Замри, умри, воскресни!
監督: ヴィターリー・カネフスキー
出演: パーヴェル・ナザーロフ,ディナーラ・ドロカーロフ,エラーナ・ポポワ
時間: 105分 (1時間45分)
製作年: 1989年/ソビエト [モノクロ]
2009年 11月鑑賞
(満足度:☆☆☆☆☆)(5個で満点)
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第二次大戦終結後の小さな炭鉱の街スーチャンで共に生きる少年少女の
物語。12歳の少年ワレルカ(パーヴェル・ナザーロフ)は悪知恵を働かすが
いつも失敗ばかり。そんなワレルカを同じ年の聡明な少女ガリーヤ(ディナーラ・
ドロカーロフ)はいつも庇う。日々大人へと成長していく二人の行動範囲は
広がり、ワレルカはいつしかガリーヤの庇護を遥かに越えていく、、
設定されている時代と場所、主人公の年齢、いずれも監督のヴィターリー・
カネフスキーの少年時代そのままのようである。それゆえ、戦争終結直後の
人々の生活模様の混沌、少年ワレルカの過ごす日々の描写の細部に至る
までのリアリティは半端なく、少年の日常を追ったドキュメンタリーと言っても
通るような完璧といっていい完成度。前半での万事において抜かり無い賢い
少女ガリーヤを真似て見よう見まねで必死に朝市でお茶を売るワレルカの
シーンはとてつもなく可笑しくて、また朝市の活気はリアルで観ているこちらの
息も白くなるかのような、その場にいる一人のような臨場感に溢れている。
結果的に悪戯となってしまうだけで陰湿な悪意は持たない茶目ッ気のある少年に
辛辣な批評を浴びせながらも常に行動を共にする少女という構図は古今東西で
不偏の構図で幾つものエピソードを織りながら、二人の世界に対する意識が
確実に日々変貌しながらも最初から最後の最後まで微塵も揺らぐことのない
二人の関係性を揺ぎ無く描いていることがこの作品を傑作たらしめているのだろう。
観客はワレルカとガリーヤの黄金の日々の"冒険"を観ながらタイムマシーンに
乗ったが如く自分の少年時代・少女時代に意識を戻していくことだろう。
冒頭のじゃれ合う幼い二人と後半での線路沿いを歩く二人は物語上の経過時間的
には数百日程度しか違わないが何もかも全てが異なる。そのことを二人は強く
自覚してただひたすら歩く。人間の頭数としてのカウントに過ぎない"子供二人"から
広い世界の中に投げだれて生きている"二人"へと。
出会わないことが不幸である作品というものがもしあるとすれば本作はそういった
作品の一つと言えるだろう。もう決して若くもなくかといって、まだ老いたともいえない
時期に出会えた自分はとても幸運である。判り易く言ってしまえば、ヴィターリー・
カネフスキー版「未来少年コナン」。 宮崎駿版「動くな、死ね、甦れ!」もどちらも
観るべし。
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